ミニチュア大好き令嬢達は修羅場をこなす
「リサ!ガスパール!!」
大量の布を持って馬車から走る2人に私は駆け寄った。
「カナン様、お土産です!」
「まだまだ沢山ありますよ!」
「ありがとう、2人共……お兄様は?」
「カロル様は馬車の中にいらっしゃいます。外部の者が姫妻に会う事は禁止されているから、と」
「そう……お兄様にも伝えてちょうだい。無茶なお願いを聞いてくれてありがとう、って。……それから、貴方達を送ってくれてありがとう、もね」
「かしこまりました!」
急いで布を屋敷に運ぶと、ルカが分厚い書類を持って待っていた。
「カナン、これが国民全員の要望と大体の体型のリストです。……本当にやるんですね?」
「勿論。こんなにいっぺんにお洋服が作れるなんて今から待ちきれないわ」
妖精達はキラキラ光るものが好きというのは本当だった。要望には大抵、緑色かキラキラ光る石か花の名前が書かれている。
「ルカ、お裁縫はできる?」
「得意です!」
「じゃあ今から渡すワンピースの裾にレースを縫い合わせてちょうだい。リサはジャケットに緑のビーズをつけて。微妙に色が違うから混ざらないようにしてね。ガスパールは靴を彫って頂戴」
色とりどりの布を型紙に合わせて切り、縫い付けていく。小指の爪程の刺繍や小さなひだ飾りをそれぞれに施せば、みるみるうちに妖精のドレスが出来上がっていく。
「……すごいなあ」
レースを縫い付ける手はそのままに、ルカがため息を漏らした。
「当たり前ですよルカ様。私達のお嬢様が屋敷でなんて呼ばれてたかご存知ですか?」
「変態、でしょ?」
「カナン様ったら!まあそういう風に呼ばれることもありますけど……」
「『ミニチュア職人のカナン様』って呼ばれてるんですよ。な、リサ」
「そう!お嬢様は自他共に認める職人なんです」
「3人共、もっと手元に集中なさい」
嗜めると3人は慌てて作業に意識を向け、再び作業の音だけが屋敷に響いた。
「……昔から変わらないんですね」
ルカがぽつりと呟いた言葉は、集中していた私には聞こえなかった。




