私の人生は普通がいい
物語にテーマがあるように人生それぞれにテーマがあってそれは人それぞれ違うもの。例えば『恋』『共感』『存在意義』そんな風にいろんなテーマがあって私のテーマは——
高校1年生の春、桜並木の通学路が私たち新入生を向かい入れるよう学校、夢ヶ先高校までの道になる。
桜から落ちる花びらを「はあ~」ため息が吹き飛ばす。
——憂鬱だ。青春の高校3年間は正しく恋と青春の代名詞、ビックウェーブといってもいい。でも私からすればゲームの中とか、アニメの中でしか縁がない代物だ。頑張る気も勇気もない。
時が進む事しかできないなら、リアル転生者になりたい....切実に!
そんなダメな思考を繰り返し、でも、学校へ向かう。入学式をさぼるなんて問題児もいいところだ、これ以上普通から逸脱したくないし。でも、今はそんな事よりスカートってこんなに短いものだっけ? めっちゃスース―する。
学校の校門前。
写真を撮る新入生とその親。目がまぶしすぎて目がぁ....目がぁ....と、もだえ苦しみそうになる。
一緒に写真を撮れる親が居るんだな、みんな.....。
時の止まった絵に映らない様にすすすっと隅から移動してカメラレンズから隠れた。
校門前に移動して自分のクラスを探す、生徒たちがクラス表に群がる。
オ○ムの群れみたい。
黒服を着た文字たちが一杯だった。その中から自分の名前を探すのがこんなにも大変だとは思わなかった。探すだけならまだしも他の大勢もおんなじ思考だ。
まさしくアイルビーバック。
満員電車にもまれるサラリーマンはこんな気持ちなのかと、今から社会の社畜になった事を考えるなんてなんてできた社畜心だろうか......はぁ......。
ってじゃなくて、今はなまえなまえ。
「少し通らせて......」その言葉は水に落とされた小さな小石の様だったけど波紋は広がりは大きい。それと同じで彼女は周囲に与えた衝撃は大きかった
それはその美貌だろう。天来がさした輝きの髪。碧眼のクォータだから、日本人離て放漫に実った果実だろうるスカートから伸びた脚にも無駄な肉付きは一切ない。腰の細さなんてコルセットで常に締め付けているかの様。
同じ学生服なのにドレスを着ているかの様だ。
そして何より視線を集めたの輝きを独り占めして豊満に実った果実だろう。
美少女を周りは一気にはやし立てる。
『めっちゃ可愛い』『顔面偏差値たけぇ』『お嬢様だ』『踏まれたい』
顎に指を添え、腰を折り自分の名前を探す彼女の前に、勘違い王子様気取りが現れる。
膝小僧を土で汚す。伸びた手のひらを捧げる。そして愛の言葉を投げかける。まるで状況は姫と王子様のよう。
「僕は君に一目ぼれした。どうか僕の姫になってくれないか?」
計算した状況づくり。周囲の目は、結末を引っ張る圧力の目。
「......ありがとう。嬉しい——でもごめんなさい。私は運命の人がいるの」
打破した。
口元に握り拳を当てた。掴んだ手首と一緒に背中を向けた。
石化した。メドゥーサですら目を合わせないといけないのに、あわせず石化せるとはさすが。
「くふっ、くふふ」
私の隣からあふれ出した男子生徒の笑いはわかりみがふかい。でも、静寂の中に広がる蜜の味の失笑は認知を集めただけじゃない。そこには私の『初恋』があった。
「うそ.....」
歯車が回るように私と彼の世界は一緒に回り始めた。
三日月模様に口元はほころんだ。握り拳の指の曲がり角が月が落ちないように支えた。
目が合った。
「やばっ」その瞬間にはつい危険を口走っていた。
人を掻き分けて校内に逃げ込んだ。
「まっ——」
新入生のクラスは三つある。私はその一つ目の前で困り果てていた。もちろんそれだけじゃない疲れ果ててもいる。
くの字に曲がった膝に手をつき、こうべから垂れる汗。
ハンカチを探す。あれっ、ない!?
「あ、あれ~、ハンカチがない? おかしいな?」
「落としてたよ」
華奢な手は救いの手。親切か、陽キャのただの行動力かは分からないけど、背に腹は代えられない。人と関係持ちたくないけど......。
それに自分のクラスをタイミング見て探しに行かないといけないし、それに服の袖で汗拭きたくない!
「あ、ありがとうございます」
人と会話するときは顔を見る。そう教わった。
人の顔を見て話すのは苦手だけど、頑張れ私——頑張った!
