第2話:世界管理システム《ゴミ箱》、最強説
衝撃は、なかった。
気づいた時には、俺は“落ちていなかった”。
黒い空間に、立っている。
足元には床があるが、素材は存在しない。
概念だけが、形を取っている感覚。
〈DELETE QUEUE : ACTIVE〉
〈ERASE RATE : 0.00%〉
「……遅っ」
思わず呟いた。
削除処理が、進んでいない。
いや、正確には――
進められていない。
〈ERROR〉
〈ERROR〉
〈ERROR〉
赤い警告が、視界を埋め尽くす。
〈ADMIN AUTHORITY : CONFLICT〉
〈SYSTEM CAN’T OVERRIDE TARGET〉
「は?」
俺が?
“神側”が、俺を消せない?
次の瞬間、理解が追いついた。
ここは削除対象が一時的に隔離される場所。
世界管理システムのゴミ箱。
監視なし。
ログなし。
強制修正なし。
――つまり。
「ルールが届かない場所、か」
笑いが漏れた。
視界の端で、何かが点滅している。
〈DEBUG MODE : ENABLED〉
触れた瞬間、
脳に情報が雪崩れ込んだ。
世界の構造。
管理階層。
権限の分岐。
そして――
“神ですら使わなくなった管理コマンド”。
「……なるほどな」
あの会社は、ただの末端。
世界管理システムの下請けにすぎない。
削除処理も、
マニュアル通りに押しただけ。
「じゃあ、逆にしよう」
俺は、指を鳴らした。
〈SELECT TARGET〉
〈COMPANY_SYSTEM : FOUND〉
〈LINK STATUS : ACTIVE〉
画面が、軽く震える。
「削除理由?」
鼻で笑った。
「“邪魔だから”で十分だろ」
〈DELETE LEVEL : IRREVERSIBLE〉
〈ROLLBACK : DISABLED〉
本来、神専用の項目が開く。
俺は、一切迷わなかった。
「実行」
空間が、白く弾けた。
――その瞬間。
⸻
同時刻・現実世界
二十八階のオフィスで、
一斉にモニターがブラックアウトした。
社内システム、全停止。
入退館ログ、消失。
顧客データ、参照不能。
「な、何が起きてる!?」
管理室が、パニックに陥る。
だが、誰も気づかない。
“会社という概念そのもの”が削除対象になっていることに。
⸻
ゴミ箱領域
〈TARGET : COMPANY_SYSTEM〉
〈STATUS : DELETED〉
処理は、わずか0.3秒。
俺は、息を吐いた。
「……まず一つ」
視界の奥で、新しい項目が開く。
〈NEXT TARGET CANDIDATE〉
〈WORLD ADMINISTRATOR〉
その文字列を見て、
俺は初めて、心から笑った。
「次は……神様、か」




