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異世界召喚物語  作者: お犬様
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「あの、俺の考察聞いてくれる?モヤリンちゃん」


「…モヤンです。変なあだ名付けないでください。 それで考察とは?」


「冷たいなあ… 考察ってのはね、リメークと君は兄弟で門番をやってるという」


「…何故そう思ったのですか?」


「勘」


「………はい?」


「勘」


「言い直せっていう事じゃないですよ。というかそれ考察って言うんですかね…ですがその勘は当たりです。大正解です。僕は兄ほどは強くはないですが、僕も兄と同じ事が出来ますよ。それとさっきも言いましたが気配を消す事も」


「なに…お前あの足技できるって言うの?そして気配も消せるの?その合わせ技想像したら鳥肌やばいんだけど。最強かよ。教えてください」


「ふふ…足技は貴方が望むならその内教えてあげますよ。気配を消す事は生まれつきなので教えられるか分かりませんが…さ、着きましたよユウマさん。王の間はここです。王女様、失礼致します。ユウマさんを連れて参りました。」


モヤンがノックし扉を開くと豪勢な飾り付けの部屋に玉座が備え付けられていた。その玉座に座っている可憐な美少女。彼女が王女ログメルで間違いないだろう。


「ごゆっくり。ユウマさん。」


「おう、案内してくれて有難うな。」


モヤンは「ではまた、」と王の間から退室した。


「さて…ユウマ。良く来てくれたね。近くに来てくれる?」


「了解」


広い部屋に足を踏み入れ、ログメルの下へと歩んだ。


「で、今すぐにでもこの世界の現状を知りたいんだけど?」



「落ち着いて。まずユウマに聞いておきたいことがあるの。」


「ん?」


「覚悟は…ある?この世界を救う覚悟は。 この問いには真剣に答えてちょうだいね。」


「俺がいつもふざけてるみたいな言い様なんですけど?…てか初対面だし。まあそれは置いといて、うーん…急に覚悟を決める自信は正直無いな。」


「そうだよね。これから話す事に同意を得られなければ私は貴方を元の世界に戻すわ。」


「分かった。 いつでも話してくれ。」


「じゃあ早速1つ目。ユウマはこの世界を救うという覚悟を決めたら、王国ログメルを救うまで…元の世界に戻れない。」


「…続きを。」


「うん。2つ目。どんなに優れた剣の使い手でも扱えなかった勇者の剣。『天元の剣』を使いこなせる位まで成長する事。」


「天元の剣…か。それは俺に使いこなせるのか?」


「最初の内はきっと無理。けど訓練を重ねれば『勇者の器』を持ってる貴方なら成長すれば使いこなせる」


「なるほどね。で、3つ目はあんの?」


「うん…1つ目と繋がってるんだけどね?私と、この王女ログメルと、ある契約を結んで欲しいの。」


「契約?その契約の内容聞いてもいいか?」


「もちろん。今から読むね。 『勇者の器を持ちし者。王国ログメルに訪れし時、若しくは王が召喚した時、この国の魔獣駆除達成迄この国に滞在。 但し承認を得た場合のみ。 契約途切れし時、それは死を意味する。』」


「つまり?」


「強制はしないという事よ。元の世界に帰りたかったら今の内に言ってちょうだいね。契約を結んだ後は、この国のクラリム島に封印されている憎き魔物『アラム』を完全消滅させるまで帰れないの。若しくはアラムに敗れ、命を落とすまで契約は続くわ。」


「アラムねえ…要はそいつと戦えって事か。」


「うん…大雑把だけど合ってるよ。それで…なんだけど。」


「うん」


「帰るか…それとも邪悪な魔物『アラム』を倒すまで残るか。良く考えて決めてね。沢山迷って答えを出して。」


「倒す」


「うん…時間はたっぷりあるか…え?」


余りにも早い応答にログメルは目を丸くして驚いている。驚いた表情も可愛らしい。


「クラリム島ってとこ行ってそいつ倒す」


「えっと…でも、倒すまで帰れないんだよ?もしかしたら元の世界に戻れないまま彼奴にやられて…今までの勇者だって…」


勇者だって、と言ったところで言葉を止めた。今までの勇者も王と契約を結び勇敢に立ち向かい、そして命を落としていったのだろう。


「それでもいいさ。ログメルを、リメークとモヤンを、そしてこの国の事を見捨てられない。俺だけ平和な元の世界に帰って助かるなんて嫌だよ。てかお前、ここまで俺にやる気出させといて帰れとか言い出すなよ? 俺はこの国を救う。絶対、それは絶対だ。俺が、この勇者様が天元の剣とかいうのを使いこなせるようになって、そしてアラムだかアラームだか知らねえがピーピーウザそうな魔物ぶっ潰して、この国に平和を齎して『勇者兼英雄』になってやる。元の世界に帰るかこの国の居心地が良くなっちまってこっちの世界で過ごすかは、まあその後でゆっくり選ぶさ。 」


「……ありがとう」


ログメルの蒼色の双眸からは涙が溢れていた。やっと救いの手が差し伸びて来た、という感情も少なからずあるだろうが今までこんなにも情熱的で、それでいてこんなにも優しい勇者が居ただろうかという感情の方が大きかった。そんな勇者に感謝の気持ちと誠意を込めて。この人ならきっと救ってくれると期待して。


「ありがとう…!本当に…! ユウマ。いいえ、勇者ユウマ。私と契約を結んでくれますか?」


ユウマはニッコリと笑った。どうやら心は全く揺らいでいないらしい。


「おうよ、当たり前だ」


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