SSクラスの力
「その対象がSSクラスに居れば勝ち組って事だな」
「いえ、意外とそうでもないわよ?」
またもやセイナが首を振り、自分の顔と口を指してみせた。その不自然な行動に一同は疑問に思ったが、セイナの正確で分かりやすい解説で皆は納得することになる。
「何が違うってんだ?」
帝斗は微妙に眉間に皺を寄せ、頬杖をつく。
それを見ていたRiraは帝斗に「早く歳とるよ」と余計なお世話的な駄目出しをすると、見事、Riraの額にデコピンが入った。デコピンされたRiraの額は若干赤くなっており、本人は目にうっすらと涙を浮かべていた。
それを横で見ていたシロナは呆れながらも苦笑していた。思っている事をすぐに発してしまうRIRAの悪い癖を一番良く知っているのは一番近くにいる、親友であるシロナではもうお見通しなのだった。
それに比べ、帝斗も短気と言う悪い性格を持っており、細かい事には五月蠅いが、意外と酷な事は言われても全く動じないという微妙に矛盾しているのだった。
「生活の中で奴らの顔を見ただけじゃあ本当の正体は分からないってことか-ー?」
煎餅を口に含み、ボリボリと噛みながら言うジェレン。パラパラと床に落下する煎餅の屑を見て、癒麗は複雑な顔をする。
「"SSクラス"として現れる時は仮面、そして声はおそらく本来とは違う声で、音声になってたりするのよ。それにね、マントまでご丁寧に被ってる始末よ?これで本当に正体が分かると言えるのかしら?分かったら、まあ天才ね」
「…透視能力とか持ってる奴居ねえの?」
セイナは首を横に振った。
生徒の中には透視能力を持つ者も居るには居るらしいが、それを見越してなのかSSの生徒たちを透視能力を使っても全く見えないそうだ。透視能力対策でもしているのだろうとセイナは考える。
「称号を付けていた事が分かったとしても、それは違うかもしれないしそうかもしれない。曖昧だし、それにSSの生徒7人が全員マント被ってたらもうどうしようもない話だわ」
呆れて肩を竦めるセイナ。その言葉に皆は頭を抱えた。同時に頭を抱えると言うのも中々できな凄技である。
「じゃあどうやって探すんですか?要点はそこじゃなかったんですか?」
「うーん、これ以上は難易度Maxだからこれ以上はとても大変になるわよ」
「大変?」
なんでもこれ以上の捜査を行うには限度があるらしい。
それはほぼ不可能に近いことであって、当然Dクラスにも当たり前に出来ない事である。
「その大変な事ってなんだ?」
そう帝斗が尋ねると、セイナはより真剣な顔になって一言。
「魔法戦争に参加することよ」
『!?』
癒麗以外、全員驚いていた。「魔法戦争」という言葉に一同は驚愕し、深刻な顔をした。
「いやぁ…魔法戦争は無理があると思うよ?」
プリッツェナは苦笑しながら言う。それに皆はうんうんと頭を激しく上下に動かす。
そう、これはもう驚きを超えて笑いなのであった。不可能すぎて、笑うしかない。そう皆は思っていた。
「魔法戦争って…?」
私が問いかけると、セイナが微笑んで口を開いた。
「魔法を競う戦争。戦いね。通常、誰とでも競う事は自由だけど…SSクラスとは限られた者のみ、厳選された人だけSSクラスの生徒と戦えるのよ。そう、SSクラスの生徒から指名された者だけね。その挑戦を受けるか受けないかは自由。でも勝つとSSクラスの生徒に一つ命令が出来るの。なんでも…例えば…正体を明かして下さい…でも可能よ。まあ、勝てるわけないでしょうけどね」
魔法戦争は競い合いらしい。
誰が一番に強いか、それを確かめる行事だった。SSクラスの生徒に指名され、更に勝てば命令を出来る。指名されるだけでも十分不可能なのにその上勝てなんてほぼ不可能だろう。