高顔面偏差値のスマイルは恵まれてないと作れない武器だ。おそろしい。
人の顔を見ることが苦手な私がつい見つめてしまった。恐ろしい名前知らない子さん一号。
「というか髪ぼさぼさだよ。ほら」
スマホを向けてくる。桜の花びらの様に風が吹いたぐらいでも傷が出来そうな華奢な体。
枝分かれして捻じれたピンク色の髪はサイドテール。
原石を加工して作られたかのような宝石の瞳はダイヤ。
地上から月に手を伸ばしても届かない様に、でも、だからこそ伸ばしたくなる。人間のみの力を超越した魅力、夢の投影が人の形を模した彼女はメイク上手。
だが、それは感情の含蓄がない事実の陳列、負の感情は鏡を曇らす。
表情はうかない。
「そんなに髪ぼさがショックだったの?」
「......ああ、はい。まあ、セットしてきたので」
「じっとして」
伸びた手は櫛になる。優しい手つきで髪を通り抜けた。
「よしだいぶ良くなった。さーすがあたし!」
手のひらを差し出した。
なんだろう——いやほんとなに?
「お、おて......?」
「おちんぎん」
「お、お金とるんですか!?」
驚きすぎて悲鳴を上げたそうだった。さすがに上げなかったけど声が裏返った。
「等価交換の法則」
「すみません。急ぎの用事が......」
「それは等価交換の法則を無視するほどかしら?」
「いやほんと、自分のクラス探さないといけないんで!」
「あ~、だったらあたしと同じクラスだよ」
「ウェっ!? うそだそんなこと......名前だって知らないんだしお互い」
「我が名は、夢ヶ先夢子そなたは?」
ぐうちょきぱを合わせた手を仮面の様に顔にはめる。
「えっと、小春月愛です....」
手をお金マークにして、アイロンをかけたかの様に平らになった手はお金を受け取る準備万端のようだ。
肩に腕を回して肩をがしっとと掴まれた。
「きぃ!」
「戦闘員?」
切り抜ける方法を思い浮かんだ。正直、反感を買いそうな行為だから、怖いけど勇気を出した。
手のひらに手のひらを重ねた。お手に見える。それは私も同じだけど、等価交換に見せる。
「なに.....?」
「ば、ばかには見えないお金......」
目の視線をスライドさせる。
「ふ、ふふふ......あはは!」
こらえた笑いは決壊した。目じりに浮かぶ涙を指先で拭う。
「ウケる。ふふっ、今回はそういう事にしといてあげる。月愛」
きょ、きょりかん~。
「よ、よしくおねがいします。あの、ぼ、私のクラスって何組なんです? というか、知ってるんですか?」
「えっ、しらなーい」
そんなバナナ!?
「あ、あの~」
廊下の曲がり角を掴みひょっこりと顔を出した少女がいた。
ふんわりとした茶色のボブカット。前髪はアイロンをかけてるのだろうかターンが効いてる。
学生服から見えるパーカー、黒ニーソが白い肌との対比になり肌の白さを無言の主張をする。
「裁姫ちゃん!」
「さばきちゃん? お友達ですか?」
何処かで聞いた事があるような? 気のせいかな?
「病裁姫です。病むに裁くに姫です」
「小春月愛です。名前に姫がついてるなんていいですね。なんていうか可愛くて」
ん~! 可愛い.....!
「あ、あの~。私クラス表の写真撮ってるんですが.....良かったら」
何でそんな写真撮ったんだろう?
