表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本町ことははつたえたい!  作者: えかなじうむ
7/10

日本語訳版第2話『なんて???』

おかしい。思っていたのと違う。大体異世界的なところに行ったら現地の皆さんと交流を深めて能力どっかんしてうんぬんかんぬん……。うんぬんかんぬんしたかったのに……。


「え、ええっと……。なんとおっしゃいました?」


「はわわ……ことばがつうじません……。ど、どこからきたんですか?」


だめだ……言葉が通じない。すごいきれいな声でなにか言ってるけど、なんて言ってるかほんとにわからない……!冷静に考えてみると、こことは違う世界にいるのに言葉が通じるわけないことに今更ながら気づく。どうやら私だけでなく目の前の彼女もわかっていないようで、両耳をふるふると震わせて狼狽えている。な、何とかして安心してもらわないと……。


「あの……落ち着いて……。」


言ってから気付いたけど、そういえば日本語通じないんだった!どうやって無事だって伝えたら……。でも言葉は通じないし……。こ、こんなときは……!


「……え、えいっ!」


「!?」


なんとかしなくちゃいけなくて、でもどうしたらいいかわからなくて、気がついたら私は目の前の少女を抱きしめていた。私より小柄な彼女は私のちんまい胸にすっぽり収まってしまうほどで、その温もりが伝わってきて、なんかいい匂いがして、ふわふわしてて、どきどきしてなにも考えられない。でも……癖になりそう……。


「あ……あの……。」


私の腕に包まれている彼女の声が、私を現実へと引き戻す。と同時に、私の背中を冷や汗が伝う。


「あっ……ご、ごめん……。」


「きゅ、きゅうにどうしたんですか……?」


私の拘束から解放された彼女は脱兎のように逃げ出……しはしなかったものの、こちらを警戒するように見つめている。ぴんと垂直に立てられた耳を見るまでもなく、明らかに私はやばいやつだと思われている。いくらパニクってしまっていたとはいえ、初対面の、しかも年下の女の子を急に抱きしめるなんて……。嫌われちゃったかもしれない。いやそれより通報?警察に捕まる?異世界だからよくわからないけど……もしかして死刑?教科書の挿絵でしかみたことないようなあれこれで命を……?いつもは「なんとかなるでしょ」で乗り切ってきたけど、流石に今回はそうはいかない気がする……。考えが暗い方へ暗い方へとひとりでに転がり始める。最大級に勢いに乗ったそれはもはや止められなくて……。


「え、えいっ!」


柔らかくてあたたかい感覚に、ふと我に帰る。さっきとは逆に、今度は私の方が彼女に抱きしめられていたことに気づいた。


「あ、あえ……?」


「……あなたはさっきのわたしとおなじめをしています。ふあんでこころがいっぱいのめ……。」


相変わらずなにを言ってるのかはわからない。


「……あなたはわたしにこうしてくれました。これはとってもあたたかくてここちよくて、ふあんなんてすぐになくなっちゃいました。だからつぎはわたしがあなたにしてあげます。」


けれど、それでも彼女の温もりが、その優しさが伝わってくるようで。私がその小さな胸に身を預けると、彼女の細い腕もそんな私を受け入れてくれているみたいにぎゅっと抱き寄せてくれる。いつまでもこうしていたいと思うのは、気恥ずかしくて顔が上げられないからかどうなのか、その時の私にはわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