虫歯が結んだ恋☆下編☆
なんとか書けました。
後半、特にグダグダです。
さてさて、『野村さん浮気疑惑事件』の調査から二日が経ちました。私、古河ゆぅはカプチーノ☆として、とある四人にお手紙を出しました。内容は以下の通りです。
『○○様へ
今、貴方を取り巻く問題を解決しましょう。
展望台で待っています。必ず来てください。
カプチーノ☆より』
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「皆様、ようこそ☆ 私がカプチーノ☆ 浮気探偵です。あ、こっちは助手のもっくんです」
「いや、助手ではねーよ・・・・・・安斎木です。よろしく」
ツッコミながら目の前の四人に会釈するもっくん。
その四人は困惑していた。
ま、とーぜんですよねー。突然浮気探偵なんぞに呼び出されば。
「君は、一昨日の・・・・・・古河さん?」
「はい、そうですよ。野村さん。美沙さんも二日ぶりですね」
「え、えぇ」
私が呼び出したうちの二人、野村夫妻にご挨拶し、次に、モジモジそわそわした制服姿の二人にも挨拶する。
「麻耶さんも来てくれてありがとう。それから──藤堂航さんも」
「あの・・・・・・君は? 俺はなんで呼ばれたんだ」
「さっきも言った通り、私はカプチーノ☆です。一応、貴方とは同じ学校ですが、そこはスルーしてください。事情はこれから順を追って説明しますので、お待ちください」
「はぁ」
この中で唯一初対面の藤堂さんは一番状況を飲み込めていないようだったが、私は今回の依頼について説明した。
「私は浮気探偵ですので、皆さんをお呼びした理由は浮気絡みです☆ 今回のクライアントは美沙さん」
「美沙が!? まさかっ」
野村さんが驚いて美沙さんを見る。自分の浮気を疑われているとすぐに気づいたようだ。
「ええ。美沙さんは貴方が浮気をしているのでは? と疑っていました。そこの、橘麻耶さんと」
「「「えっ!?」」」
麻耶さんと野村さんが美沙さんに目を向け、藤堂さんは麻耶さんを凝視している。
「美沙、なんで・・・・・・」
「そっ、それは・・・・・・貴方と麻耶さんが・・・・・・」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい、お二方。今回の件はただの思い込みと勘違いが生んだ誤解ですから」
「誤解?」
美沙さんが訝しげな目で訊ねてきたので、私はそれに頷く。
「はい☆ 結果を言えば、野村さんは無罪です。浮気の事実はありませんでした。ね、野村さん☆」
「もちろんだ」
「でも・・・・・・」
「そもそも!」
私は美沙さんの言葉を遮って話を続ける。
「事の発端は美沙さんが訊いてしまったお二人の会話にあります。麻耶さんが野村さんに「どうしても諦められない」と言ったあれです。お心当たりありますよね?」
「あっ、あれは・・・・・・その・・・・・・」
野村さんは突然気まずそうに言葉に詰まってしまう。
それを見た美沙さんは、やはり浮気では? と考えているのがありありと分かる表情を浮かべた。
ありゃりゃ☆
とりあえず真相を話そうとしたところで、麻耶さんが前へ出た。
「あの! 違います。確かに、野村先生にはそんなことを言いました。けど、それは野村先生に対してじゃなくて・・・・・・私は野村先生に相談していただけなんです!」
「相談?」
麻耶さんの言ったことが予想外だったのだろう。美沙さんは首を傾げる。
端折られた部分を補う為に、私は言葉を付け加えた。
「そうなんですよ~☆ 麻耶さんは野村さんに恋愛相談をしていただけなんです。麻耶さん、言いにくいとは思いますが、一昨日のようにその日の会話を詳しく話してください」
「・・・・・・はい」
麻耶さんが訥々とあの日の本当の会話を説明する。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「私、好きなんです。藤堂さんのこと」
「いけないよ。こんなこと──いくら好きでもこっそり惚れ薬を飲ませようとするなんて」
「でも! それでも私・・・・・・諦められません!」
「麻耶ちゃん・・・・・・わかったよ、君の気持ちは。だから僕が麻耶ちゃんの恋を応援するから、とりあえずその薬を使うのはやめてほしい」
「・・・・・・野村さん」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「と、いう訳です」
麻耶さんの説明を訊いた美沙さんと藤堂さんは、ぽかーんと口を開いて固まってしまった。
まぁ、正直この話を訊かされた時は、私ともっくんも絶句してリアクションに困りましたしねぇ。
「えっ・・・・・・と・・・・・・え? 惚れ薬・・・・・・? そんな物、実在するんですか?」
戸惑いながらも美沙さんが言った。
信じられないのも無理はない。私も電話でもっくんからその話を訊いた時は自分の耳を疑った。
事情を全て知っている野村さんは、なんとも言えない顔をしている。
「もっくん、ご説明して差し上げて」
「はいはい。えーと、ですね。橘さんはご両親が薬品関係の研究者で、本人も学校で科学部に所属し、日々薬品実験をしています。その過程で出来た物こそが、話に上がった惚れ薬です。まぁ、偶然の産物ですが、実在はします」
続けて私が、
「麻耶さんは惚れ薬を使うことなく、薬品棚の奥に閉まっていたのですが、此度藤堂さんに出会って恋をしてしまい、その気持ちを抑えきれず──かといってフラれるのも怖くて、惚れ薬を盛るという強行に打って出てしまい、しかし実行する前に野村さんに発見され
ました。そしてその時、たまたま部屋の外にいた美沙さんがその会話を訊いてしまい、今回の事件に発展したという事です」