戦いには意味があり、Dクラスの生徒に勝てば10ポイント、Cクラスは30ポイント、Bクラスは50ポイント、Aクラスは100ポイント、Sクラスは1000ポイント、SAは10000ポイント…とポイントが貰えるのだ。当然、勝てば金を貰えるのと同様、生徒たちは全員参加する。
時間制限は三日間。その間、どのくらい生徒たちを倒せるか、競い合い、ポイントを稼ぐ。ポイントはランキング制になっており、ランキングに入ればまたポイントを貰える。SSクラスはその様子を鑑賞し、実力のある生徒を選出する。簡単に言ってしまえば、金稼ぎだ。SSクラスとの試合は最後の締めというもの。
「毎年一度行われるんだけど、SSクラスから選ばれない年もあったわ。つまりは決勝戦ナシ」
「あー、あったな。何かSSクラスの誰か知んねぇけど…"死ぬほどつまらなーい!"って不機嫌だったな」
「ああ…ありましたね」
なんでも、二年前に魔法戦争が行われた時に印象に残る生徒が誰も居なかったのか、SSクラスの一人が機嫌を損ない、そのせいで決勝戦が中止。生徒たちの楽しみでもあるSSクラスとの試合が無くなってしまった事があるらしい。それは二年前に限らず、稀にあることらしいのだが、自由すぎるなSSクラス。
「あっ、あとさ!決勝戦でなかなか強い挑戦者とSSクラスの生徒とで結構熱い勝負になった時あったじゃん?」
「んー?あー何かあったかもー」
「その後どうなったと思うー?」
ジョレンが私に向かって問いかけた。
い、いや…私に聞かれましても…。
うーんと頭を悩ませて、軽く口に出した。
「SSクラスの生徒を倒す一歩前まで追い詰めた…とか?」
「いやー、それは無いでしょ」
「うん、ないない」
聞いといて何だその態度は。
軽く苛つきながらも、彼らの答えを待った。その顔は何故か恐怖に怯えているような表情だった。
「な、なななんとね…?面白い試合に興奮したSSクラスの生徒が…そのなかなか強い一般生徒を殺しちゃったんだよ」
「…え?」
こ、殺す?
「あぁ、あの試合ね。あの時の場の空気ったらまるで氷山の一角に居るような氷付きだったわね。あれでも手加減していたSSクラスの生徒は興奮した影響で封じていた力が一段階壊れちゃったらしいのよ」
なかなかいない貴重な強い人材を見て、嬉しくて興奮したのか力を一部開放してしまったらしい。故意ではなく、興奮した影響で溢れでた力に耐えられなかった制御装置が一部破壊されてしまったようで、そのまま一撃を放った所、加減せず放たれた威力が遥かに倍増した攻撃に生徒の体が耐えられなく、抹消してしまったそう。
「あれでも5%も開放してないそうよ。加減していた威力は1%未満。制御装置が壊れてしまった事で3%に威力を増してしまった影響で生徒が殺されてしまった……まず、私達でも他の生徒でも魔法戦争で彼らに勝つのは無理ね」
まともに張り合ったりなんかしたら学園が抹消されちゃうわね。なんて笑えない冗談を愉快に笑って言ってみせたセイナさん。
いや、恐ろしすぎて声すら上げられませんでした。いや、何で私達SSクラスの事知ろうとしてるの?うっかり死んでも文句言えないよこれ。命がけって言葉で表せないくらい危険度が恐ろしいことになってるよ。
「殺しちゃった本人は"あっれー、殺しちゃった?いや、ごめんねぇ。つい興奮しちゃって"とヘラヘラと笑っていたそうよ」
いやあああああああ、こわああああああああい!!!
死に関して言葉があまりにも軽率すぎる!ごめんね、てへぺろの勢いにも劣らない軽さだよ!




