表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/20

9話 ボーリングと特殊効果!



「素蓋さん、今日はお店主催のボーリング大会ですよ!」


 ティフシーがボーリングの玉を投げるスイングをしながら、オレの部屋に入ってきた。


 ワンピースの裾がふわっと広がり、オレに微風が届く。


 こんな美少女が毎朝起こしに来てくれるなんて、今日も異世界は最高だぜ!


 オレは爽やかな気分でベッドから出た。


「ボーリングなら、今日はまったりできそうだね~。ちなみにその大会って、オレは手伝い?」


「素蓋さんはお店の代表として、参加ですよ! 優勝してくれれば、お店の宣伝になります! シュリカさんも『素蓋くんなら優勝するでしょ』って言ってましたよ!」


「期待値高いな!」


 まあ、オレの技術テクニックとこれほど相性のいいスポーツもないけどな!


 力は必要ないし、ずば抜けたコントロールがあれば、パーフェクトスコアで優勝できるだろう。


「素蓋さん、ボーリングはハードなスポーツなので、怪我しないように気をつけてくださいね!」


「ハードなスポーツ? ボーリングだよね?」


「はい、だってボーリングですよ? 無酸素運動ですからね」


「ああ、あれね、無酸素運動ね……」


 たぶんこれ、オレの知ってるボーリングじゃないな!


 こうして、嫌な予感がプンプン漂っているボーリング大会に参加することになった。



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ハッハッハーッ! ボーリング大会を始めるぞッ! みんな水着に着替えたかい?」


 なんで水着!?


 という疑問を抱いているのは、どうやらオレだけらしい。


「イェエエエエエイ! 準備万端さッ!」


「いつでもいけるわよ!」


「ハッハッハ! 今年は負けないぞっ!」


 海パンを履いたマッチョたちや、水着の美女たちが盛り上がっている。


 オレも一応着替えたけど、これでいいのか!?


「では、ペア分けをします。みなさん、くじを引いてください」


「イェエエエエエエエエエエエエエエエイ! ヒャッハァアアアアアアアアアアッッ!!! くじ引きだぜェエエエエエエエエッッッ!!!!」


 盛り上がるポイントそこ!?


 とりあえずくじを引いて、オレはルミラという美女とペアになった。


 神秘的なブルーの髪に、ブルーの瞳。神話に出てくる水属性のキャラクターみたいな、静けさと美しさがある。


 肌は青白くてひんやりしてそうだけど、『風呂上がりなのかな?』と思うほど潤っている。


 なんだこのひんやりプルプルボディは!?


「こんにちは。あなたが私のペアの素蓋くんね。よろしくね」


「よろしく、ルミラ! オレ実はボーリングってはじめてなんだけど、ルミラはけっこうやってるの?」


「私は毎週やってるわ。初めてなら、ルールを教えてあげるわ」


「サンキュー!」


 優しい美女がペアでよかったぜ!

 

「まず、このボーリングの玉はね、『フェプリオバーファ』というの。そして、プールが『アクアステージ4』。『アクアステージ4』の中には『ドレッドスティック』が十本あって、『ドレッドスティック』を『パルゼ』した本数が私たちの『サンセットスコア』になるわ」


「専門用語多いなっ!」


 指輪物語か!? 説明の半分くらいしか頭に入ってこなかったぞ!


「百歩譲ってプールがアクアステージなのはわかるけど、なんで4なんだ? 1~3はどこ?」


「アクアステージは第四世代なの。第一世代からそれほど性能は変わってないけど、カメラ写りだけは世代毎によくなってるわ」


「アイフォンかっ!」


 世代毎にネームチェンジしてるのか! わかりづらいな!


「まあ、簡単に説明すると、プールに潜って、ボーリングの玉を転がして、ピンを倒すスポーツよ。倒したピンの本数が得点になるわ」


「とてもわかりやすい説明だな」


 ようするに、水中でボーリングをするってことか。これならなんとかなりそうだ。


「ハッハッハ! では、制限時間は一時間! ピンを一番多く倒したペアが優勝さ! レディィイイイイイイイイ! スタァトオオオオオオオオッッッ!」


 マッチョの司会が叫んだ瞬間、みんな一斉にプールに飛び込んだ。


「素蓋くん、私が先に行くわ」


「おー! 任せたルミラ!」


 ルミラはボーリングの玉を持ったまま、プールに飛び込んだ。


 プールの底につくと、ボーリングの玉を投げる。


「おぉ~! けっこう楽しそうだな!」


 ルミラはピンを八本倒して浮上してきた。悪くないスタートだ。


「ぷはっ! はい、素蓋くんの番よ」


 プールから上がってきたルミラの谷間は、水を弾いてプルップルだった。


 毎回この奇跡の光景を上から見れるのか!


 いまこの瞬間、オレの一番好きなスポーツはボーリングになったぜッ!


「おっけー! 任せとけっ!」


 オレはボーリングの玉を持ったまま、プールに飛び込んだ。


 ボーリングの玉の重さで、あっという間にプールの底まで沈む。


 よし、あとは投げるだけだな!


 ……と思ったら、酸素ボンベをつけたマッチョが、ピンを直してる途中だった。


 手で直すのかよ!


 マッチョはオレと目が合うと、『ゴメンね!』みたいな感じでウインクしてくる。


 なんかユルい!


 マッチョがピンを直したあと、オレは技術テクニックをフル活用して玉を投げた。


 結果はピン一本残し。


 水の抵抗があるから、玉のスピードが出ないみたいだ。これは重い球の方が有利だな!


