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6.囲い込まれる悪役令嬢



「………………夢ぇぇ!?」


てっきり断罪された時のように、目が覚めたら慣れ親しんだ自室だろうと思っていた私は、素っ頓狂な声を出してしまった。


もしもお父様に聞かれていたら、特大の雷が落ちていただろう。


「ああ、ルイーズ嬢。良かった気が付いたか」


でも、考えても見て欲しい……。

まさか気を失っている間に、新しい婚約者(仮)に横抱きされているなんて誰が想像するだろうか。


呆然として動けずにいると、クリストファー様は可愛らしくはにかみながら説明を始めた。


「今ちょうど寝室に運ぶ所だった。

侍女が少しコルセットがきつかったのではと言っていたが、美しく着飾る為に女の子も大変なんだな」


「…………ショック性です!!」


と思わず反論した途端、思考がクリアになる。


「きゃあっ!」


ようやく自分を包むクリストファー様の逞しい腕に、恥ずかしさが遅れてやってきて、降りようとした途端強く抱き込まれてしまう。


「おっと、急に動いたら危ないじゃないか」


「な、な、何を! 私は幼な子ではありません」


「とにかくベッドに下ろすまでは大人しくしてくれ、念の為医師を呼ばせているから」


「…………それは遠慮させさて下さい」


(休んでる場合じゃないの、今すぐ帰りたいから!)


「ごご誤解だ、不埒な事などしない!!」


「…………それは分かってますので」


あなたのその真っ赤な顔を見れば、とは口にしなかった。


──その後、結局どんなに固辞しても帰らせて貰えず、広々とした客室のベッドで診察を受けさせられた。


今は一人、侍女達に甲斐甲斐しくお世話をされ、沢山のクッションにのんびり凭れながら温かなハーブティーを頂いている……。


(…………………………私、何してるの?

全然自分のペースに持って行けないよ!!

あ、でもこれもしかして魔法の件は聞いてなかった事に……出来ちゃう?)


すべてを有耶無耶に……と考えている時に扉がノックされ、戻ってらしたクリストファー様と共に、艶やかな貴婦人が現れた。


「御機嫌よう、ルイーズ嬢。お具合はいかが?」


「……ラムバレド公爵夫人!」


社交界では王妃陛下よりも影響力のある女帝、ラムバレド公爵夫人。

何の心構えもなく、クリストファー様の母君とお目にかかる事になってしまった。


慌ててご挨拶を、とベッドから降りようとするのをクリストファー様の手によって止められてしまう。


「ルイーズ嬢、無理しないで。母は気にしないよ」


(するわ!絶対気にするわアホ!)


「そうよ、倒れたと聞いたわ。起きたりしないでね」


「…………も、申し訳ございません。あの、お目にかかれて光栄ですラムバレド公爵夫人…………」


今日は血の気が引く事ばかりだ。


(………………なんて日なのよ!?

ラムバレド公爵夫人にベッドの上から挨拶したなんて知ったら、お母様が卒倒しちゃうんじゃ……)


「もうすぐ親子になるんですもの、遠慮なくお義母様と呼んで頂戴ね」


恐縮していたら、公爵夫人はその麗しの白百合の君と謳われる優美な顔を綻ばせ、歓迎の意を示して下さった。


「お心遣い感謝致します、ラムバレド公爵夫人」


しかし、お義母様などと呼べる訳がない。何しろこちらは公爵夫人ルートからの脱出を……


「あらあら……それで? わたくしは、ルイーズ侯爵令嬢とお呼びしたらいいかしら?」


そう言って、公爵夫人は手に持っていた扇子を開くと悪戯っぽく微笑まれた。

決して笑っていない青い瞳(ルシェルアイズ)で…………。


(ひっ、圧が強い! 弱腰日本人気質な私に、これは無理……)


仮にも侯爵令嬢として幼い頃から身に付けた淑女の仮面で、ここは躱すべきだったかもしれないけれど……。

私は、明らかに強者のオーラを振りまく未来の姑(仮)に尻尾を巻いてしまった。


「…………どうぞ、ルイーズとお呼び下さい………………お義母様」


望む返事が得られ、公爵夫人は今度こそ柔らかに目を細められた。


「うふふ、わたくし娘が出来るなんて嬉しいわ。

仲良くしましょうね、ルイーズ」


「ぜ、ぜひ」


(ひええぇ!! 何だか囲い込まれてる気がする! 無理無理無理、私まだルート変更諦めてないんだから!)



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