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彼らの仕業

 「さて、楓さんは、響と話してみてどうかな?」

なんて話題を振ってるんだ。それ、俺の前で話すことじゃないだろうが。

「あ、それ、私も気になりますね。聞かせてもらってもいいですか?」

あーあ、香苗までノッてきたし。ダメだ。もう止まらないぞ。何がきてもいいように心構えしておかないと精神崩壊する。この人たちは笑って人の黒歴史を暴露する人間なんだ。

 「ふぁ!?ふぇ、あの、その、ううう……えっと、や、優しい人だとお、思いましゅ……」

何だろう、この反応を見てると俺はかなり心を開かれている気がしてきた。いや、ただ単に詰め寄られるのに慣れていないだけか?どちらかと言えば後者か。

「優しい、確かにそうですね。響さんは困っている人を放っておけない優しい人ですよ。頼まれると断われないですし。文句を言わないとできない不憫な人ですけどねー」

「不憫とか言うな!てか、俺は別に優柔不断じゃないぞ」

何だかんだ最終的に面倒を見てしまうだけだろ。……ん?断われてないのかこれ?

「はいはい、高校一年生の分際でこんなにかわいい婚約者がいて将来安泰なんて、見ているだけで羨ましすぎてハンカチを噛み締めちゃいそうになる人を不憫とは言いませんね」

「ものすごく棘と悪意を感じるんだけど……」

「あらあら、気のせいですよ」

悪びれもせずに笑う香苗にげんなりした視線を向けつつ、話の流れを変えられたらしいことに胸を撫で下ろす。これ以上は俺と楓の精神が持たなさそうだ。

「ほーう、どんなところを見てそう思ったのかな?」

前言撤回。何だこの会話は。最早会話とか言うよりも、面接とか授業とか言った方がしっくりくるような状況へと変貌してますけど?

「ううう……えっと、あの、学校で……」

「ごちそうさま。俺、着替えてくるから」

楓の話を遮らないように小さめの声で告げ、俺は食堂を後にした。


 「……何なんだよ……コレ絶対父さんたちの仕業だろ……」

自分の寝室のドアを開けた俺は、そこに広がる光景に絶句した。もう、声を張り上げて突っ込む気力も無い。後で殴ろうか。半ば本気でそんなことを考えた。

 夕飯を終えた俺は、話し込み始めた他の四人を置いて、一人部屋に戻ってきていた。様々なことがありすぎて失念していたが、俺がまだ制服だったためだ。普段は帰宅後すぐに着替えるようにしているので、一日中動き辛かったわけだと一人納得している。

 とまあ、現実から目を背けようとする気持ちもあるが、今この問題は正面から睨みつけてやる必要があるだろうな。今朝まで俺の寝室には、俺一人分のベッドと箪笥が端の方に置かれていただけだった。が、なんということでしょう、ベッドと箪笥が増えているではありませんか。元々部屋の隅に近い場所に置いてあった俺のベッドに、寄り添うような形でベッドが置いてあった。よく見れば少し使われた形跡があり、楓のものだろうと推測することは容易だ。そして、こんな突拍子も無いことをするのはこの家の三人しかいない。

 「……で、これどうすればいいんだ?」

俺と楓の力だけでは到底運ぶこと等できないだろう。かといって、あの母さん達が手伝ってくれるはずも無い。誰かに助けを求めるにしたってこの時間だ。誰も頼めるような当ては無い。ま、一言で言えば手詰まりだな。

 うーん、最悪俺はソファで寝てもいいか。明日になればやりようはいくらでもある。

 とりあえず、増えた家具は見なかったことにして制服のボタンに手を掛けた。


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