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13話 春風 陽奈

 7年前の雪気ゆうきSIDE


 桜舞う夕暮れ時。

 陽奈ひなを河原に呼び出した。


『まだカブトムシは取れないよ?』


 陽奈ひなは黄色の髪を靡かせて桜を見上げる。


 心臓が破裂しそうなくらい緊張してる。

 でも言うんだ。素直にただ正直に。さぁ言え。言え!

 大きな声で堂々と!


『す、すきです』


『スキー? 急にどうしたの?』


『す、好きなんだよ......大好きなんだよ』


『男の子だね〜......私も好きだよ』


『ほ、ほんとに!?』


『うん、大好きだよ カブトムシ』


『へ? いや? その、

 俺が伝えたいのは昆虫愛なんかではなくて......

 じ、人物愛といいますか、なんというか』 


『チュ!』


『でも雪気ゆうきの方がもっと好き

 ......顔赤いよ りんごみたい』


 熱くなった耳が、陽奈ひなには一生勝てないと教えてくる。

 それでもいい、一生こうやって生きていたい。

 隣にいてくれるだけで何でも出来る気がするんだ。

 自分よりも陽奈ひなを信じれる。


 季節外れのりんごが2つ実った春の日、俺達は恋人になった。





            ¥ ¥ ¥





『あれ〜〜 黙り込んじゃって、 

 感動しすぎて声もでないって感じ?』


 深夜。陽奈ひなからの突然の電話。

 親しい仲のように話しかけてくる。

 俺を地獄に落としただけでは飽き足らず、ハルを擦りつけておいて。

 裏切り者、死ね、消えろ、カス、殺す、クソ女......

 

 言ってやろうと思ってた罵り。

 溢れてくるが電話を切られないよう、必死に押さえ込む。

 

「ハルのことで話したかった

 その前に聞くが、どうして番号を知ってる?」


 6年前とは違う番号。

 当然このクズに教えた覚えはない。

 マンションも知られていた。


『知ってるから知ってるんだよ!

 そんなことより、私の天使ハル可愛いでしょ〜!』

 

「天使なら今すぐ迎えに来い、お前に会いたがってる」


『手紙に書いたよね! 私ね、今遠い所にいるから!』


「場所を言え、どこへでも連れていく」


『無理無理、私のいる場所には雪気ゆうき達じゃ入って来れないから!』


「いいから言え」


『しつこいな〜 暫くしたら迎えにいくからさ!』


 はなからこんな押し問答で口を割るとは思っていない。

 もういい。本題に入る。

 無駄話をして、憎たらしい声を聞きたくない。


「3億用意する。

 今すぐには無理だが3年以内には必ず。

 だから迎えに来い」

 

『困ったな〜大富豪になっちゃったよ!

 持つべきものは成功した幼馴染だね!』


 あかねと結婚してしまえば3億くらい何とかなる。

 このクズは一生俺の施しで物乞いのように生きる。

 裏切った男にすがって、惨めったらしく。

 

『まぁでも、いいよ悪いし

 お金がなくても私は幸せだから』


「今更格好つけるなよ

 頭金で3000万振り込む、口座を教えろ」


『迷惑メールみたいなこと言うね』


「俺の気が変わる前に答えろ!」


『金、金、金、昔はそうじゃなかったのに!

 6年間で何があったの? 誰のせいなの? 私は悲しいよ』 


 電話越しでも分かる。こいつ笑ってる。

 俺が今何を考えてるか分かった上でからかってる。

 されてることは昔と一緒だが、どす黒い感情がこみ上げてくる。


「金じゃないなら何だ!? 目的を教えろ』


『暫く面倒を見てほしい、最初に言ってるよ!

 本当に他意はないから安心して』

  

「俺がお前の言うことを信じると思うか!?」 


『すっかり疑り深くなっちゃって

 純粋で、素直で、健気な、ハルを少しは見習うといいよ

 ハルは私の言うことなら何だって信じるの

 私を愛してるし、愛されるてると信じてる、可愛いよね!』


 俺を苛つかせることを楽しんでる。

 歯の奥に力が入って震える。


『ねぇ雪気ゆうき二人で色んなことをしたよね

 ハヤシライスを持って、ピクニックに行ったし

 初日の出を一緒に見たよね

 あの定食屋さん、まだやってるかな?

 焼きうどん美味しいかったよね』


 全部分かってるんだ。乗るな。

 懐かしむように話すこいつは俺を揺さぶりたいだけた。


「何も覚えてない......」


『嘘だ〜!

 私の言葉に一喜一憂して、私の隣で世界一の幸せ者のようにしてたじゃん!』


 喉から出かける言葉は、死ね。

 言えばこいつの思う壺だ。

 分かってる。分かっているが.......


『私を信じて、愛して、幸せだったでしょ

 DNAって偉大だよね』


「何が言いたい!」


『ハルはね、昔の雪気ゆうきにそっくりだよ

 私からしたら2人とも、同じおバカさん』    


「黙れ......黙れよ」


『本当は聞きたいんでしょ?  

 どうしてあの日あんな事を言ったのか? したのか? 

 雪気ゆうき泣いてたもんね......

 教えてあげよっか? それはね、』


「黙れ!!! これ以上無駄話に付き合ってられるか!

 警察に行ってもいいんだぞ、そうすりゃお前は捕まる!」


 やめろ。理性が呼びかけてくるのを感じるが止められない。このクソ女を罵らないと気が済まない。

 だがクソ女は、


『その時は弁護よろしくね!

 まぁ行かないよね、夏川さんにバレたら困るもんね!

 もし行っても私みたいな美人は模範囚になってすぐ出てこれるよ、仮釈放って知ってるでしょ? 先生!』 


 俺の何枚も上手だった。

 全てを知られていた。


「.......どうして知ってる どうして全部知ってるんだ

 言え! 言わないとぶん殴るぞ!」


『知ってるから知ってるだよ.......あっそうだ!

 ハルを幼稚園に通わせてあげてね! 

 親の世間的の為に、軟禁生活は可哀想だよ』


「ふざけんな、ハルを捨てたお前に言われる筋合いなんてない

 俺がハルを追い出さないと思ってんのか? 

 締め出しやる! 施設に入れてやる! 嫌なら今すぐ来い!」


『捨ててなんかないよ、その内迎えに行くから!

 でも、それが脅しになると思ってる雪気ゆうきは十分可愛いね』


「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね」


『ひどいこと言うね、でも人間いつかは死ぬよ

 幼稚園.....10日以内だから忘れないでね、おやすみ』

  



           ¥ ¥ ¥

 

  


 電話が切れた後、俺は掃除したばかりの部屋を荒らし回った。壊して壊して壊した。

 ありとあらゆる暴言を叫んでいたと思う。

 防音設備が優れてるおかげで寝室にいたハルは起きてこなかったと思うが余り記憶にない。 

 ただ朝起きると、ハルは部屋を掃除していた。


「俺がやるから座ってろ」


「......ハルにまかせて! ハルね、そうじとくいなんだよ!」


 一緒に終わらせた。

 陽奈ひなを信じた俺と、信じてるハル。

 ハルを陽奈ひなの元に返すと、いずれ俺のようになると思うと、少し胸が痛んだ。

読んで頂きありがとうございました!

投稿日が2日も空いてしまい本当にごめんなさい。

次話は明日か明後日にはあげたいと思います!

感想等いつも励みしています(ガチ)、本当にありがとうございます!

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