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世界管理システムのゴミ箱から始まる逆転劇 〜理不尽に消された俺は、神の権限をハックして復讐する〜  作者: Project:GARBAGE ADMIN


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第1話:削除対象に指定されました

オフィスビル二十八階。

ガラス越しの夕焼けは、やけに綺麗だった。


赤と橙が混じった光が、無機質なデスクの列を静かに染めている。

それは、今日も変わらない一日の終わりを告げる色のはずだった。


――机の上に置かれた二枚の紙を見るまでは。


一枚目。

懲戒解雇通知書。


二枚目。

全損害賠償請求書。


合計金額を視認した瞬間、視界がわずかに揺れた。

現実感が遅れて追いついてくる。


「……以上だ」


上司の声は淡々としていた。

感情はない。説明もない。

まるで、処理結果を読み上げているだけの口調だった。


「確認は以上ですか?」


その言葉で理解した。

これは相談ではない。通達ですらない。

すでに完了した処理なのだ。


「不正アクセスの証拠は、こちらに揃っています」


追加された書類には、見覚えのないログが並んでいた。

触れたことのないシステム。

実行した記憶のない操作履歴。


「待ってください。それは――」


言い切る前に、空気が変わった。


周囲の視線が、ゆっくりと俺から逸れていく。

誰も口を挟まない。

誰も、こちらを見ようとしない。


最初から、そこに何もなかったかのように。


「……ID、切っといて」


上司の一言で、すべてが連動した。


社員証は入館ゲートを通らなくなり、

社内チャットは「ユーザーが存在しません」と表示され、

メールアドレスは無効化された。


試しに、隣の席の同僚に声をかける。


「なあ、これ……」


返事はない。

彼は俺を見なかった。

正確には――見えていない。


そこにある空間を、そのまま見ているような目だった。


背中に、遅れて寒気が走る。


おかしい。

ただの解雇ではない。

社会的抹殺にしても、手順が異常だ。


空調の音が、微かに歪んだ。

キーボードの打鍵音が、一定の周期に揃っていく。

世界が、処理されている感覚。


足元の床が、滲んだ。


黒い。

色ではない。

深さだ。


「――君なんて、最初からいなかったことになればいいのにね」


背後から聞こえたその声を、

俺は振り返らなかった。


床が、完全に抜ける。


重力が消え、視界が反転し、

オフィスという現実が、下へ落ちていく。


〈DELETE QUEUE : ACCEPTED〉


意味は、なぜか理解できた。


――削除対象に指定された。


落下の先に、底はない。

ただ、黒い空間が広がっている。


そして、そこに

触れてはいけないものがあった。


俺は、躊躇なく手を伸ばした。


「……デバッグ開始だ」


声は、驚くほど落ち着いていた。


「まずは、あの会社から――消去する」

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