深夜の学校鬼ごっこ『裏切りBAD END編』
脱出系ホラーゲーム感覚でどうぞ。
―――
ピンポンパンポーン!!
ここで鬼の交代をお知らせします。
鬼だった『小林未来』さんが人間としてリスポーン。
代わりに捕まった『小林加世子』さんが鬼になりました。繰り返します
―――
人を馬鹿にしたような調子で繰り返される校内放送に、俺は頭を抱えた。
―――嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!
暗い廊下を全力で駆ける。
はめ殺しの窓から見える外の景色は、絵の具で塗りたくられたように黒い。
何度も試したように非常階段へと続くドアを開けようとするが、何度やっても結果は同じ。びくともしない。
正面玄関も、渡り廊下へ続く扉も何故か開かない。
俺は後ろを気にしながら、足音を立てないように近くの教室に入った。
外へと続く扉以外は開くのだと、つい数分前まで隣にいた加世子が気づいた。
彼女と二人で忍び込んだ夜の学校。
加世子の妹の未来が学校から帰らないと聞いて探しに来た。
ただそれだけだったのに。
先程目の前で起こったことが信じられない。いや、先程どころか今晩起こったこと全てが嘘だと思いたい。
未来、どこにいる!?
頼むからどこかに隠れていてくれ。
アレに捕まる前に逃げなければ。
この、閉鎖された夜の学校から。
*
二時間前―――
「未来が学校から帰ってない?」
「そうなの。明日馬、一緒に探してくれない?」
日もとっくに暮れた頃、近所に住む幼馴染の加世子から電話がかかってきた。
未来はまだ十三歳、中学一年生だ。
外を一人でフラフラしていたら補導されてしまう。
「分かった。とりあえず学校に行こう。まだ残っている先生もいるかもしれない」
加世子は不安げな声で応えた。妹の事を心配しているのが分かる。
俺がしっかりしないと。
加世子よりも一つ歳上だからか、加世子と未来の事は昔から妹のように思っている。
適当なジャージに着替えてから加世子を家まで迎えに行き、二人で未来の通う中学校へと向かった。
明かりの一つでも付いていてくれればという希望は、真っ暗な校舎を見て捨てざるを得なかった。
校門は閉まっていたが乗り越えられる高さで、加世子を引っ張り上げて内側に入る事は難しくはない。
去年まで通っていたはずの中学校が、妙に排他的に感じる。
「誰もいない……のかな」
そう言う加世子は体を縮こませて俺の一歩後ろに張り付いていた。俺と同じようなジャージ姿で、ショートヘアの隙間から見える耳は寒さで赤く染まっている。
「中の様子を見てみよう。校舎に勝手に入ると警備装置が鳴ってしまうだろうから」
「う、うん」
近くの窓から校舎内を覗く。
暗くて何も見えない。
――いや、暗すぎる!!
瞬時に顔を上げて窓全体を見ると、そこには文字通りの人影があった。
人の影。
人間の形をした黒い何か。
それが窓に貼りつくようにしてこちらを向いている。
「なっ……!?」
なんだこれは。
「きゃあああ!!」
加世子の絶叫で我に返った俺は、加世子を庇うようにして窓を隔てた先に在るモノを睨みつける。
人の影はずるりと両手を動かして、窓を引っかくような動作を繰り返している。
ぺたっ……ぺたっ……
まるで外に出たがっているように。
「ひっ、明日馬あれ何、なんなの!?」
「分からない。とりあえず一旦戻って――」
異常な光景を前に、加世子の腕を取って引き返そうとした。
しかしもう遅かった。
「二名様、いらっしゃい♪」
場違いに明るい声が背後から聞こえた瞬間、目の前が真っ暗になった。
「鬼ごっこって知ってますよねぇ」
ふと、耳元で囁かれた声で目を覚ます。
揺れる視界。重い体。自分が床に座り込んでいて、背後の柔らかいものに寄りかかっているのが分かった。
「あ、明日馬をはなして……」
加世子の声が響く。
