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夕焼けお味噌汁

作者: 武正幸

 気が付くと、僕は深い深い穴の底に居た。


 何かの拍子で、この井戸のような穴に落ちたらしい。井戸の様に直径が狭い穴だったなら、両手両足を踏ん張って、上の出口を目指せたかもしれないが、穴の直径は、そこそこ大きい。僕が両手両足を思いきり伸ばして、やっと届くサイズなので、その方法で登っていくのは不可能だ。壁に手や足を引っかけられる窪みや、石も見当たらない


 誰が何のために、掘った穴なのだろう。遥か上方に見える穴の出口からは、さっきまで丸く小さな真っ青な空が見えていたが、だんだんその丸は、夕焼け色に染まりつつあった。


 おいしそうな味噌汁の香りが漂ってきて、自分が空腹であることに気が付いた。時刻は、夕飯時なのだろう。煮物や炒め物の香りも漂ってきた。


「誰か、居ませんか!!??」


 僕は、声を振り絞り、誰かの耳に届けとばかりに、必死に叫んだ。だけど、想像していた通り、何の返答もない。長い時間ずっと、見上げていたが、この穴を覗く人は居ないし、人の声が聞こえることも無かったので、想像通りの結果だった。


「レオ!ご飯の時間だよ」 横穴から母の声が聞こえた。

「また、地上人ごっこしていたんだね。お前は、地底人なんだよ。だからこの穴を登る必要は無いのよ」


 そう、僕は、地底人。たまにこうやって、地上人ごっこをして遊ぶのだ。横穴を進むとリビングがあり、父と母、お兄さんが、既に食卓に着いていた。


「レオ、遅いぞ。」お兄さんに、怒られてしまった。

「ごめん。地上人ごっこで遊んでた」「お前、それ好きな」

「食事が冷めるわよ、頂きましょう」

「いただきます!」地底人一家の、夕食が始まった。


 レオが、地上から落ちてきて8年。すっかり自分を地底人と思い込んでいる。3年前に核爆発で、地上人が全滅してしまったから、レオは最後の地上人という事になる。






 



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