13話 図書館とトレーニング
「素蓋さん! 図書館に行きませんか?」
朝、ティフシーがオレの部屋にきた。
久しぶりに清楚な水色のワンピース姿だ。
カバンを肩にかけていて、紐の食い込みでおっぱいが浮き出ている。
ナチュラルにやってるところがエロいぜ!
「ティフシー、図書館って珍しいね。本読むんだ?」
ティフシーがインドアなことをするのは珍しい。この世界に図書館があること自体、はじめて知った。
「はい、読みますよ! 今日は学校の宿題が終わってないので、調べものしようと思ってるんです」
「へぇ、それならオレも行ってみようかな?」
オレはこう見えて、けっこう読書好きだ。
メジャーなラノベのレーベルの代表作はもちろん読んでるし、ネット小説などもたまに読んでる。
エロと俺TUEEEとコメディをミックスした異世界モノとか、頭を空っぽにして読めるのだ。きっとあの作者の頭も風船みたいに軽いんだろう。
「ふふっ。じゃあ一緒に行きましょう!」
「おう!」
こうして、オレはティフシーと一緒に図書館に行くことになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ヘイッ! ウェルカムッ! アームストロングライブラリーへようこそ! なにかお探しですかい?」
入り口を抜けると、いきなりマッチョな図書館員が出迎えてきた。
あまり図書館では見かけないタイプだな。
「オレは特に捜し物はないけど、ティフシーはなにか調べるんだっけ?」
「はい、私はトレーニングの本を探してるんです。学校の宿題で、感想文を書かなきゃいけないので」
「物語以外で感想文って珍しいね」
「そんなことないですよ? 本でトレーニングして、その感想を書く宿題はよく出ますよ」
「へぇ、夏休みみたいな宿題だね」
トレーニングという言葉がひっかかったけど、宿題は思ったよりはまともみたいだ。
本を読んで感想文を書くなんて、ティフシーがこれまでしてきた行為の中で一番文化系っぽい。
今日はティフシーの意外な一面が見れるかも知れないぜ!
「トレーニングの本ですかい? それならこっちの『分厚い本』のコーナーさっ!」
「分類ざっくりしてるな!」
ジャンルじゃなくて厚みで分類してるのか。探しにくいだろう!
「ハッハッハ! 細かく分けたって迷子になるだけさ! さぁ、こっちへカモーンッ!」
「遊園地のガイドみたいなテンションだな」
ここでは、『図書館では静かに』というルールは特にないみたいだ。
エントランスを抜けて、螺旋階段を上がると、巨大な本棚がズラっと並んでいた。
かなり迫力のある図書館だ。
おまけに、館内にいる人達は元気に談笑していて、コミケかと思うほど騒がしい。
これ、本当に図書館だよな?
「あっ! ありました! この辺りの本がよさそうです!」
ティフシーがさっそく本棚に駆け寄っていった。
持ってきたのは、百科事典を三冊繋げたような、分厚い本だ。おまけに、表紙は雑誌のようなB4サイズ。
かなり難しそうだ。中学生でもこんな本で調べ物するのか!
「ありがとうございました! おかげさまで見つかりました!」
「ハッハッハ! 他に用があればいつでも声をかけてくれ! 特に、届かない本があれば、いつでも足台を担いでいくぞ!」
「ありがとうございます!」
足台は転がしていけばいいのでは? というツッコミはさておき。オレとティフシーはマッチョな図書館員とわかれて、席を探した。
しかし、どこにもイスやテーブルがない。
「ティフシー、席ってどこにあるか知ってる?」
「はい、あそこですよ?」
ティフシーはすぐ真横のトレーニング器具が置いてある場所を指した。
さっきから『なぜ図書館の中にスポーツジムが?』と思ってたけど、図書館の一部だったのかコレ!
「その前に、素蓋さんの読む本探しましょうよ!」
「そ、そうだな。じゃあラノベとかがいいな~」
「ラノベってなんですか?」
「魔法とかモンスターとか、ファンタジー世界みたいなやつだよ」
「なるほど、こういうのですね!」
ティフシーは本棚にぱぱっと駆け寄ると、一冊の本を持ってきた。
『三日間でゴブリンのような筋肉がつく! 魔法のモンスタートレーニング! ~The Fantasy of Massol~』
「サブタイトルそれっぽいけど!」
よくあったなこんなの! 一瞬表紙にダマされそうになったけど、ただの筋トレの本だろこれ!
「そうじゃなくて、もっとこう、夢と希望に満ちあふれた本だよ。ワクワクするようなやつ」
「なるほど! こういうのですね!」
ティフシーが本棚からパッと手に取ったのは、こんな本だった。
「夢の中で楽々トレーニング! ~エルフと冒険していたら、僕の筋肉がとんでもない太さになってた件~」
「サブタイトルはそれっぽいけど!」
これも筋トレの本だし、しかもこの内容はぜったいウソだろ! 地球の英語ペラペラの本と、楽に痩せるダイエット本よりうさんくさいぞ!