「どうして、主人が──」
「それは、二人の接点が野村クリニックだからですよ。麻耶さんが歯の検診に来た日と藤堂さんが虫歯の治療に来た日が被っていたのが二人の出会いの切欠でした。麻耶さんはクリニックに張り込んで薬を盛れるチャンスを虎視眈々と待っていたので、さすがに野村さんに気付かれました」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
シーンと沈黙のベールが降りる。
俯いている麻耶さんと美沙さん。明後日の方を見ている野村さん。そして、世話しなく視線を動かしている藤堂さん。
各々思うところはあるようだが、気まずさのあまり言葉が出ないようだ。
私がもっくんにヒソヒソ声で言った。
「いつもの事だけど、報告後って気まずいよね~。今回は状況が状況だけに」
「そうだな・・・・・・で? どーすんだ。一応、カプチーノ☆としての役目はここまでだろ」
確かに。探偵の仕事は依頼を終えたら終了だ。たとえ、その後クライアント達がどうしようが、どうなろうがそれはその人達の問題で口出しする義理も権利もない。
だけど──
私はこほんっと咳払いを一つしてから、
「えーと、ここからはカプチーノ☆としてではなく、古河ゆぅ個人として言わせてもらっていいですか? てか、言わせてもらいますね☆ まず、美沙さん!」
「は、はいっ」
びしっと指を指された美沙さんは肩を跳ね上がらせて、返事をした。
「とりあえず、ご主人に言わなきゃダメな事ありますよね? それ、今言わなきゃダメですよ」
「・・・・・・っ! はい・・・・・・貴方、ごめんさない!」
美沙さんは野村さんに向き合って、深々と頭を下げた。
「美沙・・・・・・」
「本当にごめんなさい! 私、不安だったの。貴方はいつも仕事が忙しいし、誰にだって優しいから・・・・・・それに・・・・・・前の受付の子に告白されてたし・・・・・・」
「「え?」」
小さく呟いた美沙さんの最後の言葉を耳聡く訊いてしまった私ともっくんは、思わず聞き返してしまった。
てゆーか、そんなことがあったんですか。受付の子って・・・・・・野村さんが既婚者なの知ってるよね? え? それで告白って・・・・・・怖っ!
思わず身震いしてしまった。もっくんも青い顔している。
「美沙! まだそのこと気にして・・・・・・その件はその場で断ったって言ったじゃないか! 彼女だってその後すぐ辞めてしまったし・・・・・・」
「でも、その前も八百屋さんの奥さんに迫られてたし・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
絶句。
野村さんは遠くを無感動な瞳で見つめた。相当なトラウマらしい。
野村さん、モテるな~。あ、いや、ううん。私達は何も訊いてませんよ?
「美沙、とりあえず、僕は美沙のことが一番大切だし、愛してる。だから、浮気なんて絶対にしないよ。まぁ、色々あったけど・・・・・・ゴニョゴニョ・・・・・・とにかく! 美沙が大好きだから!」
「貴方・・・・・・! ごめんなさい!」
「いいんだよ」
美沙さんの瞳が潤み、そっと野村さんの胸にしなだれかかる。寄りかかられた野村さんも彼女をそっと抱き締めた。
一応、めでたしめでたし? そうゆうことにしとこう。大人は色々あるんだよ。
一方、その隣では赤い顔しながら、もじもじと向き合っている麻耶さんと藤堂さんが、
「あの、ごめんさない・・・・・・引きましたよね?」
「そんなこと! その・・・・・・嬉しいし・・・・・・」
「え!?」
麻耶さんが更に赤くなる。
「か、痒い! むず痒いよ、もっくん!」
青春特有の甘酸っぱさに当てられた私は、もっくんの肩をバシバシ叩いて訴えた。
「いたた・・・・・・叩くな。まぁ、見ている側としては確かにむずむずするな」
「でしょ! あーもうっ! そこの青春真っ盛りーズ!」
「「は、はい!?」」
「見ていて痒くなるから、もー相手をどー思ってるか言っちゃってください! せーので! いきますよ☆」
「「ええーっ!!」」
「おっ、おい。ゆぅ──」
「いっせーの、せっ☆」
「「すっ、好きです!」」
言った! 思わずもっくんの手を両手で握ってしまった。けど言ったよ! うわー☆ 告白シーン生で初めて見た!
「あっ──ほ、ほんとに・・・・・・」
「う、うん。俺も最初にあった時から」
「そ・・・・・・うですか。えっと、古河さん! どうしよう!?」
「えええ? 私に振るの!? えーと、両想いなら付き合えばいいんじゃないでしょうか?」
二人がますます赤くなる。そんなに赤くなって平気かな? 頭から湯気出そうだけど。
「つ、付き合う・・・・・・そっか。藤堂さん! 私とお付き合いして・・・・・・くだしゃいまふふか!?」
あ、噛んだ。
「ここここちらこそ! よろしくお願いしましゅる!」
あ、こっちも噛んだ。
何はともあれ、丸く収まったかな?
「もっくん、ミッションコンプリート☆ かな?」
「ああ、いいんじゃないか? 両方とも幸せそうだし」
右手では野村ご夫妻が、
「貴方」
「美沙」
ラブラブしてるし。
左手の出来立てほやほやカップルも、
「名前で呼んでもいいですか?」
「うん、もちろん。俺も、麻耶ちゃんって呼んでいいかな?」
「は、はい」
初々しくてなんか見てるこっちが照れるムードだし。
あれ? ひょっとして私達、お邪魔虫?
「じゃあ、私達はこれで失礼させてもらいますねー。あ、浮気に困ったらご用め──むががっ」
「今それ言っちゃダメだ」
「ふぁい」
その後、ラブラブ状態の二組のカップルを置いて、私達はその場を撤退しました。
エピローグも書くことにしました。