セイナと情報
「というかそこの変態は勉強できんの?」
そう言い放つ私に変態以外全員が頷いた。
マジで?と一瞬目を疑った。変態が勉強出来るなんて思うはずがない。
「プリッツはめっちゃ勉強できるぜ?後は全部駄目だけどな」
「酷い事言うねぇ、まあ…あってるけど」
肩を竦めながら横目でエドを見る変態。
体育は文字通りDランク並みのゴミクズだと言う。そもそも体育でDランクってどういう感じなのか見てみたいような気がする。
バスケなのに、ドリブル出来なくてボール抱えたまま走りだしてアウトするとかそのようなものかな…と考える。もしそうならば、バスケよりもアメフトをオススメしようと思う。
考えていると、教室の扉がガラガラと開いた。
「ただいま戻りました」
壊れかかったボロボロの襖の鈍い音が聞こえたと思ったらそこには美人さんが居た。
片脇にやたらとデカい本を抱えながらやってきたこれぞお淑やかな女性と言うのにふさわしい美女。
ダークパープルの美しい背まである髪を揺らして、目は可愛らしい桃色。プルンとした色気ムンムンの唇に私よりもデカイ胸。お、大人の女性だ…!と思わず叫びそうになった。
「おお、セイナじゃん!おかえりー」
あのSAクラスレベルだと言うセイナさんでした。
「ただいま。あら、新人さんかしら?」
此方を見てニコリと微笑むセイナさんに私はドキっとしてしまった。女の私にも魅力を感じるセイナさんのオーラはとてつもない。破壊力抜群の微笑みに私の女子力(物理)とは比べ物にならない。まさに女神だ。
「おー、丁度良かった。セイナ、シロナとリラの勉強見てやってくれねぇか?」
「あら、またなの?大変ね。ビシバシいくけど…それでもいいの?」
微笑みながら首を傾けるセイナ。
リラとシロナはしばしば頷いた。するとセイナは少し驚いた顔をした。
「あらあら、どうしたの?普通なら面倒くさいと投げ出すのに…随分と変わったのね?」
いつもなら「えーじゃーやめる」って即答するのにね。とクスクス笑うセイナさん。何というか、笑い方もお上品だ。
「いや、SSクラスの情報を少しでも知ろうと思ってな」
「SSクラス?あそこには近付かない事をおすすめするけれど…あんまり知っても良い事じゃないわよ?」
「でも理事長を調べたいんだよ。この学園は謎だらけで…何もわからない。今俺たちは作戦を立ててるんだよ」
「何でまた学園なんかを?」
「俺の身勝手さ、ただ救ってくれた"神"に礼が言いたい。他の奴らはわからないが、ちゃんと知った上で礼が言いたいんだよ」
帝斗は強い口調でそうセイナに伝えた。心なしか帝斗の表情は穏やかだ。
セイナはそれに少し考えて、口を開いた。
「私は学園のほとんどを知らない。でもSSクラスの情報なら少し知っているから教えてあげるわ」
稀に来る図書室にSSメンバーが居るのは月曜日と木曜日らしい。それも、必ず居るというのだから驚きだ。何故そんな情報をセイナさんが持っているかは知らないが、本人は調査済みらしい。
「それで、SSメンバーは必ずD~Aの制服を身に纏っているわ。校内で私服を着ているはずがないの。私達は教室では許可されているけど、校内で私服を着れるのは教師、もしくはSSクラスのみなのだから。でも制服だったら余計分からなくなると思うの。でも…ここがポイント」
「ポイント?」
ええ、とセイナさんは口に人差し指を持ってくると小声で話し始めた。
「SSメンバーはね…纏っているオーラが違うのよ」
「オーラ?」
見た目は他の生徒に化けていて、ただの生徒にしか見えないが、分かる人にはわかるセイナさんの言うオーラを出しているらしい。
近づけば圧迫されるようなプレッシャーを受けるらしい。威圧感が半端ないとセイナさんは言う。セイナさんは素顔は見たことはないけど、SSクラスの生徒が他の生徒に化けているところはわかったという。公共に出ることによって気配や能力は隠しているが、やはり隠し切れない厳格があるらしい。
「わかる人にはわかるわ。わかる人にはね」
念入りに言う彼女からわかるとしたら、オーラだけでわかる人はそうそう居ないということだろう。
そんなのわかるのはセイナさんくらいでは無いかと途方に暮れるところだが。
「意味が無いと思った?残念、彼らにはちゃんと目印があるのよ」
「目印だと?そんなものあったらとっくに…」
「これは生徒のほとんどが知らない、極秘情報よ」
「セイナはそんなのどっから手に入れてくるんだよ」
「それは秘密」
それがわかったら苦労はないが、しかしセイナさんしか出来ないことなのだろう。私達が知ったところで何も出来ないだろうし、知ったところ無駄だ。
「私達には目印となるよう、各クラスに称号というものが与えられる事は知ってるわね?」
「ああ、俺達はDクラスだからポーンだな」
「ええ、Cクラスはルーク、Bクラスはビショップ、Aクラスはナイト、Sクラスはクイーン。SAクラスはキング…そして」
そこでエドは会話を制止させ、問いかけた。
「待てよ、普通キングまでじゃないのか?」
その質問にセイナは首を横に振った。
私もそれは疑問に思った。
この称号はチェスを元に作られているが、キングが象徴であることは変わりない。SAクラスがキングだとするならばSSクラスは何なのか?と私は首を傾げる。
「それが違うの。SSクラスの称号は天使の羽が付いた蛇なのよ。それがSSクラスの証し」
彼らの称号はゴット。文字通り"神"という称号だ。つまりはSSクラスの生徒7名は神だということ。ああ、やはり知ってもいいことではなかった。
この学園の規則は、SSクラスにはほとんど適用されない。つまりは、SSクラスはほとんど何をしてもお咎めがないということだ。流石は特別クラスと言うべきなのだろう。しかし、そんな自由なSSクラスでも守らなければいけないことがある。
「どんなにSSクラスに規則が通用しないといっても、必ず称号は付ける事になっているの。これは学園の掟なのよ」
しかも、見える位置に…ね。とニヤリとよからぬ笑みを浮かべるセイナさん。…確かに凄い情報だ。
「だからね、見えずらいけど必ず天使の羽がついた蛇の奴を付けていたらSSクラスの生徒って事になるわ。これはごく一部の奴らしか知らないからうっかり洩らすと大惨事になるから気を付けてね」
なるほど…他の生徒から見ればただのお飾りにしか見えないが、本当はSSクラスの称号という事なのか。
しかし当然、堂々とは付けて現れないだろう。何らかのカモフラージュをしているに違いない。




