9話 草の香り
防衛の準備を始めよう、と意気込んだ俺が目にしたのは、身を縮めながら狭い通路を通るゴーレムだった。
あ、悪い悪い。
俺は通路をゴーレム用の広さに拡張する。
「入り口を広くすると敵を防ぎ難いぞ。」
スケサンが苦言を呈する。
「仕方ないだろ。ゴーレムを増やすのも戦力の強化さ。」
俺はぼやきながら、入り口から祭壇の間までの通路に大部屋を2つ造る。
これは防衛用の、いわば曲輪だ。ここに戦力を待機させて迎え撃つ。
そういえば、通路に大部屋を2つも造るスペースは無かったはずだが何故か造れた。ダンジョンが全体的にズレたのだろうか?実に不思議だ。
「うむ。充分だ。1つ目の部屋、2つ目の部屋ともに入り口は狭くしてあるな……よしよし。」
スケサンが構造をチェックする。部屋の入り口を狭くするのは大軍の運用を邪魔するのが目的だ。
敵の数を局地的に減らし、こちらは局地的な多数で勝つ。戦いは数だよ兄貴。
いざとなれば大量のスケルトンで部屋を満たしても良い。…まあ、余程の緊急事態でもなければやらないけどな。
そして洞穴の外にも少しだけダンジョンを拡張した。
これは索敵のためだ。
洞穴から外なんてアリかよ……と驚いたが、スケサン曰く「森や沼のダンジョンもある」らしい。
物知りな骨だ。
………………
さて、次は戦力の強化だ。
モンスターの種類を増やすのはマリーの意見も欲しいので、今回はある意味でお馴染みのスケルトンだけにする。
スケサンみたいなのが増えるのか……少し複雑な気分になりながらスケルトン上位種のスケルトン・ソルジャー(DP1000)を生み出す。
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種族 : スケルトン・ソルジャー
ランク : 3
弱点 : [火属性] [聖属性]
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そこには武装したスケルトンが立っていた。
スケサンに似ているな……って当たり前か。
装備も良く似ている。
ショートソード
木の盾
革の鎧
革の兜
「これがスケルトン・ソルジャーか。
はじめまして。よろしくな。」
声をかけるとスケルトン・ソルジャーはカクンと頷いた。
「主よ、スケルトンは自我の弱いモンスターだ。会話はできぬ。」
「自我が弱いって……よく言うよ。スケサンは会話してるじゃないか。」
「我が主よ、私はハイスケルトンだ。似て異なる存在だ。」
そんなものか、と相槌を打ちながら、ふと気になってスケルトン(DP300)を出した。
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種族 : スケルトン
ランク2
弱点 : [火属性] [聖属性]
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スケルトン(300)
ショートソード(200)
木の盾(100)
革の鎧(300)
革の兜(100)
合計でDP1000だ。
……これは偶然か?
「スケサン、スケルトンとスケルトン・ソルジャーの違いは武装だけか?」
「その通りだ、主よ。」
うーん、なんか詐欺っぽくね?と考えていると、スケサンがこちらの考えを読んだように続ける。
「主よ、考えて欲しい。裸の男が暴れるのと、武装した男が暴れるのはどちらが危険かね?」
「それは武装した方だ。比べる迄もない。」
「そうだ。スケルトンとスケルトン・ソルジャーのランクの違いはそれだ。武装も重要な戦力の内だからな。」
……なるほど、わかりやすい。
裸の男なら町の腕自慢でも取り押さえれるが、武装した男なら正規兵じゃないと危ないってことか。
ちらりとスケサンのステータスを確認したら、ハイスケルトンのままだった。
ハイスケルトン・ソルジャーじゃないのか? 基準がよくわからん。
「スケサン、悪いが剣と盾と鎧…あとは兜もだな。コイツに譲ってやってくれないか?