弱々しいその声がした方へ首を向けると、同じく床にへたり込んだ加世子がいた。
「加世子、」
「あ、お目覚めですか〜。おはようございます。よく眠れたようで何より」
耳元で鳴る知らない女の声に、俺は思わず大きく身をよじった。しかし後ろから首に手を回されていて思うように動くことが出来ない。
「離せ! 誰だ!!」
「暴れないで下さいよもう。こんなに可憐な女子に寄っかかってぐーぐー寝てたクセに。酷いですねぇあんまりですねえ」
シクシクと泣き真似を始めたその人物は、奇妙な出で立ちをしていた。
半分、人間。
脳裏にその四文字が浮かぶ。
腰の長さまであるゆるい三つ編みが揺れる、セーラー服を着た女子。
その身体の左半分は真っ黒だった。
顔、髪、身体、洋服全てが半分に分かたれ、絵の具でぐちゃぐちゃに塗りつぶされたようになっている。
信じられない光景に絶句していると、彼女は半分の顔に笑顔を浮かべて俺を捕まえたまま加世子に向き直った。
「ねぇ、鬼ごっこしよう。私とあなたたちと、未来ちゃんで」
口元だけを引き上げた歪な笑みで、彼女は未来の名を出した。
「未来もここにいるの!?」
「いるでしょう? ほらそこに」
加世子の悲痛な叫びに、半分の彼女はそっと指でどこかを示す。
俺はつられて周りを見渡し、この場所がどこかをようやく理解した。
校舎の中だ。
先程覗いた窓の内側。机や椅子が並ぶ教室の一角。
そして彼女が指し示した先には、気を失う前に外から見たままの真っ黒な人の影が、窓をしきりに引っ掻いていた。
ぺたっ……ぺたっ……
水分を含んだ肉がガラスを打つ音が響く。
待て。彼女は今なんと言った?
まさかアレが未来だとでも言うのか?
「ひっ――あ、アレは何なの? 未来は何処にいるの!?」
「だぁかぁらぁ。アレが未来ちゃんなの」
「一体何を言っている? どういうことなんだ!? アレは何で、お前は何なんだ。説明しろ!」
首に回されたままの腕を振り払い、加世子の元へと駆ける。震えたままの加世子が縋り付いてくる。その肩を抱き、半分の女を睨んだ。
つまらなそうに舌打ちをした女は、人の影に近づき謡うように話し始める。
「未来ちゃんはねぇ、負けちゃったんだ。昼の部の鬼ごっこに。お友達と一緒に参加してね。お友達だけ逃げちゃった。可哀想な未来ちゃんは鬼のまま。戻れなくなっちゃったの。未来ちゃんが戻るにはまた鬼ごっこをして、人間として勝たないとねぇ」
『鬼』と『人間』の鬼ごっこ。馴染みのあるごっこ遊びのはずが、何か別のもののように聞こえる。
「だから鬼ごっこしようよ。夜明けまでの、夜の部の鬼ごっこ。未来ちゃんを取り戻しに来たんでしょう? そのままじゃあここから出られないんだよ? 可哀想でしょう」
女の言う事が理解できない。理解したくなかった。
女は窓際の人影に手を伸ばし、そのブヨブヨと蠢く身体を優しく抱く。そしてそのまま俺たちの方を向いた。必然的に、人影もこちらを向く。
「あッ――」
「み、未来!! いやあああ!!」
それは未来の顔をしていた。
人の形をした真っ黒な影の中に、不気味に顔だけが浮き上がっている。
能面のように表情を失った未来の顔が、そこにあった。
「いやッ未来!! 未来なの!? 返事をしてッ」
加世子が涙を流して叫ぶが、未来は反応を示さずにずるりと窓際に戻るだけだった。
「未来ちゃんは今、鬼なので。あなたの声は聞こえていないの。ただ外に出たがることしかできないから」
ぺたっ……ぺたっ……
未来が窓を掻く。
女は愉快げに唇を歪ませる。
「未来ちゃんと鬼ごっこしましょうよ。帰るにはそれしかないんだから」
ぺたっ……ぺたっ……
「その鬼ごっこで、お前を鬼にして逃げれば三人でここから帰れるのか?」
「ええ、ええそうです! そうなんです! ただし逃げるには条件があるの。夜明けが来ると強制的にゲームセット。その時点で鬼の人は帰れません」
