6話 超人誕生
畑仕事をするモンスターが欲しい。
マリー、作業用のモンスターを増やしたいんだが、飯を食わないやつで何かオススメを知らないか?
俺はマリーに尋ねた。
「そうですね……土木作業ならゴーレムでしょうか。彼等は疲れ知らずで忠実です。ご飯も食べません。
ただし細かい命令や精密な作業には向きませんね。」
ふむ、ゴーレムか。
俺はゴーレムを検索する。
クレイゴーレムがDP500でランク2。
ストーンゴーレムはDP2000でランク3。
アイアンゴーレムがDP6000でランク4か。
他にもミスリルゴーレムやらオリハルコンゴーレムなんかもいたが、作業用ロボットに貴金属を使う趣味は無い。百式とかワケわからん。
とりあえずクレイゴーレムかな……と考えてると
「マスター、ゴーレムをお考えなら、ゴーレムメーカーというものがあります。」
と、マリーが教えてくれた。
ゴーレムメーカーね……これか。
ゴーレムメーカーDP30000
ふむ、なかなか高額だな。
「ゴーレムメーカーはゴーレムの素材、例えばクレイゴーレムなら土ですね。
素材をゴーレムの量だけ入れると自動でゴーレムを作ってくれる魔道具です。」
ほう、自働か。凄いな。
クレイゴーレムなら60体で元が取れる計算だな。
よし、決めた。
俺は地下2階にゴーレムメーカーを設置。
同時に地下2階と祭壇の間を階段で繋げた。
あとは土だ。
スケサン、スケサンや。
ジョシュアと遊んでいたスケサンを呼ぶ。
「お呼びかな?」
うむ。クレイゴーレム作るから土を取ってきてくれ。
俺はシャベル(DP50)とねこ車(DP50)をスケサンに渡す。
ついでにジョシュアにもスコップ(DP10)を用意した。
「……承知した。」
スケサンは少し不満気(に見える)な様子でねこ車を押しながらジョシュアと二人仲良く外に行く。
「あの、私は……」
マリーが遠慮がちに声をかけてきた。
ああ、マリーには相談したいことがあったんだ。
俺は実体が無いからジョシュアと話せないだろ?
少し不便だから、どうにか出来ないかなと思ってな。
何かいい手段は無いだろうか?
「そうですね……新しく依代を作られてはどうでしょうか?」
依代?
「はい。今のダンジョンコア、マスターの本体はこちらです。」
マリーは祭壇の間に落ちてる石をよいしょと持ち上げた。
川原にでも落ちてそうな20センチほどの楕円形の石だ。
これが俺か。うーん、なんだかなあ。
「新しい依代をDPを消費して生み出し、コアを移すことができます。
人間などにすれば話すこともできるでしょう。」
成る程、ナイスアイデアだ。
よし、さっそく……依代、依代と意識すると、元の姿の俺がイメージされた。
「依代やゴーレムはある程度デザインが可能ですよ。」
マリーが親切に教えてくれる。
デザインか。それはいい。
俺は元の姿から少し手を入れることにした。
ふむ、39歳……折角だから10歳減らそう……よし。
身長168センチ……10センチ、いや15センチ高く……ふふ、憧れの高身長だ。
ビール腹も引っ込めて……折角だから筋肉モリモリにすっか。シックスパックだぜ!
顔も……ワイルドな雰囲気で……
ついでに股間のシンボルも2割増しで……
……できた! ……って、誰だこいつは!?
完成したのは高身長で、逞しい肉体美のワイルドな美丈夫。無精髭がセクシーだ。しかも巨根。
……うん。これだ。確か俺はこんな感じだった。
自分に言い聞かせ、依代を決定。
「DPを多目に設定すると依代の強さが上がります。ダンジョンコアが破壊されると休眠状態になってしまうので、多目に設定することをオススメします。」
……よし、スケサンがDP10300(スケルトン300+ネームド10000)だったな。
俺は20000にするか……依代にDP20000を注ぎ込む。
………………
気がつくと俺は祭壇の間に立っていた。
「人間の体か……懐かしい。」
……声が出た!?
