プロローグ
前作をご存知の方が見てくださるかわかりませんが、少し手直しして再投稿しています。
がちゃがちゃと玄関のほうからした音に、うとうとと気持ちよく手放しかけていた意識を取り戻した。
彼が帰ってきたんだろう。
いつものように部屋の彼の定位置に彼お気に入りのクッションを置こうと動き出したところで、微かに聞こえる彼と彼以外の声に気づいて動かしかけたクッションを元の位置へあわてて戻した。
危ない危ない。彼はどうやら友達を連れてきたようだ。
まぁ彼も高校生だし友達くらい家に連れてくるよね。
私が何か物を動かさない限り、彼にも彼の友達にも見つかることはないだろうが何となく部屋の端へいって大人しくしておくことにした。
するとすぐに彼は友達をつれて部屋へと入ってきた。
彼のつれてきた友達をみて私は類は友を呼ぶのだな…と一人感想を抱いた。
彼は端的に述べるとイケメンである。地毛らしい髪は日本人にしては少し明るめな茶色で、癖っ毛でところどころはねているが毛が細くふわふわしている。
肌はニキビひとつなくつるつるとしていて、目はアーモンド型でキレイな二重。口はいつも緩くカーブを描いていてにこにことしている。まるで優しい王子さまのような人なのだ。
それに対し彼の友達は、キレイな癖のない黒髪に一重のきりっとした涼しげな目元をしている。
一見冷たそうではあるが、薄い上唇が若干あひる口のようになっていて甘さも感じさせる。
彼とは違う系統のイケメンだ。
どうせ今日は特に動けないだろうし、相手にばれないことを良いことにイケメン観察に勤しもう。うへへ。
などと、私は呑気にそう思っていた。
「ただいまーってあれ、やっぱ智弥連れてきたのばれたのかな。」
「なんだ」
「いや、いつもは俺の定位置にこのお気に入りクッション置いて待っててくれるんだよ」
黒髪のイケメンは智弥くんね、と名前を覚えているとなんだか身に覚えのある話が聞こえた。ちょっとまて、それ私の話じゃないか?
私が友達に怪しまれないようになにもしなかったというのに、こいつ自分から私の話をしだすなんて頭がおかしいのだろうか。
というよりも、私の話をすることで彼が友達に頭がおかしいと思われてしまうに違いない。
現に智弥くんは彼に返事をしていない。
「彼女結構気を使ってくれてるんだよねぇ」
やかましい。なにをへらっと笑顔で私の話をしているんだ。
智弥くんが黙りこくってドン引きしているではないか。やめてくれ。天然なイケメンも好きだけど、空気が読めなさすぎるイケメンは良くないと思う。お願いだからもう私の話をしないでくれ。
と、見えないとわかりつつもなんとか彼に伝わるように私は立ち上がって二人の目の前でおろおろとしてしまった。
その時目の前の智弥くんと目があったような気がした。
二人に、私は見えていないはずなのに。
気のせいだと思ったけれど、智弥くんはじっとおろおろしている私の目を見据えていた。
なんで?おかしい、おかしい。
見えているわけないのに。
幽霊の私なんて。
「……晴」
「ん?どうした?さっそく?」
「ん。ここにいる」
?!
いま、智弥くんは確かに私の目を見ながらここにいる、と言った。私を指差す。彼には見えている?幽霊の私の姿が?
「えっうそ本当に?!」
ばっと勢いよく彼、晴くんも私のほうを見た。が、彼には私が見えていないからか、私と目が合わない。
「ここにいる。なんだかすごくおろおろしてるぞ。多分俺が見えることに驚いてるっぽい。」
智弥くん大正解だよ。私いますごくビックリしてるよ。
というか、ありえないでしょう。
私は思わず数歩後退りしてしまった。情けない。
私幽霊だよ?本来私が人間をびびらせる側のはずなのに…
「驚きすぎて後退りしてるぞ」
「えーっなにそれ、彼女かわいいー!幽霊なのに後退りしちゃってんのー?!」
びびる幽霊と冷静にそれを実況する智弥くんに、それに対して異常なまでに反応する彼。
なんだこれ。
「あーもう智弥!頼む!いますぐやってくれない?」
頼む?なにをする気だろうか、話の流れからして大方私になにかをするんだろうが……
「本当に良いのか?前にも説明したが、その後のことを考えて言ってるんだろうな?」
まてまてなにをする気なんだ君達。もしかして祓う…とか?
幽霊に対してすることって言ったらそれぐらいしかないよね?
いやいやいや私なんにも悪いことしてないよ!良い幽霊だよ!ただのんびりしてただけじゃない!
うらめしやーなんてことしてないじゃない!なんだかんだ幽霊って楽しいんだよ、もうちょいエンジョイさせてくれ!
と私が見えている智弥くんに必死に身ぶり手振りをして見せた。
そこの彼に聞いてみて、私悪いことしてないよねって!別にお祓いとかいいよねって!
その間も彼は「とーもーやー!はやく!はやく!」と智弥くんを急かしている。
貴様、良い同居人だと思っていたのに……!
命乞い(もう死んでるけど)をする私と、急かす晴くんに挟まれた智弥くんは喉でくくっと笑ってから、
「わかった。じゃあはじめるぞ。」
そう言って私の手首を掴んだ。