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本町ことははつたえたい!  作者: えかなじうむ
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日本語訳版第5話『つたえる、ということ』

私がこの世界に来てから体感で1年くらいが経過した。最初は「いーさたぅ」ってなに?「あぁ」っている?みたいな感じだったけど、1年たつとこの世界の言葉も少しは分かるようになった。幸運だったのは、この世界の言語が日本語と似たような体系だったこと。発音は難しくてまだ日本語読みになっちゃうけど、それでも買い物くらいはできる。今もこうやって、ラエラと2人で買い物に来ている。もちろんリードだったり首輪だったりはない。はじめは私のことをペットとして愛玩しようとしていたのかなんて失礼なこと考えていたけど、決してそんなことはなくて、異世界に来て心に拠り所のない私の唯一無二の親友になってくれた。結果論にはなるけれど、ラエラに拾われてよかったな、なんて、今なら声を大にして言える。


「ことはさん!あのおみせにもよりませんか?」


「うん、いいよ!」


こんなふうに会話ができるのも、ラエラのお陰だ。感謝してもしきれない。……それにしても。


「ねえ、ラエラ?」


背中越しに声を掛けると、怪訝そうに振り返るラエラ。


「うして私のことを追い出したり嫌ったりしなかったの?私……この世界の言葉分からなかったのに。」


それを聞いたラエラはくすりと微笑むと、


「ことばがつうじなくても、ことはさんがやさしくていいひとだってことはわかりました。はじめてであったときに、このせかいについてなにもわからないはずなのにふあんだったわたしをやさしくだきしめてくれたあなたが、わるいひとなわけないじゃないですか。」


そういって恥ずかしそうに微笑むラエラに、私は我慢できなくなって、その背中を追いかけると後ろからぎゅっと抱きしめる。


「ありがとう。これからもよろしくね!ラエラ?」


分かり合うために必要なのは、言語力だったり知識量だったりじゃなくって、優しさなのかもしれない。


「……かえったらべんきょうしますよ、ことはさん。」


「え、えぇ~!?そんなぁ……。」


私を振りほどき、なぜか速足で逃げていく彼女に追いついて、私たちは2人で並んで、あの木造りの家への小道を歩いた。

ここまで長々と読んでいただきありがとうございました。

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