「何だって?」
呆然としている加世子を支えながら、俺は鬼ごっこの規則を聞き返す。
「時間制限がないとキリがないから。未来ちゃんはさっきの鬼ごっこで、鬼のまま時間がきちゃったんだ。誰も助けてくれないまま。可哀想でしょう? あなた達はそんなことしないよね? ちゃあんと、私を鬼にして逃げ切らないと。三人揃って帰れませんよ?」
ぺたっ……ぺたっ……
未来は哀しげに窓の外を見つめている。
この可笑しな遊びで、友達に見捨てられた未来。人間ではない何かになってしまった未来。
必ず取り戻さないといけない。
「ふざけんな! 未来を返せ! 鬼ごっこでも何でもやってやるわよッ!!」
「お、おい待て加世子」
「未来があんなにおかしくなっちゃったんだよ! 明日馬はそれでいいの!?」
目に光を宿した加世子が、強く言い放った。やけくそになっているようにも見える。
未来をあのままにしてはいけないことは分かっている。しかし外へ助けを呼びに言った方がいい。
その思考を読んだように、半分の口が開く。
「ああ、ここからは出られないから。出すわけがないじゃない」
口元だけ笑っていたその表情は、一瞬で冷たいものに変わる。
「では、二名様参加ということで。ルールは簡単。鬼に捕まったら鬼になる。場所はこの校舎のみ。鬼に捕まった人間はその場で鬼になりますが、代わりに鬼から戻った人間はこの校舎のどこかにリスポーンされます。戻った瞬間に狙われないようにねぇ」
彼女は事務的なルール説明を終えてまたすぐニヤニヤとした笑顔になる。
「ひとつ聞きたい事がある。この遊びは……お前に一体なんのメリットがある? なぜこんな事をするんだ」
「私は、勝つとすこぉし人間に戻れるんですよぉ。ふふふ。あと半分、ねぇ。ほら。多分あと一回勝ったら戻れちゃう。んんっあはっ」
身体を半分に分けるラインを指ですーっとなぞり、半分の彼女は恍惚の表情を浮かべた。
真っ黒に潰れたその半身は、未来の顔をした影に似ている。元々は同じモノだったのかもしれない。
「流れに大きな動きがあったら私がアナウンスしますねぇ。例えば、鬼が交代した時とか。楽しみだなあ」
「開始の合図は?」
「鬼の未来ちゃんはテンカウントでスタートしまーす! はいどうぞー!」
いーーち、
にーーい、
未来の顔が口だけ動かしてカウントを始める。
俺は加世子の手を引いて教室を飛び出した。
「未来、絶対助けるから……」
加世子の涙声が、真っ暗な廊下に落ちた。
どれくらい走っただろう。
途中で外につながる扉を開けようとしても無理だった。
俺は加世子の手を握って階段を駆け上る。加世子は汗と涙でぐちゃぐちゃになった顔をジャージの袖で覆いながらついてくる。
三人で逃げるには、あの女を鬼にしなければならない。果たして未来は彼女を捕まえられるのだろうか。
ブヨブヨとしたシルエットを思い出す。動きが鈍いように見えた。きっとアレは、早くは動けない。
ならば。俺たちがあの女を捕まえて、鬼の未来に差し出すしかない。
「加世子。あの半分女を見つけよう。二人であいつを捕まえて、未来の目の前に転がしてやるんだ」
「そうか……人数では私たちが有利だもんね。未来に捕まらないようにしながら、あいつを探そう!」
二人で左右を確認し、屈んで移動する。ふいに加世子が手をかけた視聴覚室のドアがカタンと鳴った。
「あ、教室のドアは開くみたい」
「よし、身を潜めながら移動するぞ」
加世子の手を握りしめたまま教室の物陰に潜み、しばらくして別の教室に移る。
窓の外から差す月の光だけを頼りに、ただ廊下を静かに進んだ。そうして半分女を探す内に、再び階段に辿り着く。
加世子が恥ずかしげに俺の肩をつついてきた。
「ね、ねえ。手、離して」
「え!? あ、ごめん」
手加減を忘れていたその手を慌てて離す。さぞ痛かっただろう、赤くなってしまっている。
「離しちゃっていいんですかぁ?」
