ミニチュア大好き令嬢、妖精王に謁見する
魔法陣を潜った先に続く道は一面の花園だった。といっても王宮のように整備が施されてはいない、花々が自然体で咲く迷路だ。
「……ねえ、カナン様」
「なんですか?」
「名前を呼ぶ時に様を外して欲しいんです」
手を繋いで入り組んだ道を迷いなく通りながらルカ様はもじもじと申し出た。
「じゃあ、ルカさん?」
「さんも要らないです!そもそも私……じゃなくて僕、3つも歳下なんですよ。敬語も要りません!」
「わかったわ、ルカ。……これでいい?」
「はいっ!」
「でもそれならわたくしの事も呼び捨てにしてもらったほうが良いんじゃないかしら。形式上は夫婦なわけだし」
「ふっ……!か、カナン……さん」
「あら、それならわたくしもルカさんと呼ぶわ」
「が、頑張りますから……!」
じんわりとルカの手が汗ばむのを感じる。気づいたルカが慌てて手を離そうとしたが、解けないように握りしめた。
「ねえルカ、オーベロン様とティターニア様ってどんな方?」
「2人共美しくて偉大な方です。最も母上は僕を産んでからずっと眠りについているので、起きている姿を見た事はないのですが」
「……そう」
そうやって話しながら、ルカに先導してもらいどんどん歩いていく。どこかで見たことのある、でも名前のわからない花々のアーチを抜けるとそこには大きな大木があった。
「ここが、オーベロン様の……」
「人間の香りがするな」
金色の葉が舞い上がった場所に、見た事がないほど美しい男性が佇んでいた。
「父上、只今帰りました」
「ルカよ、その人間はなんだ」
「……僕の理由で、妖精に好意的な人間の1人。カナン・ミニアチュール嬢です」
「お会いできて光栄です、閣下。シルヴァー王国ミニアチュール公爵が娘、カナンと申します」
「なるほど、其方がルカの……」
オーロラ色の長髪を長い耳にかけ、妖精王は私をまじまじと見つめる。
「父上、約束通り良き人間を連れて参りました。シルヴァー王国への攻撃をおやめ下さい。許し難い悪も存在しますが、良き人も存在する。悪のせいで被害を被る事になる良き者を無視してはなりません」
「……それならば、お前が我が怒りを収めてみよ、ルカ」
瞬間オーロラ色の髪が炎のように燃え上がり、妖精王は木の葉と共に姿を消した。
『我が怒りはシルヴァー王国現王の死と王国の破滅でしか収まらぬ。それを止めたいならば、お前がその手で鎮めるのだ』
木の葉の擦れる音が声のように森全体に響く。
『人の子よ、我が息子のために知らぬ土地への訪問感謝する。ただこれは妖精界……もとい我ら家族の問題である。其方が気にかける必要はない』
「あります」
気づくと口が動いていた。
「関係あります。わたくしはルカ様と姫妻……いえ、ルカの伴侶です。伴侶を支えるのは当たり前ですわ」
繋がれたままのルカの手をぎゅっと握り返す。
「このカナン・ミニアチュール、必ず閣下の怒りを鎮めてみます」