「うん。やっぱり、オレの本はいいや。あとで探すよ。とりあえずティフシーが宿題できるように、落ち着けるところにいこう」
「ありがとうございます! じゃあ、お言葉に甘えて!」
オレとティフシーはスポーツジムのようなスペースに行った。
トレーニングマシーンが何台も並んでいて、みんな軽めのトレーニングをしながら本を読んでいる。
「なるほど、そうきたか」
読書しながらトレーニングをするというのは、この世界の住人にしてはいい発想だ。地球にもこんな図書館があったら人気になるかもしれない。
「素蓋さんも座りましょうよ! この器具は、普段鍛えられない内ももの筋肉を鍛えられるので、オススメですよ!」
ティフシーはトレーニング器具に座って、ひざの間にバーを挟んだ。
「いや、オレは別に筋トレは」
と言いかけた瞬間。
オレの目に素晴らしい光景が飛び込んできた。
ティフシーが足を開くと、ワンピースの裾がめくれ上がり、パンツが見えそうになる。
さらに、腕を前に出して本を読んでいるので、足の動きと連動して二の腕が揺れて、おっぱいもプルッと震える。
ティフシーは顔を赤くして、吐息混じりの声を漏らす。
「フゥッ……んっ……ふぅ……ふぅ……んハァッ……フゥッ……」
クッ……表情と吐息が!
この光景をずっと正面から眺めてるのはヤバい気がするぞ!
「ティフシー、やっぱりオレはもう一回本探してくるよ」
「あ、はいっ。じゃあ私はここで待ってますね! 素蓋さんも読みたい本見つかったら、一緒にトレーニングしましょう!」
「うん、できるだけ楽なやつね~」
と、オレが本のコーナーに行こうとしたとき。
「ハッハッハーッ! 通りますよお客さんッ!」
マッチョな店員が足台を担ぎながら全力疾走していた。
最初にオレたちを案内していたマッチョだ。
「大丈夫か? あんな重い物持って走って、もし転んだら……」
と、オレが呟いた瞬間。
「アッッッッ!!!!」
マッチョな店員は床に放置されていたダンベルにつまづき、盛大に転んだ。
「えっ」
「キャーッッ!」
マッチョの持っていた足台が宙を舞い、ティフシーの頭上に降ってきた。
まずい!
オレはとっさに反応したが、体の向きが悪く、足台をはじき飛ばすほどの力は出せない。
「ちょっと借りる」
「えっ」
ガンッッッッッッッッッッッ!!!
オレはティフシーの読んでいた分厚い本を左手で掴み、それを盾にして足台を防いだ。
ちょっとファンタジー世界でバリア張ったみたいな感じだったぜ! 成功してよかった!
「なッッッッ!」
足台と本が床に落ちると、読書していた人たちが小さな悲鳴をあげた。
あ、さすがに本を盾にするのはマズかったか? これはひょっとしたら怒られ…………。
「ワーオッッッッッッ! エクセレントッッッッッ! 彼はとっさに少女を守ったぞッ! アンビリーバボーなマッスルだーッッッッッ!!!」
一人のマッチョが絶叫し、館内から拍手が巻き起こった。次々と称賛の声が上がる。
「後ろ向きであの鉄の台をはじき飛ばすなんて! すばらしい上腕三頭筋だわっ!」
「彼はさっき、『三日間でゴブリンのような筋肉がつく! 魔法のモンスタートレーニング! ~The Fantasy of Massol~』を立ち読みしていた少年じゃないか!? まさか、ボクが三分で根を上げた、あの地獄のようなモンスタートレーニングを実践したのかッ!?」
「最高にセクシーなマッスルだわ! 彼の腕を栞にして、私の胸に挟んでおきたいわ!」
ツッコミどころ満載な気もするが、とりあえず館内の人たちはオレに好意的みたいだ。
結果オーライだぜ! 地獄のモンスタートレーニングなんてやってないけどな!
「ティフシー、怪我はない?」
「はいっ! 素蓋さん、ありがとうございますっ! さすがですっ! 本当に、かっこよすぎますーっ!」
ティフシーは安心と喜びが混じったような笑顔をオレに向けた。
「無事でよかった。あ、そういえばさっきの本。盾に使ったから、穴空いてるかもしれないけど」
と、オレが床に落ちていた本を拾おうとしたとき。
「いえ、ありがとうございま」
ほぼ同時にティフシーが立ち上がった。
そして、オレの視界はティフシーのワンピースに包まれた。
薄いヒラヒラとした布から、水色の光が零れる。
目の前には、きめ細かなティフシーの白い太もも。
さらに、視界の上の方には可愛らしい白い布がチラっと見える。
さらに、洗剤の匂いとティフシーの石けんの匂いがオレを包み込む。水色の異世界に飛びこんだような気分だ。
あぁ、天国ってきっとこんな感じなんだろうな。
オレは全身が癒やされたような気分で、ティフシーのワンピースを頭から下ろした。
立ち上がると、ティフシーが顔を真っ赤にしてオレを見上げた。
「あ、あの、素蓋さん」
ティフシーは胸の前で手をグーにした。
「わ、私、いまトレーニングしたあとだったんですっ! 普段だったら、汗の匂いなんてしないですからねっ!」
「え、気にするところそこ!?」
このあと、オレはティフシーと館内を回ってラノベっぽい本を見つけたが、『汗と友情の物語! 手に汗握る超絶展開!』と書いてあったので、この日は仕方なくスルーした。




