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私と晴と今

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はっ、として目が覚めた。眠ってしまっていたようだ。ベッドをみると彼はいなかった。

風呂場の方から水の音がかすかに聞こえるからシャワーを浴びているんだろう。

動けるようになったようで良かった。あのようすだと今日も学校にちゃんと行くらしい。

正確な体温はわからないが相当な熱を出していただろうにやはり優等生は違う。と、感心しながら時計を見るとまだ彼が出ていくまで時間があった。


彼がまだ濡れている髪にタオルをのせて、簡単に制服を着た状態で出てきた。

顔色も随分よくなっている。これなら大丈夫だろう。


だが、どこか彼の様子がおかしい。自分の家なのにキョロキョロしていてどこか落ち着きがない。いつもの彼は高校生にしては落ち着いていて学校ではどうなのか知らないが私の知る限りは正しく優等生、という感じだ。いったいどうしたのか。


なにかを言おうとしたのか口を開けかけ、しかしやめて口を閉じる。これまでの彼は独り言すら言わなかったはずだ。何を言おうとしたのだろうか?

不思議に思って彼をじっと眺めているとなにか意を決したのか真剣な顔つきになった。なんだなんだ。


「いる…よね?」


ぎくっとした。

昨日のあのときだろう。しっかり覚えているのか。ヤバイ。

というか、よね?とか聞かれても私返事できないし。今目の前だから物も動かせないし、なにもできない。

しかし彼は返事を待っているのか、はたまた私を感知しようとしているのか神経を尖らせて真剣な面持ちでその場に仁王立ちしている。


うーん…どうしよう……目の前で動かせるかわかんないけど、もし動かせたとして追求されるのも面倒くさいなぁ。でも私がなにかしないと彼も動き出しそうにないし…


そこで、とりあえず私はまだ完全に風邪が治ってないだろうと踏んで風邪薬を用意することにした。幸いテーブルと風邪薬のある場所は彼の死角になっている。


ハイハイイケメンさんちょいと失礼しますよ~っと。

彼の脇を通って風邪薬をとる。

本来は棚にはいっているが、昨日の状態で出しっぱなしだから引き出しを開けずに済む。

彼はまだ気づいていない。いまだに真剣に虚空を見つめている。


面倒くさいから水はいれなくて良いか。コップと風邪薬だけでいいよね。

彼にわかるように少し音をたててテーブルにコップと風邪薬を置いた。


今度は彼がびくっとして勢いよくこちらを見た。置かれたコップと風邪薬をみて僅かに目を見開いた。でもその表情に恐怖は見えなかった。怖がってはいないみたいだ。よかった。


「やっぱりいるのか…」


信じられないけど認めたようだ。なんだかびびらせてしまって申し訳ない。生前はしがないただの女子大生だったのだが。


「…昨日も風邪薬出してくれたよね。」


やっぱ覚えてたかぁ。


「昨日も今日も…ありがとう」


私の置いた風邪薬を手にとって彼は私の見たことのない少しはにかんだ甘い笑顔を見せてくれた。


イケメンだなぁ…見えない相手にお礼いっちゃうし。なんかもうその笑顔もすごい眩しいよ。お姉さんイチコロだよ。やっぱイケメンは正義だなぁ。


「良い幽霊さんなんだね」


良いイケメンさんだね。

幽霊に話しかけてくれるなんて本当に純粋な子だよ。今時珍しい。でもイケメンくん心なしかほっぺが赤いぞ、まだ熱引いてないんじゃないの?でもまぁ元気そうだし…にこにこしてるし。


「君なら歓迎するよ。あのっ、これからもよろしくね」


良い笑顔だな、私なんかがこんな間近でみても良いものなのかね。これからってことは一先ずは追い出す気は無さそうだな。歓迎すると言ってくれたし私のことも受け入れてくれたんだろう、イケメンは心も広い。先にここ住んでたのは私だけどな。


このイケメンくんとならお姉さまのときみたいに仲良くやっていけるかもしれない。世話は焼ける気がしないけど、でもお手伝い程度なら私にだってできるはずだ。腐ってもまだ年上なのだ。そう相手は高校生。


ん?高校生…今日は平日……


そこまで考えて私はバッと時計を見た


じ、時間おしてるぞイケメン!!!


いつまでにやにやしてるんだ、いったいどうしたんだこいつは。とにかく学校にいかせないと!


と、私はばたばたと(故意的に足音を出そうとしない限り足音はでないのだけれど)慌てて何故か夢見心地らしいイケメンを現実に呼び戻すため、ドンッ!と大きな音をたてて玄関に彼のバッグを置いた。

彼を気づかせるのに成功したらしく彼も珍しくあわあわしだした。ちょっとかわいい。素早くコップに水を入れて風邪薬を飲む。バッグを持って慌ただしく学校へ向かった。


と、思ったらドアを開けてイケメンが戻ってきた。忘れ物だろうか、バッグの他に特別なものは用意されてなかったはず…と考えていると、イケメンは部屋にはあがらないままいつもより大きな声で「いってきます!」と言って出て行った。


それだけかよ!と思いつつも、今までにない嬉しそうな顔を見てしまったから、私も行ってらっしゃいと思うほかなかった。


まぁ、多分間に合うだろう。


私は彼のソファに腰かけた。朝から少し疲れてしまった。彼が帰ってくるまで休憩だ。ふぅ。

ばれちゃったけどなんとかなりそうだ。また、あの不思議で楽しい日々を送れるのだと思うと嬉しい。まさか今度は私が幽霊だとは思いもしなかったが。

ばれないようにこっそり過ごすのも苦ではなかったが、やっぱり認識してもらってここにいても良い、と言ってもらえると気が楽だ。彼が帰ってきたらどこまでなら怖がられないのか確かめなきゃ。


今日から楽しくなるな。



そういえばあいつ、髪の毛濡れたまんま出てったな。

まぁいっか。


こうして彼公認の、幽霊の私と彼との奇妙な共同生活が始まった。



その日から彼は私によく話しかけるようになったし、笑顔が増えたような気がする。私も彼に対して何かすることが多くなったし、なにより毎日が楽しくなった。

彼は相変わらず誰も家には連れてこなかったけれど、彼と私の家は少なくとも私には居心地のいいところになっていった。彼もそう感じているだろうと、思っていたのに。





________



なぜ、私は彼の初めての客人に手首を握られ不敵な笑みを浮かべられているのか……ッ!?



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