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7話

最初はキラの独り語りです


昔、誰だったか。

角ってのはきっと心のようなもので、心はきっとそこに宿る、なんて言っていたやつが居て。

初めてそれを聞いた時は、正直気持ちが悪いと思った。

私はそう言う、…なんて言うんだ?

詩的というか、なんというか。そう言うくっさい言葉を耳にすると背筋がぞっとするし、あまりに阿呆臭くてすぐに忘れた。


角が何であるかなんて、どうでも良いじゃないか。どうして大切に思うかなんて、どうでもいいじゃないか。

何にでもいちいち理由を考えだす輩自体理解出来なかった。

私の中に在るのはいつだって、”どうでもいい”だ。


でも今思うと、案外それは当たっているのかもしれない。

私自身の話だ。


例えばそれが心だったとしての話。


今は無い、100年前に失ってしまった私のそれは、心が折れたから折れたというより。

心が空っぽだから―――いとも容易く折れたんだ。


そう思うと、なんだか妙に納得出来て。そんな事で納得している自分が可笑しくて。

100年間、あまりに暇すぎて無駄に考える癖がついたみたいだ。

……ああ、そうか。

長命な明族にやたらと思想家きどりの連中が多いのはそのせいか。

また、納得だ。


◆◆◆◆◆


「おい、まだかよ」

「まだじゃからまだに決まっとるではないか」

「もー遠いんだよ」


地界の最深部に居たキラは今100年ぶりに地上へと向かっていた。徒歩で。目も眩むような階段を延々と上る。しかしながら、最も深いというだけあって、かなり上り続けてもなかなか地上にはたどり着かない。自然と愚痴が出る。


「だいたい不便なんだよ。エンジュなんて毎日往復してさ、あいつ足だけ異様に筋肉質なんだって!もっと考えて作れよな!」

「…っ秦族の、長が何を言う。わ、儂に至ってはデスクワークが基本の明族じゃぞ!ろ、老人じゃぞ…!」

「お前、自分でやっといて忘れんなよ…!私だって今は、お前らと体力変わんないんだよ!体が…思うように動かなくて…!あーもーさっさと封印石解呪しろよ!」


言い合う二人は余計に息を切らす。

確かに彼女の力が元に戻ったならば、ファイなど軽々と抱えて一瞬で地上にまでたどり着けるだろう。

しかしながらその解呪自体、ファイ一人でなんとか出来る問題ではない。この世で最も強い力を抑える為の封印石だ。発動は勿論、解呪にも幾人もの力を要する。


「つか、お前…、あれ、そうだ、聖獣は…?…、聖獣、召、還、しろよ!」

「わ、儂が庇護に置く、のは、全て大型…で、で、あるからしてな…」


狭くて召還なぞ出来ない、そう言うファイの言葉の後には荒い息づかいだけが続く。


「や、役立たずめ!」


余計に息が切れると分かっていても、悪態をつき続けてしまう二人であった。


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