お守り代わりに写真撮ってたんだけどまさかこんなすぐ役に立つなんて。
三人とも同じクラスだった。
その後は体育館に移動して、校長のあいさつはどの時代でも変わらず睡眠導入剤としては最適だ。
そしてクラスに戻って教師のよろしくと、生徒のよろしくを繰り返す。
その同時進行。隣の席の一人の女子生徒が話し掛けてきた。真っ赤なヘアピン刺した分け目を作った女子が立ち上がった。
青色赤色が混じった紫色の髪。冷たさと温かさが混じった声色や表情。
椅子に座っていて分かりずらいが同じクラスじゃないと同い年とは思わない。
「田辺愛でーす。しくよろ~」
今度は夢子が立ち上がった。大勢の視線が集まったが堂々としている。
緊張を感じ取れない。落ち着きが見て取れるのは慣れ故だろう。
「夢ヶ先夢子でーす。好きなことは食べる事、食べる事、食べる事、食べる事、食べる事、夢は食べる事です!」
「食べる事好きすぎだよ。夢ちゃん」
愛の一言でクラスは笑い、よりほがらかなになった。
皆の笑いに付いていけない疎外感がしんどい。
クラスの中心になっていく人間はこう言う人なんだろうな。そしてみんな集められていくんんだろうな。
明日からもきっとこんな風に普通の日常についていくのがしんどくなり続けるんだろうな。
そう考えると更にしんどくなって瞼を開けていられなかった。
「小春。次はお前だぞ?」
瞼を開けた。手の皿に顎を乗せた顔は鼻腔から吸い込んだ息を吐き出した。
「小春月愛です。こんな.....こんな見た目をしてますが中身は『女』です。性同一性障害なので.....」
周りの視線が刃物の様に露出する。囲まれてる、逃げ場がない。まぁ、自業自得だ。
「いろいろとご迷惑をおかけしますが、一年間よろしくお願いします.....」
初恋の人と再会した日は私に勇気を求める日になった。
席に着いた彼、いや、彼女に話しかけた。人の歩く程の溝を挟んだ向かい側に座っている。
なにが正解なのか分からない。でも、だからって諦める事なんて出来ないから、私なりに向き合いたい。
「あの、小春さん今後ともよろしくお願いします」
何で私なんかと思いながらもそんな事聞く勇気もない。だから、今は傍観しか出来ない。
夢から目覚めたのぼやけた視界を拭い去る。
黒板の日数は数日が過ぎた。いまだに現実が起きてこない、夢を見ているような気分だ。
影を映し出す。真昼の斜光、この時間帯は人の移動が多い教室外も中も生徒が多すぎる。
というか人多すぎてヤバイ。被害妄想がはかどりすぎて気持ち悪くなってきた。
教室出たいなぁ......でもみんな立ち上がったら目立つだろうしなぁ.....。
教室で椅子を寄せ昼食をとっていた、愛と夢子達の友人の裁姫が同席している。仲良く談笑中だ。
だけど、最初に気が付いたのは裁姫だった。第三の目でもついてるのだろうか?
「裁姫ちゃん?」
「どうしたの?」
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
青ざめた顔で口元押さえながらでは説得力はない。
「いや、ほんと......」
笑顔を崩さないまま耳元に顔を寄せた。
「困ったときはお互い様です。無理しないで」
「すみません」
状況をうまく誘導できたからか、表情はルンルン。
裁姫の肩に夢子は両手をポンと置いたそれはファイト。
裁姫は月愛を連れ保健室に向かう。
保健室に来た。扉を開け中を一見するが先生はいない、そのため申し訳ないと思いながら、許可と謝罪を先送りにベットを無断で使わせてもらうことにした。
裁姫に体を支えてもらいながらカーテンを開く。
その中に先生はいた、校長もいた——一つベットの上で——
「あ、あなたたちカーテンはノックしなさい!」
カーテンをノック? 普段ならそう思うが今はそんな余裕は、ない。
その中で目にした光景に月愛は海のように青い顔は沸騰し赤くなった。
裁姫はそんな事起きることないと油断していた為、大きく口を開け驚いた表情を見せた。
カーテンをさっと閉め、肩に両手を置き顔を背中に隠し回れ右。
「保健室じゃなくって別の場所にしましょうか!」
「あっ、うん.....」
「このことは内密よ。あぁん! 校長先生!!」
時間は遡り、月愛は夢を見ながら進む現実。
私はこの数日で夢ヶ先夢子ちゃんと田辺愛ちゃんと仲良くなった。って言っても私の実力というより、二人の陽キャ力の結実だ。そんなすごい二人には相談をこれからする。
「ねえ、二人に相談があるんだけど.....あの」
「な、なんだってー!」
まだ全然言えてない.....。
「愛ちゃん?」
「ごめんごめん。ちょっと空気を緩和しようと思って」
「ごめんね。アイちゃんは後で私がしめとくから」
ぷるぷると震えるぐらいでお腹の声を押さえ込もうとしたけど、あふれ出した。笑いすぎて力と、緊張が一緒に抜けた。目じりの涙をぬぐいながら二人の凄さを再確認する。
「ほどほどにね.....!」
「あのね.....私好きな人が居るんだ。でもその人は男で、女の子なんだ.....」
「ふーん.....サバちゃんそれってそんなに悩む事なのかな?」
「あいちゃん?」
「だって恋に性別って関係なくない。大事なのって恋したことじゃない?」
「愛ちゃんがすごい良い事言ってる」
「ふふーんでしょう~、さっきのしめる案件は帳消しに」
「それとこれは別」
「噓だそんなこと!」
凄いって再認識したばっかりなのにまた再認識させられたや。
「ありがとう。愛ちゃん、夢子ちゃんも」
「うーん? 私は何お役に立ってないよ」
前を向いた。でも見たのは——月は太陽を見ていた