02
『 あなたは 44 人目の“ ×× ”メール受信者です。 』
白い画面に一文の文字。顔文字も絵文字もない、親がさっき送ってきたメールと同じくシンプルな文面。
それなのに。それを見た瞬間、真冬に冷水を浴びたような寒気が走った。
「……何これ?」
ふいに自分の口から呟きが漏れた。
たった十八文字の文なのに。なんだかとても、薄気味悪く感じる。
「どしたの?」
冷戦中の美亜が不思議そうにこちらを眺めていた。
相変わらず仏頂面の彩名も少し不思議そうに私をみつめている。
「どうしよ、変なメール届いた」
携帯の画面を二人に向ける。
「何それー。“ ×× ”って何それ? きもちわるー」
「……ただのイタズラじゃない?」
彩名くらいにしかめ面で言う美亜。
いつもの不機嫌そうに眉をひそめる顔の彩名。
「だよねー」と二人に同意して、軽く後悔しながら、ケータイを閉じた。
見るんじゃなかった……。
「気にすることない」
「え?」
顔を上げると、彩名と目が合った。
彩名はいかにも億劫そうに「悪戯。わたしもよくあることだし」と呟いてから、私から目をそらす。
心配してくれてるのかも。そう思うと嬉しい。
私が「ありがと」と小さな声で言うと、彩名は大仰に顎を引いて俯いた。
彩名には悪いけど、まだあのメールを気にしている自分がいる。
「しかし、こんなメール送るなんて気味悪いよねー」
やや赤茶けた校則破りの髪の毛を風で乱れないように手で押さえつける美亜が遠くの山を見つめながら言った。
ビルもなく、ただ見えるのは山だけな田舎の風景を美亜はよく嫌っていたっけ。
どうでもいい事を思い出す。さっきの出来事を忘れようと必死になりながら、私は口を開く。
「さぁ? どこかの物好きかもね」
「あり得るかもー。最近の物好きはおかしいからねぇ」
聞きようによっては中傷に聞こえる言葉をはき出しながら、彩名をちらりと見る美亜。彩名は気づいていないようだった。
言いたいことはだいたい分かった。
ふと疑問に思ったけど、他の子達は彩名によく媚びをうるけど、どうして美亜は媚びじゃなくて、突っかかってるんだろうか。
たしか美亜は、金持ちだから彩名と一緒にいるはずなのに……。
二人の時に聞いてみることにしよう。
「それでね――――」
美亜は次から次へと話のネタを笑顔で私に披露する。
私も美亜と仲良く笑い合う。
それでも、あのメールの事を忘れられなかった。