魔術マスターを目指す
考えこんでいると、唐突に風船ガムの割れる音がした。
きっとジョレンがやったんだろうと特に気にしていなかったが、何故かその音が響いた瞬間に皆はジョレンに素早く視線を向け、驚いていた。
意味が分からないのですが…
「ジョレン!!もしやお前…!なんか思いついたのか!?」
「うっそー!ちょっ、ジョレンちゃんホント!?」
何故風船ガムが割れて何かが思いつくという発想に走るのかが些か理解出来ない。
何故、Why?と首を傾げつつ聞いてみた。
「ああ、えっとね。ジョレンちゃんは風船ガムを扱う天才なのよ!」
さりげにクオリティが低いような気がする。
いや、低いぞ…というか突っ込みどころが多すぎるんですが…
「風船ガムが割れた時、彼は不思議な力を発揮するの!」
つまりは何かを考えだしたり思い出したりする訳か…
なんかくだらないなぁ…と微妙な目をしつつもジョレンに視線を向ける。
「どうだ、ジョレン!何か浮かんだのか!?」
「ああ…、今回の作戦だが…クラスは上げない方が良いと思うと俺の頭が告げてる」
どういう頭だよそれ、風船ガムを偶然割って発揮する考えなのか!?
「なんでだ!?着々とクラスを上げて行くことでSSクラスには近付かないのか!?」
「いや、その稼いだポイントを溜めておくんだとよ。それを一気に…と言う感じがいいらしい。それにどんどん上がってくのは敵にバレやすいからな…だとよ」
多分、多分だが、ジョレンの頭の中はきっとファンタジックな幻想を物語っているものだと私は考える。多重人格というあえてすぐ思いつく幻想をしまいつつ、一人で愉快な幻想を繰り広げているのだろうと思う。
つまりは、あれだ。
孤独的想像だ。中二病だ。
うんうん、と頷いていると歓声が上がり、いつの間にか皆はジョレンを囲んでいた。
「おぉ!流石はジョレン!それは良い方法だ!敵に不自然と思われなくて、ポイントを溜める!それは良い作戦だな!」
「ポイントなんてそんなすぐに溜められんのか?」
「馬鹿、エド!こういうものはじっくりとやるものだ。一気に溜められるなんて思うな!」
こんなマイペースでいつSSクラスを調べられるんだろうと思う。さっきまで月島くんはどんどん上がろう!とか言っていた癖に今ではあれである。というかSSクラスまで辿りつけるか不安である。
会える可能性はかなり少ないし、ずっとDクラスでやっていくのであればその可能性もさらに激減する事になる。
やっぱりDクラスはDクラスだなぁと改めて実感する。こりゃ時間がかかりそうだと私は密かに溜息を洩らした。
その後、私達は再びトレーニングルームに向かった。
無論、明後日の実技試験の為である。
「じゃあ練習すっぞ。だいたいDクラス卒業のレベルは魔気を発生させるだけで合格だが今回は魔術まで行くぞ!」
『はぁ!?』
一同唖然の声。私は彼の言っている事は良く分からなかったが、他の皆は信じられないとばかりの表情を露わにしている。
いや、でもそう言えば前トレーニングルームに言ったときに話していた。確か魔気は平均よりも下の妖術でD~Cレベルだと聞いていた。そしてその次に魔力、基本中の基本能力でBクラスで覚えられれば良いらしい。
そして魔術は…Aクラスでも使えれば良い方だという…魔術!?
「Aクラスで完璧にマスターするっていう魔術をこのDクラスがマスターするって訳ぇ?うっそ、マジありえないー!!」
ありえないと言いながら床を地鳴らすようにドダバタと足を動かす。Cクラスに迷惑だから地鳴らしするな。
リラが嘲笑うかのように(何でこんな偉そうなんだ)帝斗が言ったことについてケチをつけると、帝斗はキッと目を細めた。
「ありえなくはない!この学園には、マルデ先生も居るし、セイナだって居るだろ?それで魔術を覚えられねぇって方が異常だぜ」
「いや、覚えられた方が異常だぜ」
全くその通りである。
この通り何にも覚えられないDクラスがAクラスの魔術までマスターするのはかなりの天才で無いと無理であることであり、いくらSAクラスレベルのセイナさんやマルデ先生という妖術専門の教師が居るからといってもこんな短時間で魔術を成功させられるとは思えない。誤算である。
………でも出来ないとは言えない。




