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22話 サージェント

 スケサンと防衛室へ向かう。


「いいのかね?」


 スケサンが答えづらいことをズバリと聞いてくる。


「ああ、マリーたちは人間だ。いつまでもモンスターと暮らしていてはいけない。」


 それを聞くとスケサンが愉快そうにクククッと喉を鳴らした。

 さすがにムッときた。


「何がおかしい?」

「いや、すまない。私は新しい剣と魔石のことを言ったのだが……クックックッ」


 どうやら恥ずかしい勘違いをしたらしい。

 いや、まじで恥ずかしいなこれ。

 「ぼくの頭はマリーちゃんでいっぱいです」って暴露ばくろしたようなもんだ。


「……笑うなよ。いや、笑ってくれ。そっちの方がまだマシだ……」

「うむうむ。いや結構、結構。カッハッハ」



…………



 そんなこんなで防衛室へ着いた。


「スケサン、損害は?」

「うむ、戦死はスケルトン隊が4、食人くんが4、ストーンゴーレムが1、クレイゴーレムが19だ。」


 結構やられたな。

 特にスケルトン隊とクレイゴーレムの被害が目立つ。


「負傷はスケルトン隊が3、食人くんが4、ストーンゴーレムが2、クレイゴーレムが9だ。」


 ゴーレムは、ほぼ全滅に近いな……


「スケサン、すまなかった。チーフの騙し討ちに気づかなかったのもそうだが、被害が増えたのは俺の指揮の不味まずさが原因だ。」


 俺は戦死者に……すでに死体はダンジョンに吸収されているが、防衛室へ手を合わせた。


「いや、一概には言えぬ。

我が主が迅速にチーフを討ち取ったお陰で、敵が退いたとも言えるからな。

……それに責任ならば、指揮をとれなかった私にもある。」


 ……モンスターとは言え、俺の未熟で仲間が死ぬのはこたえる。

 スケサンの言葉で少し救われた気分になった。


「すまんな。」

「いや、最良とは言えんが大勝利さ。」


 ……確かに結果だけを見れば今のDPは37564だ。キングとチーフを討ち取ったのは大きい。

 勝利を喜ばなくては、戦死者もむくわれないだろう。


「スケサン、スケルトン隊の最古参の3人は無事か?」

「うむ、負傷もおらんぞ。」


 俺は古参の3人に魔石[極小]を1つずつ用意し、眼窩がんかめていく。

 賢くなーれ、賢くなーれ。


 今後は森の探索だ。

 欲を言えば留守番や偵察が出来るようになってほしい。

 よし、ステータスを確認しよう。



■■■■

種族 : スケルトン・サージェント

ランク : 4


スキル : [剣術1] [盾術1]

弱点 : [火属性] [聖属性]

■■■■


 ちなみにスキルは個体によって若干バラつきがある。


 ……サージェント、よく知らんが軍曹だっけ?


「スケサン、サージェントになった。」

「サージェント…聞いたことが無いな。新種かね?」

「いや、名付けてはいない。珍しいのか?」


 ……どうやら珍しい種族らしいな。俺の検索にもいない。何かルールでもあるのだろうか?


「よし、武装を新しくしよう。」


 俺はスケサンと相談してサージェントの装備を生み出していく。

 ロングソードDP700

 ラウンドシールドDP400

 硬革こうかくの鎧DP400

 ケトルハットDP300

 合計1800×3で5400

 魔石の分を足すと合計で11400だ。


 硬革こうかくの鎧は、オイルやワックスで煮込んで固く加工した革の鎧だ。指先で叩くとコツコツと鳴る。

 ケトルハットは麦わら帽子みたいな形の鉄兜だ。陣笠に似ている。


「3人のサージェントは隊の古参として、スケサンを助けてくれ。」

「ハイ」

「ワカリマシタ」

「承知シマシタ」


 おおっ喋った!

 賢くした効果か?

 バラバラの返事から察するに個性もあるらしいな。

 これは予想以上だ。


「スケサン、喋ったぞ?」

「これは……驚いたな。」


 ……その後はスケサンと2人でサージェントの性能試験(?)に励んだ。

 会話は片言で自主的に発言するわけでもないが、明らかに意思を感じる。

 慣れてきたらスケルトン隊の分隊を任すことがあるかもしれないな。


 俺はソルジャーを7人(手袋、ブーツつき)増員した。

 大判振舞いだが、こんな時でもないと思いきってDPを使えないからな。


 ……スケルトン隊も頼もしい戦力になった。

 食人くんやゴーレムは小回りが効かない。スケルトン隊が探索でも活躍してくれることを期待しよう。



…………



地下からマリーとボルトの会話が聞こえる。


「ボルト、エトー様と何かあったの?」

「いえ、その……少し」


 ボルトが口ごもる。普段の快活な彼女がこんな態度は珍しい。


「……少し、怖くて。」

「エトー様が? どうして?」


 ボルトは自分に向けられたエトーの視線を思い出す。

 体がブルッと震えた。


「先程の戦いの後……その……」

「そうね。少し、怖かったかも。」


 何が少しだ、とボルトは思う。

 あれは絶対に殺す気だった。殺されるところだった。


「少し、ですか?」

「ふふ、内緒よ。あんなにもお優しいエトー様を怖がるなんて。」


 人間はコボルトよりも危険に鈍感だ。それがこの違いなのかとボルトは思う。


「エトー様は戦いで勇ましく、目下の者に慈悲深く、女性に慎みのある騎士の中の騎士のようなお方よ……。」


 どこかうっとりとした顔でマリーが答える。

 ああ、これは惚気のろけだ。バカバカしい。恋の病で目がふさがってるのだ。

ボルトは自分の恐怖が酷く滑稽こっけいなものに感じてきた。


「先程の笛も素敵だったわ。ジョシュアにもエトー様は……」


 マリーの惚気話は果てしもなく続く。マリーの恋患いは深刻で、付ける薬はもはや無さそうだ。

 はあ、とボルトは溜め息をついた。

 確かに、普段のエトーは穏やかで、優しい人柄だ。


 ……捕食者の体と人の心。

 願わくば人の心が勝って欲しい。

 今の幸せな暮らしが続きますように…ボルトは強く願った。


「そんなにお好きなら……」

「そんなのっ、はしたないわ……」



…………



 ……あの、聞こえてますよ。


 あいつら……何て会話をしてるんだ。

 聞かされる身にもなってくれ。まあ、俺が勝手に知覚してるだけではあるが。


 俺の口から「ふーっ」と大きな溜め息がでた。


 地下ではキャピキャピとした会話が続く。

 まあ、二人とも若い女の子だからな。恋愛話なんて大好物だろう。


 ……マリーはボルトと話すようになって明るくなった。

 これだけでもボルトには感謝したい気持ちでいっぱいだ。


 畑の収穫が順調なら、コボルトの仲間を増やしてやろう。


 ……魔石はやらんけどな。






※マリーのファインプレーでボルトが元通りになりました。


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