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ミニチュア大好き令嬢は決意を固める

「で、どうするんですか?」


 ルカの部屋に戻った私は、ルカの従者のグリムとグラムに囲まれて詰問されていた。

 2人は王宮勤めではなく妖精国の住民だそうで、そっくりな見た目でいまだに判別がつかない。その同じ顔が二つ並んでこちらに迫ってくる。


「時々突拍子もない行動をするとは思っていましたが……まさかルカ様以上とは」


「陛下のお怒りをどう鎮めるおつもりなのです」


「まさか貴女が手を汚すつもりですか」


「そもそもどうしてそんな啖呵を切ってしまったのです」


「グリムもグラムも、その辺にして!カナンが困ってます」


「おや、いつの間にか呼び捨てになっていらっしゃる」


「妖精国で何かあったのですね」


「そ……それは今はいいでしょ!!」


グリムとグラムを部屋から押し出すと、ルカは私の方に振り返った。


「カナン、妖精国でああ言ってくださった事、嬉しかったです。でも父上の怒りを収めるのは、想像以上に難しいと思います」


「それでもわたくしはやります。一度宣言したのですから」


自分でもどうしてあんな風に啖呵を切ってしまったのかわからない。けれどどんなによそ者と言われても私はルカの伴侶で、ミニアチュール王国の国民なのである。……そして、一度は王妃として育てられた身だ。


「わたくし1人でやるとは言いません。カナン、貴方のお手伝いをさせてちょうだい。わたくし達は姫妻……いいえ、夫婦なのだから」


 この国も、貴方の心も守りたい。そのためなら、本当に悪役令嬢になったって構わないわ。


***


「父上は『怒り』と表現していましたが、本当は悲しみの方が強いと思うんです。最愛の妻が人間に襲われ子を孕ってしまっただけでなく、子を産み落としてからは一度も目覚めていないのですから」


「ティターニア様はどうして眠り続けているのかしら」


「妖精以外の血が流れた赤ん坊を産むには大量の魔力が必要ですから、失った魔力を取り戻すために寝ている……と父上は言っていますが、恐らくは」


 私の部屋に場所を変え、私とルカは作戦会議を開いていた。


「母上は土や植物ではなく、幸せを司る妖精です。それ故に生き物の喜びや感謝の心を糧にしないと魔力を生成する事ができません。王都で人間と交流する事も出来ず、活気の無い妖精界で眠るだけの現状では魔力の回復が難しいのでしょう」


「要は喜びや感謝の心に触れないとティターニア様は目覚めないのね」


「その通りです。……母上が眠りについてから、妖精界も随分元気がなくなってしまったと老人達が言っていました」


「やっぱり人間と交流するのが一番良いのかしら……」


「父上が許してくれないと思います」


 どうにも解決策が思いつかず2人で顔を見合わせていると、ふいに私の耳を誰かがくすぐった。


「きゃっ」


「カナン!?」


 むず痒い耳をさすろうとした手に蝶が止まる。よく見るとしれは蝶ではなく、先程ルカの部屋に来ていた妖精の子供だった。


「カナンさま!遊びにきたよ!」


「あら、貴方はさっきの」


「あのねあのね、カナンさま妖精国で宝石を落としたでしょ、ぼく届けにきたの。でもとってもキラキラきれいだから、ぼくこの宝石ほしいの」


 妖精の握りしめた手のひらの中には、エルマーの釣りズボンを作る時に使った貝ボタンがあった。


「落とし物を届けてくれてありがとう。それじゃあお礼に、その宝石は貴方に差し上げるわ」


そう言いながら、私はある事を思いついた。


「……ねえ、さっき貴方達に会った時にわたくしお礼を言いそびれていたの。防御壁を作るお手伝いをしてくれた方や、庭の畑に色んな作物を毎日沢山実らせてくれた方がいるでしょう?その方々にもお礼の贈り物をしたいと思うのだけれど、皆さんはどんな物がお好きかしら?」


「プレゼント?えっとねえ、妖精はねえ、キラキラしたものが好き!それから、人間が妖精のために作ってくれた物が好きだよ」


「……それだわ」


「カナン、何か思いついたんですか?」


「ええ、とっておきの。……妖精さん、お願いがあるの。わたくしにあなた方の晴れ着や小物を作らせてくれないかしら」


 貝ボタンを握りしめて目を輝かす妖精に、私はとびきりの淑女の微笑みを向けた。


「みんなで晴れ着を着て、女王様の感謝祭を開きましょう」


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