当たり前のことではあるが、自分の声に少し驚く。
自分に四肢があるのが堪らなく嬉しい。
何度か手を閉じたり開いたりして感触を確認する。
「あの、マスター。」
マリーが恥ずかしそうに話しかけてきた。
「なんだい?マリー。」
ふふ、この肉体美に惚れたか? 可愛いやつめ。
「あの、服をですね……マスター。」
……全裸でした。
そしてモジモジとするマリーを見て……何故かそそり勃ってしまった。
あれ? 20代の肉体って、こんなに敏感だったかな……?
「あ、あの……ひょっとしたらお手伝いした方が、その」
マリーが隆々と勃つ俺自身をチラ見しながらとんでもないことを言い出す。
「い、いや、問題ない。服を出すよ。
ついでにマリーたちの着替えも用意しよう。」
適当なデザインの布の服(DP100)を3セット出す。服はズボン込みなのがうれしい。
ちなみに俺とジョシュアはシンプルなデザインの半袖シャツと長ズボン。
マリーはディアンドルっぽいデザインの服にした。
あとは俺用に革のブーツ(DP100)を用意する。
いそいそと着替えるとスケサンがねこ車を押しながら入ってきた。
ジョシュアがこちらを見てキョトンとしている。
マリーが慌ててジョシュアに俺を紹介する。
「ジョシュア、こちらの方がマスターです。ご挨拶なさい」
「はい。マスター……? こんにちわ。」
おずおずと挨拶をする様子が可愛らしくて俺の口元は緩んでしまう。
やはり子供は可愛い。
「ああ、こんにちは。俺のことは江藤と呼んでくれ。」
「エトー、さま?」
「ああ、そうだよ。
スケサンと一緒に土を運んでくれたのか。ありがとう。」
えへへ、と笑うジョシュアの隣で控えるマリーに「いい子だな」と伝えるとマリーは嬉しそうにはにかんだ。
「改めて俺の名前は江藤登だ。
マリーも江藤と呼んで欲しい。マスターだと飲み屋の大将みたいでな。」
「は、はい。服もありがとうございます。その、エトー様。」
会話の合間を見てスケサンがスッと近づいてきた。心なしかニヤニヤしてる気がする。骨だけど。
「ほう、主は貴族であったか。寡聞にしてノヴォル家とは聞いたことが無いが、主の風体から察するに遠国であろうか。」
「いや、俺は庶民だよ。
あと、江藤が姓で名前が登だ。」
「ふむ、この国では名前が先にくる。ノヴォル・エトーと名乗られるが良かろう。
あと、この国では姓は貴族にしかない。その手の誤解は付きまとうぞ、エトー卿。」
「そうか。ありがとうスケサン。あと卿はやめてくれ。貴族じゃないから。」
「承知した。主よ、新しいステータスを確認したまえ。」
スケサンに促されステータスを確認する。
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名前 : ノボル・エトー
状態 : ダンジョンコア
種族 : 超人
ランク : 6
スキル :[不老] [体術1]
DP60590
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なんか凄いの来た。人を超えていたらしい。そう言えば子供の頃は正義超人になりたかったな……夢が叶った。
スケサンもキンコツ男みたいだし、屁の突っ張りはいらんですよ。
ランクは6か。スケサンより強いのか。
不老って何だ? ダンジョンコアだからか。不死では無いらしい。
体術1は多分学生時代に柔道やってたからだな。
「ランク6だ。」
「むう、まあ良い。ランク差が1つくらいならスキルなどで逆転は可能だ。
ランクの違いが戦力の決定的な差ではないことを知っておくと良い。」
……こいつ、本当に負けず嫌いだな。そのセリフ、どこの赤色の彗星だよ。
…………
まあ、何だかんだで体ができた。
俺もゴーレムの土集めするか。
と、思ったらジョシュアの可愛らしいお腹の音が聞こえた。
先ず昼食の準備をしよう。
お付き合いいただきありがとうございます。
すでに最後まで書いてますので、ちょいちょい更新していきたいと思います。