ふいに加世子の後ろからねっとりとした声が響いた。
加世子が驚いて飛びのこうとする。しかしそれを抑えるように闇の中から半分女が現れ、加世子に抱きついた。
「やめて!」
「んん〜つれないの。未来ちゃんから逃げる仲間じゃない」
「あんたなんか仲間じゃない!」
加世子は彼女の腕から逃れようともがく。しかし俺は加世子の行動とは反対に、半分女を引っ掴んで無理やり引き寄せた。その衝撃で加世子も廊下に投げ出される。
「いたぁーい!!」
「大人しくしろ! お前を鬼にして、未来を人間に戻すんだ。加世子もこいつを抑えて!」
「わかった!」
しめた。これでこの女を捕まえたまま、未来に狙わせればいい。
俺が女の上半身を羽交い締めにし、加世子がバタつく足を抑え込もうとした時だった。
「そうはさせませんよぉ。えい!」
「アッ……!!」
半分女が加世子の体を思い切り蹴り上げた。ふらつき、宙に浮くその先は、闇へ続く階段。
加世子の体は階段を転がり落ちた。
「かっ加世子ーー!!」
「うう、」
下の階から聞こえるうめき声。意識はあるようだ。
しかし問題はそこではなかった。
ずるっ……ずるっ……
何かを引きずりながら移動する音が、階段の下から聞こえてくる。それは明らかに加世子が落下したすぐ近くにいた。
まさか、まさか!!
階段を駆け下る。加世子を引き上げなければ。加世子を、加世……
「かよこ」
月の光の下で、床に転がった加世子の身体に、ブヨブヨとした影が覆い被さるのが見えた。
つかまった。加世子がつかまってしまった。
受け入れ難い事実に呼吸が浅くなり、足が動かない。
影は加世子の身体に無理やり入り込んでいく。
加世子は押し潰されながらジタバタと抵抗をするが、それが無意味だと一目で分かる。
口から、目から、腹から。加世子は次第に輪郭を失い、ブヨブヨとした塊になった。
加世子は鬼になったのだ。そう頭で理解する前に、耳をつんざくようなノイズが辺りに響き渡った。
―――
ピンポンパンポーン!!
ここで鬼の交代をお知らせします。
鬼だった『小林未来』さんが人間としてリスポーン。
代わりに捕まった『小林加世子』さんが鬼になりました。繰り返します
―――
―――嘘だ。
*
未来、どこにいる!?
加世子の代わりに人間に戻った未来は、この校舎のどこかにリスポーンされたはずだ。
加世子を蹴飛ばした半分女はいつのまにか居なくなり、愉快げな声で校内放送を繰り返した。
今俺がやるべきことはまず未来を見つけること。
そしてまたあの半分女を捕まえて、加世子と交代させる。
夜明けまでに!
「未来、どこだ未来!」
未来の性格を考えると一か所に留まっているはずだ。考えなしで行動派な気がある加世子とは違い、未来は慎重派で考えすぎる性質だから。
「未来ッ返事をしてくれ!」
「あ、明日馬くん……?」
今にも消え入りそうな声が聞こえ、俺は勢いよくその方向に駆け寄る。
空き教室の隙間から、こちらを伺う小さな影があった。
「未来!」
「明日馬くん! 明日馬くん! うぅ、怖かったよ」
小さな身体にポニーテール。両手でぎゅうと、護身用のつもりなのか、金属バットを握りしめた未来がそこに居た。
泣きながら弱々しく縋り付いてくるその身体を思い切り抱きしめる。
「よかった……!」
「私、私ッごめんなさい」
「いいんだ、無事なら」
未来は前回の鬼ごっこのことを覚えておらず、気がついたら暗い校舎に立っていたのだと言う。
俺はその場で状況を説明し、未来の手を引いた。
「お姉ちゃんは私の代わりに鬼になったの? このまま夜明けが来たらお姉ちゃんだけここから帰れないの?」
「そうだ。だから俺たち二人で加世子を助けるんだ。まずはあの半分女を探す。分かるな?」
「ウン」
先程は半分女に先手を取られた。恐らく俺たちの場所に気づいて、鬼の未来を誘導して来たに違いない。
