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ミニチュア大好き令嬢は布を集める

「国民全員分の服を作るつもりですか!?」


「そうよ。ルカも手伝ってね」


「そりゃ手伝いますけど……」


私はクローゼットからありったけの布地と小物を取り出した。


「……この量じゃ足りないわね」


「じゃあ僕のドレスを使ってください!持ってきます」


「いいえ、その心配は無いわ。兄様に布を持ってきてもらうから」


「えっ、でも姫妻側から外部への連絡は出来ないはずじゃ……」


「出来るのよそれが」

 

 鍵付きの小箱にしまっていた青いリボンを取り出す。びっしりと施された刺繍は全て小さな魔法陣になっていて、まじまじと見つめても全てを把握するのは不可能に等しい。


「ミニアチュール領の特産品は繊細な細工品。そしてこれはその技術を詰め込んで作った魔法道具。……普段は動物の首に巻いてカモフラージュしているけれど、これ単体で遠方と会話が出来るの。緊急事態用に持たされたのが早速役に立って良かったわ」


……聞こえますか、聞こえますか、聞こえますか。


リボンの魔法陣に埋め込むように、私は話し始めた。



***


『兄様、お願いがあるの。わたくしが邸に置いて行った布とドレス、端から全部リリスの地へ持ってきて欲しいの。緊急事態よ』


「布とドレス、だけでいいのかい?」


『それもそうね、ボタンとビーズも……』


「僕の馬車には今カナンのメイドと執事も1人ずついるんだけど、その子達も持って行こうか?」


『リサとガスパールがそこにいるの!?』


「いるよ。ついさっき城での報告を終えて徒歩で帰ろうとしている所を見つけたんだ。どうだい?」


『いるわ、一番必要よ。……ありがとう兄様。2人は無事?』


「むしろ王宮でご馳走を出されてつやつやしてるよ……安心しなさい。それじゃあ、すぐに行くから」


猛スピードで走る馬車に揺られた従者2人は、不満げに主人の兄を見つめた。


「……ご馳走どころか一時はネズミ食おうとしてましたけどね、こいつ」


「ガスパールだってお腹鳴ってたくせに」


「ほらほら2人共、早く降りて妹がご所望の品を集めておくれ。僕じゃ部屋を荒らすだけだろうからね」


馬車から2人を下ろすと、カロルはため息をついた。


「何だろうなあ緊急事態って。……せめて危ない目にあっていないといいけれど」

たった1人の妹だ。自分よりも亡くなった姉に懐いてはいたが、凝り性で変わり者のくせに変な所で生真面目な可愛い妹なのだ。


「……もしも、ルカ王女のお噂が本当ならば……」


 愛妹が本当の遠くに行ってしまう日が近々来るかもしれない。


「それでも兄様はお前を応援しているよ、カナン」


山のような布を抱えた2人が屋敷から出てきたのを確認し、カロルはそっと涙を拭った。

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