Dクラスの現状
内心で毒づきながらもジョレンから教材を借りる。
ペラペラと軽く捲ってみると…
「うわっ、何これ…凄く簡単じゃない!」
難しいのではなく、簡単すぎるが等しい。
私が視界に入ったのは間違いなく小学生3年生くらいであろうかという単純な問題である。数学なんて単純な公式しかない。…いや、算数と言うべきか。国語だって漢字も漢字に変換しないで平仮名で書かれている小学生なら簡単に解読し、作者の意図を簡単に引き出せるようなものだし…
私が簡単と言えば、リラはガバッと起き上がってズタズタと私の前にやってきては、そんなことないよ!と叫びながら教科書を開いて指差す。それは算数の掛け算割り算の計算だな。
「簡単じゃないよ!!これのどこが簡単なの!?」
ああ、そうか…Dクラスは極度の馬鹿の集まりなんだな…
うんうんと真面目に頷きながら確信していた。
ふと、エドが私のノートをペラペラと捲り始める。
「うわっ、何だこれ!!読めねぇ!!」
「それは地球の学校の高校生レベルの問題ね。まあ、高校レベルにしては少し難しい方だけど」
「これ…Sクラスでも出ない内容じゃないの!?ちょっと、癒麗ちゃん何者!?」
Sクラスでこのレベルだと…?いや、それは…おかしいのではないか?
「人間?」
少し動揺しながらも適当に答えれば、ツッコまれた。
「いやいや、そういう事じゃなくて…って地球って凄いの?」
「私より頭の良い人は数えられないくらい居るわよ。人間っていうのは弱くてもココが働くのよ」
私は頭を指す。
「というか、地球とやってる事同じなのね、これは…」
人間たちの真似をしているのか何なのかはわからないが、完全に人間の作ったものだ。魔物は人間の作ったものなんかを学んで何がしたいのかは些か疑問だ。
「そうなんだよね、何でも、地球から取り寄せた情報で問題を作ったらしいよ。でも難しくて解けないの…」
それなら納得はいく。
最初から勉強も何もしてない状態で三年の内容を解ければそれは天才と言っていいものだろう。基本も何も理解していないものにこんな簡素な問題も解けるはずがない。
「いつか、教えてあげるよ」
そう私が言うと皆は振り向き、目を輝かせた。
「ほんとっ!?」
「いやぁー、ついにDクラスの生活からおさらば出来るってことか?」
「セイナに少しは教えてもらってたけど、本格的に教えて貰えるとなると嬉しいね!」
「セイナ?」
一体誰だろうか?
「あのね、言っちゃ駄目だよ。セイナちゃんね、Dクラスなんだけど実はSAクラスレベルの知識と技術を持ってるの。それをセイナちゃんはDクラスの分からない子達に教えてくれて、とっても優しい人なんだよ!」
SAクラス!?
それは凄いとしか言いようがないが…。そうか、セイナと言うその彼女はこのDクラスを卒業させるために自分の事は後回しで他の人に教えているような人なのか?それならばかなりのお人好しで優しい人だ。Dクラスに留まっているということは何らかの目的があるのかもしれないし、やはり謎だ。
お人好しで行動しているのならば、尊敬したいところだ。
何せこのような教室でもあるし、やる気ない人ばかりなので、早く抜けたいと言う気持ちの方が上回ってしまう。
「そういえば、魔法の性質とかそういうのは…これ?」
ペラペラとページを捲っているとそれらしきものがあったので訪ねてみた。
「あー、そうそうコレコレ!うーん、私まだ覚えられないのよねーっ!基本もまだ出来ないしーあぁーどうすればいいんだろう」
内容はこういうものだ。
性質は精神を集中させ、放つ場所に力を込める。そうすれば気を纏うことが出来て、さらに慣れれば波動を打てるようになる。基礎的な事だそうだ。
最初は精神を集中させることから初め、次に気を込められるかどうかを確認する。
確認したら実際にやってみて、少しでも波動を出せたら合格。
そして効果について、細かい効果についてはBクラスからなので省略。
気を込めれば込めるほど、威力は強くなり、敵の体力を奪い、時には怯えさせることも可能である…とな。