同じ手は食らわない。あの女に気づかれないようにしなければ。
「ねえ明日馬くんはお姉ちゃんのことが好き?」
互いの呼吸音しか聞こえなかった空間に、未来の声が響く。
「何言ってるんだこんな時に」
「答えて? 付き合いたいと思う?」
未来は俺の手を握り、至極真剣な表情で問うた。場違いなその問いに戸惑うが、未来は答えるまで足を進めないという態度だ。
加世子のことが好きかどうか。難しい問いだった。
俺は未来から目をそらし、逡巡する。
加世子はずっと側にいた幼馴染だ。
昔から負けん気が強くて。
女らしくないことを気にしているところが女らしくて。
放って置けなくて。
ショートヘアが似合うといったら恥ずかしそうに笑う。
恋愛対象かは別として、好きか嫌いかでと言えば答えは決まっている。
「……好きだとは思うけど。今はそんな事を」
言っている場合ではない。その言葉は続かなかった。
「そっか」
鈍い衝撃音とともに目が眩んだ。
突然側頭部に大きな打撃を受け、俺の身体は傾ぐ。
「ごめんね。明日馬くん。私、明日馬くんのことが好きなの。お姉ちゃんに絶対取られたくない」
気を失う前に見たのは、片手に金属バットを持った未来の哀しげな笑顔だった。
「夜明けが来るまで寝てて。大丈夫、ちゃんと三人で帰ろうね」
翌朝―――
俺たち三人は学校で倒れていたところを発見された。
俺だけ頭に怪我をしていて病院に担ぎ込まれたが、大きなたんこぶがひとつ出来ていただけだった。
三人で夜の学校で何をしていたのか。大人たちに散々叱られた。
俺は未来を探しに行ったという事以外覚えておらず、二人も俺と同じだと言った。
けれど俺は、三人揃って外に出られたという事に何故か安心感を覚えていた。
こうして俺たちは日常に戻る。
僅かな違和感だけを残して。
「明日馬、おはよう!」
未来と付き合い始めてから、朝も一緒に登校するようになった。始めは周りの目が気になったが、未来の嬉しそうな顔を見ると俺も自然と笑顔になれる。
「おはよう、加世子は起きてるのか?」
「起きてはいるんだけど……カヨちゃん! バス乗り遅れるよー」
加世子は最近寝坊が増えた。そんなに時間にルーズなタイプではなかったから、もしかしたら俺たちに遠慮して登校時間をずらしてくれているのかもしれない。
「ふあーい、私もすぐに行くから先行っててぇ」
加世子は寝ぼけ眼で家の窓から顔を出して言った。
加世子のトレードマークの三つ編みをひたすら編んでいる様子に、俺はふと違和感を覚える。
「加世子っていつから髪長いんだっけ?」
「何言ってるの? カヨちゃんはずっとロングの三つ編みじゃない」
「そうか……そうだっけ?」
未来は加世子に手を振る。加世子も笑顔で手を振り返して顔を引っ込めた。
「仲良いよなお前たちって」
「うん! だってカヨちゃんは私の恩人だもの。私が明日馬と付き合うのに邪魔なものを消してくれたんだよ。魔法みたいに!」
「邪魔なもの?」
「うん、目の上のたんこぶみたいな?」
未来は楽しげに笑う。その笑顔だけで俺は胸がいっぱいになるのだ。
「そうだ、最近学校で変な噂が流れてるの。夜の学校で、真っ黒な幽霊が窓からじーっと外を見ているんだって。涙を流しながらずっとずーっと。でね、おかしいのがその幽霊、『カヨコさん』って言うんだって。昨日カヨちゃんと笑っちゃった」
「なんだそりゃ。七不思議か?」
「分からないけど、もう絶対に夜の学校に行っちゃダメだよ。約束ね」
「分かったよ。お前もな、未来」
ーーーBAD END『裏切り』
明日馬
無個性くん。高1。容姿描写なし。
加世子
ちょっと頭が弱い子。中3。ショートヘア。
未来
したたかちゃん。中1。ポニーテール。
カヨコ
圧倒的勝者。??。三つ編み。
もしも需要があれば同じ設定で別ENDや別シリーズを書こうかな〜と思うので、読んでみたいという方がいらっしゃったら教えて下さい!