残酷な過去
途中から帝斗sideです。※暴力、流血表現がありますので注意!
序盤なのにこの重々しさとちょろさ。すみません、自己満足で描いているものなので…orz
「意外と簡単に諦めてくれたわね」
「色々と重い事情って言うのがあんだろ?俺だってそうだし…」
余り聞くのは良い気がしないが、一応、その帝斗の重い事情を聞いてみた。
彼は案外普通に話してくれた…が、彼の表情はいつもの明るい表情ではなく、過去を思い出すのを躊躇うように歯を食いしばっていたのだ。
彼の過去は息苦しく、残酷で、悲しかった。
まるで荒れ地に草も木も生えない場所で、鉄の匂いが感じられる地で、雨が降り注ぐ中心に居るかのよう。
寂しくて、悲しくて、血生臭い。
そんなところに今まで一人ぼっちで居たように感じられた。何でも、彼は裕福な家庭に居たと言う。
俺は長男だった。
毎日が楽しくて、不自由無く暮らして幸せだったのに…その人生は地獄へと落ち去った。
突如強盗が現れ、家庭を襲った。金目目当てなのは分かっていた。
だが父、母、弟、妹、姉、祖母、祖父…全ての命を奪っていったのだ。
両親は硫酸を掛けられ皮膚が焼け、その後心臓を銃でぶち抜かれ、その上人体を切断されたり、姉妹と弟はレーザーで人体を切断され、祖父母は電流を喰らい即死、その上止めと言わんばかりに包丁で喉と心臓を刺された。そんなありえない地獄絵図を最初から最後までみていた俺は恐怖と吐き気を感じて動けなかった。
目を閉じられなかった。あまりにもその光景が現実とは掛け離れていて、衝撃的だった。
目が閉じられない。痛い、涙が出る。でも閉じられなかった。
その強盗たちは俺に目を向けると、躊躇いもなく銃をこちらへ向けた。
その銃口は俺へと向けられる。強盗の気持ち悪い笑み、階段から落ちる姉妹と弟"だった"もの。様々な光景が目に焼きつき、思わず口を抑えた。
恐怖で足が動けない。吐き気でそれどころじゃない。
今まさに殺されようとしている瞬間、衝撃より憎しみが上回った。
焼けるような熱い憎しみが心の奥底から這い上がって己の全てを黒い炎で包み込んだ。
憎しみで息が苦しかった。唇を噛みちぎるくらいの力で噛みしめる。自然と痛みは感じない。意識は真っ直ぐにそいつらに向いていたから感覚が麻痺していた。
金も…家族も、全てを奪ったコイツら許せない。
殺してやる。同じくらい痛い目に合わせてやる。
我を失い、憎しみで覆い尽くされた俺の心は破裂寸前だった。そして俺は…
「お前らなんて死ねばいい!家族よりももっと残酷な死に方で大地獄に行きやがれ!!」
大地獄とは何だと自分でも笑った。
そんなところは、所詮人間の創りだした空想でしかない。我ながらたちの悪い冗談を言ってしまったと思った。
でも、その願いは叶ってしまった。
憎しみで覆い尽くされた感情を一気に放出すると黒い物体になり、奴らに襲いかかった。その黒い物体はこの世のものとは思えない恐ろしいものであった。形はわからない。しかし、本能で怖いと思うほど得体のしれない黒い何かであった。
そいつは真っ先に強盗たちに向かって行き、やがて強盗たちを覆い尽くした。その瞬間に、黒い物体が圧縮し、ソイツらを一瞬で潰した。
ぐちゃっと生々しい音を立てて、肉片が周りに飛び散り、血飛沫が舞う。それは綺麗と言えるものではなかったが、まるで地獄の光景を見ているようなそんな感覚に襲われた。
勿論、そいつらは跡形もなく、原型を留めない"何か"になった。その何かは暗黒の空間へと吸い込まれ、跡形も無く消え去る。
これは俺の願いが叶ったのであろうかと、その時はいつまで経ってもわからなかった。
死ねばいいと全てを吐きだしたのは最後の悪足掻き。どうせ俺だって死ぬんだと思ってた。
でも…神は俺を助けた。このどうしようもない俺を。
死ぬのは怖かった。
怖かった…が、この状況で生き残るのなら死んだ方がマシだと思った。夢ならば覚めたい。随分と酷い悪夢だったと笑いたい。
神は残酷だ。
家族は原形を留めないほどに床に転がっていて、強盗も殺して…こんな状況で生き残って俺に何が出来るといいたい。
俺にやるべきことはなんだ?
自害することか?
それとも何もかも失った中、生き続けろと言いたいか?
俺は楽しかった人生を根こそぎ奪われ、憎しみと悲しみの渦の中心に居るかのように孤独だった。
近所の人からは可哀想可哀想とばかり…