 オレが浮上すると、今度は入れ替わりでルミラがプールに飛び込む。


「ナイス、素蓋くん!」

 

「おーっ! まあね!」


 ルミラは今度は七本たおした。他のチームはストライクを出してるところもあるので、オレたちのペアはちょっと遅れ気味だ。


「素蓋くん、おねがい」


「おう! ちょっと本気出す!」


 オレはさっきより重い玉を持って、ルミラの胸の谷間を目に焼き付けたあと、プールに飛び込んだ。


 玉が重いので、さっきよりも早く沈む。


 プールの底に着くと、マッチョがすでにピンを直していて、『今度は早く直したぜ?』みたいなドヤ顔をしていた。


 どうでもいいけどグッジョブ!


 オレは今度はストライクを出して、浮上する。


「ルミラ、バトンタッチ!」


「すごいわ! 初めてでストライクなんてっ!」


 ルミラは興奮した様子でプールに飛び込んだ。





 そして、五十分後。


「こ、これは……しんどいな……」

 

 オレたちはめちゃくちゃ疲労していた。


 他のペアもすでに半分は体力が尽きて、プールサイドでダウンしている。


「ティフシーが言ってた理由はこれか……」


 潜水を繰り返すだけでもキツいのに、水の抵抗がある水中で、重いボーリングの玉を投げなきゃいけない。


 オレはずっとストライクを出し続けているが、体力的にはそろそろ限界だ!


「素蓋くん、すごいわ! 素蓋くんがこんなウォーターマッチョだなんて! 私達は二位だから、次に素蓋くんがストライクを出したら優勝ね!」


 ルミラの笑顔はかわいい。おまけにパーフェクトな曲線美。この美女を目に焼き付ければ、最後の一滴まで元気を絞り出せる!


「じゃあ、ラスト行ってくるよ」


「うん! 待ってるわ」


 オレは陸から『ラストマッスルー!』『素蓋くん、セクシーよ!』などと歓声を受けながら、プールに飛び込んだ。


 残り時間は二十秒くらい。これで勝負がきまる。


 オレはプールの底について、最後の一投を振りかぶった。


 しかし。

 

「……っ!」 


 隣のレーンで投げようとしていたマッチョの頭上に、ボーリングの玉が見えた。


 上にいる誰かがうっかり落としたな!


 マッチョは気づかず、投球のフォームに入っている。


 玉はマッチョのすぐ頭上だ。


 助けたいが、オレがここから泳いでいっても間に合わない。


 クッ……仕方ないな……。


 オレは再び玉を振りかぶった。


 技術テクニックをフル活用して、その玉を隣のレーンに投げる。


 ゴガッッ!


 マッチョの頭上にある玉にヒットして、二つの玉はプールの底に落ちた。


 よし! なんとか成功したな!


 そして、ゲーム終了のブザーが鳴った。



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ウワァァアアアアアアアアアアアアッッ!」


 オレがプールから上がると、拍手と大歓声が巻き起こった。


 プールの壁で音が反射して、耳が痛くなるほどの音量だ。


「なんというスポーツマッチョシップだァアアアアア! 彼はなんと、自分のペアの優勝を捨てて、隣のレーンのハドソンを助けたぞォオオオオオオオオッ!」


「信じられないビューティフルマッスルだわっ! 感動して涙が出そう!」


「限界まで疲労しているというのに、隣のレーンの危険に気づくなんてッ! なんというマッチョなハート! そして視野の広さだ! 彼は目の筋肉もトレーニングしてるに違いないッッッ!」


「水中で落下してきた玉に当てるなんて、ミラクルマッスルだわ! 心も体も素敵! 一度でいいから彼のマッスルに抱かれたいわ!」


「彼はたしか、シュリカさんの店で働いているボーイだぞ! さすがシュリカさん、ワンダフルなマッチョを見つけたな! 彼ほどのマッチョは、世界中探しても見つからないぞ!」

 

 オレは最後の一球をムダにして二位になってしまったが、プールサイドからはオレへの賞賛の声が飛び交っていた。悪くない気分だ。


「ルミラ、最後の一球は盛大なガターになっちゃったぜ! ゴメンなっ!」


 冗談めかして言うと、ルミラはクスッと笑った。


「かっこよかったわ! ナイスマッスル!」


 ルミラはオレに飛びついてきた。


 ぷるぷるに潤った肌がオレの全身に触れる。


 水分たっぷりのおっぱいは、ぴったりとくっついて離れない。


 ひんやりした柔らかい感触に、全身の筋肉が癒やされていく。


 うおぉおおおおおおおおおおおおっ! なんだこのみずみずしいボディは!


 プールサイドはさらに盛り上がり、黄色い歓声や、祝福するような口笛が飛び交う。


「ハッハッハ! では、いまから表彰式をするぞっ! 一位から三位までのペアは表彰台に集まってくれっ!」


 司会のマッチョの言葉で、ルミラがオレから体を離した。少し赤くなった顔でオレを見上げる。


「呼ばれちゃったわ。行きましょう。私たちは二位ね」


「いや、ちょっといまは……」


「何してるの? 表彰台に呼ばれてるわ」


 ぷるぷるボディのルミラに抱きつかれたあと、すぐ動ける男はいない。


 ルミラの癒やしハグには、追加の特殊効果があるのだ!


「おぉーっとッ! マイボールをプールの中に忘れてきたぜッ!」


 オレは逃げるように、プールに飛び込んだ。


 そして、水中で三分間たっぷりクールダウンした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