☆エピローグ☆
蛇足な後日談なエピローグです。
「おーいしぃ☆」
こんにちは。古河ゆぅです☆ 今日はカプチーノ☆じゃないですよ?
今日は日曜なので、もっくんと近所のカフェにケーキを食べに来ています。ドリンクはもちろん、カプチーノ☆
やー、ここのショートケーキ絶品☆
「ゆーぅ、そんなに食うとまた虫歯になるぞ?」
「へーきへーき☆ すみませーん。ショートケーキおかわりー」
「太るぞー。あ、俺もエスプレッソおかわり」
もっくんのつっこみもなんのその。
私は本日四皿目のケーキにフォークを伸ばす。
「てーか、もっくんだってそのレアチーズケーキ三つめじゃん」
「俺は部活で消費するからいーの」
「そういえば、こないだサッカー部の榊部長に「安斎に試合に出るよう説得してくれ」ってまーた泣きつかれたんだけど」
「・・・・・・ゴクゴク」
「コーヒー飲んでごまかすなー」
もっくんはサッカー部に所属している。とは言っても、何故か試合に出る気が全くないので、いつも自主練してるから実質幽霊部員扱いだ。
どうしてもっくんがレギュラーをやりたがらないかは、幼なじみの私ですら知らない。もっくんが言いたくないなら訊いたりもしないし。
「まぁ、その件はちゃんと榊部長と話しなよ? ところでさ! 昨日麻耶ちゃんからメールがきたの☆」
「いつの間に麻耶ちゃん呼び・・・・・・」
「ほらほら、写メ付き。ラブラブツーショット☆」
携帯を開いて、写メを見せる。画像の中の二人は、まだぎこちない笑みを浮かべているが、とても幸せそうだ。
「へー、よかったな。そういや野村さんのトコもうまくいってるみたいだ」
「そうなの? そりゃよかったよかったー☆」
「暫く休業して、夫婦で旅行に行くんだって」
「どこ行くの?」
「熱海っつってたかな?」
「温泉!? いいなー」
温泉かー。最後に行ったのいつだっけ?
いーなー、いーなー。
「にしても、今回は丸く収まってよかったな」
「野村夫妻と麻耶ちゃん、藤堂さんカップルのこと? 確かに泥沼にはならなかったね」
「ゆぅは最初から分かってたのか」
「何が?」
「橘さんと藤堂が両想いってこと」
もっくんがエスプレッソを啜りながら訊いてきた。
そのことか。
「んー、最初にそーかなーって思ったんだよ。二人が野村クリニックの出入口で擦れ違う時、二人とも顔赤くしてたから」
「そうだったか?」
もっくんがきょとん顔をする。本当に気づかなかったらしい。
変なとこで鈍いよね。
「でも、それで浮気はないと分かったんだな」
「うん。普通、片想いの相手がいるのに他の男の人と付き合う訳ないもん☆」
「そうか」
「そうそう。今回はクライアントも関係者も少し発想が突飛だったり、危険思考だったりしたけど、話が通じる人でよかったよ。いや、マジで」
言葉の最後らへんが無意識にワントーン下がった。
浮気調査にドロドロはつきものだけど、話の通じない人が相手の時は、本当に始末に終えない。最後にはこっちにまで飛び火することもあるし・・・・・・。
「お前も切実だな」
「まーね。とりあえず、誤解は恐ろしいということで」
「ところでさ、ゆぅ」
「ん? 何?」
「今回に限ったことじゃないけど、今回みたいな場合は、浮気調査じゃなくて、不倫調査って言うんじゃないか?」
「・・・・・・」
こ、こいつ・・・・・・言いやがった・・・・・・!?
私が浮気探偵を名乗る上で、最も気にしてることを!!
チーズケーキ食べながら! フツーに! ナチュラルに!!!
ショートケーキが収まったお腹から何かが沸き上がってくる。
別に気持ち悪い訳じゃないよ? 怒りだよ!
「もぉっくぅん☆?」
「ゆ、ゆぅ? どした? 笑顔ですげぇ怒ってるぞ? ☆と?って新しいな」
「あのねぇ、これは私の完全な主観なんだけど、浮気も不倫も絶対ダメだけど、浮気の方が不倫よりソフトなのよ」
「ソフト?」
「そう、ソフト。分かりやすく言うと、浮気はお昼、不倫は夜。浮気の方が角が丸いの」
「あ、うん。ワカリマシタ、ゴメンナサイ」
「よろしい」
「お詫びにこれやる」
歯ブラシを渡された。
どっから出した・・・・・・。
内心つっこみつつ受け取った。虫歯はもう御免だからね。
よし、今日から歯磨きの時間を五分増やそう。
そう心に深く刻み、私は空になった皿を見つめて言った。
「ショートケーキ、おかわり☆」
おしまい☆
ありがとうございました。