スケサンには新しいのを出そう。」
「うむ、承知した。」
スケサンの装備を身につけたスケルトンのステータスを確認すると、ちゃんとスケルトン・ソルジャーになっていた。なるほどね。
ついでにもう一人スケルトン・ソルジャーを生み出して合計3人になった。
「よし、こいつらはスケサンに任した。スケサンの指示に従うように。」
スケルトン・ソルジャー達はカクンと頷いた。
よし、次はスケサンの装備だ。指揮官に相応しい装備を調えよう。
スケサンの意見も聞きながら装備を出していく。
ロングソード(DP700)
ホーバーク(DP800)
ラウンドシールド(DP400)
スパンゲンヘルム(DP400)
合計DP2300なり。
革の手袋とブーツは据え置きだ。
ちなみにスケサンの新装備を解説すると
ロングソードは刃渡り90センチくらいの両刃の直剣だ。柄も入れたら1メートルくらいだろうか。
ホーバークは西洋風の鎖帷子だ。腕は長めの半袖くらいまで、下半身はスリットがあり膝くらいまでカバーしている。腰のベルトで固定するらしい。
ラウンドシールドは50センチくらいの丸い盾だ。木製だが、要所や縁が鉄で補強されている。
スパンゲンヘルムは水滴型というか砲弾型というか、つまんだ形に登頂部が尖った鉄兜だ。正面は鼻ガードもついている。
「凄いな。かなりの迫力だ。」
装備を調えたスケサンは威圧感がある。
鉄の塊みたいだ。
「そうだな。重装備は敵の士気を挫く意味もある。
まあ、ゴブリンにどれだけ効果があるかはよくわからんが。」
スケサンはロングソードを抜いて数回素振りをする。
「そういえば、スケサンってショートソード使わずじまいだったな。」
「言われてみれば確かに。不満かね?」
「いや、剣は抜かない方が良いに決まってるさ。」
「なるほど。至言だな。」
スケサンはこのままスケルトン・ソルジャー達を訓練をすることにしたらしい。
モンスターも稽古をすればスキルが身に付くこともあるそうだ。
つまりモンスターは使い捨てではなく、大事にして経験を積ませたら強くなるということだろう。
そういえば、前の職場の社長は「人を育てるのが利益に繋がる」と口癖の様に言っていたな。今になって理解できた気がする。
…………
こうしていても仕方ない。
ストーンゴーレム用の石でも拾いに行くか。
………………
洞穴の外に出た。
季節は春から夏に移ろうとしている。草の香りが清々しい。
俺は周りをぐるりと見渡した。
洞穴があるのは崖の壁面だ。
大昔に山崩れでもあったのか、小山が半分に崩れたような地形をしている。
崖の高さは10メートル程か。上の様子はよくわからないが、木が生い茂っているのが見てとれる。
崖を見上げながら、祭壇の間の上にも部屋を造ることが出来るかもしれないな……と思い付いた。DPに余裕が出来たら試してみよう。
そして、ふと気がついた。
……そういえば、昨日も外に出た筈なのに何も見えていなかったな……やはり初めての戦闘で気が動転していたのだろう。自分の小心さに苦笑が漏れる。
まあいいさ。荒事はスケルトン隊に任せよう。
…………
石を拾い集めていると日が高くなっていた。
新しいねこ車には石が満載されている。
居住スペースでは具合の良くなったジョシュアが「スケサンと遊びたい」とマリーを困らせている。
うん、ダンジョン内を知覚できる俺の前ではプライバシーは皆無だな。覗いてるわけじゃないぞ、知覚してしまうんだ……。
……おっと、お客さんか。
木の影でこそこそしているゴブリンの群れを察知する。
いくら上手く隠れても俺には知覚できるんだよ。
俺は適当な大きさの石を選び投げつける。
超人の腕力で投げた石は唸りを上げながら見当違いの方向へ飛んで行き、べきべきと森の枝を数本へし折った。
……逃げていくゴブリン達。どうやら様子を見ていただけのようだ。
洞穴の外まで拡張した成果が早くも出た。
この精度で索敵できるのは素晴らしい武器となる。
戦力の補強は順調だ。
だが残りのDPは15082。
無駄遣いをしたつもりは無いが、余裕はない。
気を引き締めねば。
※ゴブリンは野蛮ですが知性が無いわけではありません。
相手を観察し、襲撃の機会を狙っています。




