13話 守る決意
その後、4日が過ぎた。
ゴブリンの襲撃は無い。
その間にも戦力の増加に努め、現在の戦力は以下のようになった。
スケサン
スケルトン・ソルジャー×3
食人くん×4
ストーンゴーレム×2
クレイゴーレム×8
多脚クレイゴーレム×3
以上だ。
最もクレイゴーレムと多脚ゴーレムは作業用だ。
ゴーレムメーカーも効率良く回転する様になり、今では1日に3~4体のゴーレムを生産している。
他にも色々試してみたが上手くいかなかったのは畑だ。
ダンジョンの床が土なので適当に耕せば良いと考えていたが、ダンジョンの壁や床は自動的に修復してしまうらしい。
そうなると、外から土を運び入れるか、土をDPで生み出すかとなるのだが、今はゴーレムを増産中なので保留にしている。
DPも無駄にはできないしな。
ちなみに今のDPは2888。日常の細々したものやゴーレムにシャベルを与えたりで、なんだかんだで出費はある。はっきり言ってピンチだ。
平和なのは嬉しいが、DPのためにゴブリンに来てほしいような……複雑な気分だ。小市民の俺は貯金が無いと不安になるタイプなのだ。
「食人くんも増えたな。」
「ああ、でもDPの関係で今はここまでかな。」
俺は皆と防衛室1に配置した食人くんたちの様子を確認していた。
食人くんは部屋の隅に生み出したプール(湧き水で作った)に浸かっている。照明石も多目に配置しているので光合成しているのだろう。
「こうして見ると、可愛らしいですね。」
マリーが不思議なことを言う。どこからどう見ても不気味じゃねえか。
……そう言えば、会社の若い女性社員も事務用品とか食い物を見てカワイイカワイイ言ってたな……。
考えてみたら、マリーってあの女性社員たちより若いんだよな。なのに子持ちで、こんな洞穴に住んでて……なんか泣けてきた……苦労かけてすまん。
「……? なんでエトーさまないてるの? いたいの?」
「色々あるのだろう。そっとしてやると良い。」
ジョシュアとスケサンが会話してる。
ううっ、ジョシュアも同年代の友達とか作りたいだろうに……遊び相手が骨とか……。
はあ、歳をとると涙もろくなっていかんな。
マリーとジョシュアは何とか人の社会に戻してあげたい。
そう、マリーとジョシュアは人間なんだ。
………………
侵入者の気配を察知した。
ゴブリンだ。多いな。
「スケサン、ゴブリンだ。数を確認する。」
……多いな。見たこと無いやつもいる。あれが指揮官か?
俺は動物の骨をかぶり、生皮を体に巻き付けたゴブリンのステータスを確認する。
■■■■
種族 : ゴブリン・シャーマン
ランク : 4
スキル : [魔法2]
■■■■
……ランク4、強敵だ。しかも魔法か。
他はゴブリンとホブゴブリンが多数、まだ増えるな。
「スケサン、ゴブリン・シャーマンがいる。それとゴブリン、ホブゴブリンだ。数はまだ増えている。」
「むう、シャーマンか……不味いな。奴等は魔法を使う。炎の魔法を使われたら少々分が悪い。」
……なるほど、スケルトンの弱点は火と聖だったな。聖は良くわからんが、火の魔法ってのはイメージしやすい。
敵の数が分かった。
ゴブリン・シャーマンが2匹、ホブゴブリンが17匹、ゴブリンがなんと107匹だ。総勢126匹。
シャーマンが何やら指示を出して隊列らしきものを整えている。
「スケサン、シャーマンが2、ホブゴブリンが17、ゴブリンが107。合計126だ。
シャーマンは先頭と最後尾に1匹ずつ、前にホブゴブリン、後ろにゴブリンの隊列で来るようだ。
今は陣形を整えている。」
「むう……」と数秒間の沈黙の後、スケサンが作戦を説明した。
「まずは1つ目の部屋にゴーレムを配置しよう。食人くんとは反対側だ。
そしてゴーレムと食人くんに敵が気を取られている隙に、我らが2つ目の部屋から打って出て横腹を突く。」
……馬鹿な。包囲作戦は数が多い側の作戦だ。
戦力を分散させたら個別にやられるだけだ。
そのくらいは俺でも分かる。
「……無理だ。包囲作戦は数が多い時の作戦だろう?」
「そうだ。だが個の力はこちらの方が上。食人くんならばゴブリン10匹以上の戦力だ。
そして我が主だ。この中で最も足の速い主が敵中を駆け抜け、シャーマンを倒せば勝ちだ。
シャーマンさえいなければゴブリンが100匹いようが関係ない。我らが暴れまわれば先ずは負けまい。」
……俺指名かよ。
スケサンでいいじゃねえか。敵陣に突っ込めとかどんな罰ゲームだ……くそっ、俺がやるしかねえのか?
ゴーレムは? スケルトン隊は? 食人くんは? ……そこまで考えて無理だと理解する。
スケサンが火の魔法でやられたら終わりだ。
他のヤツではシャーマンまで切り込めない。
俺しかできない作戦だ。
ゴブリンの群れに突っ込む……と想像したらブルッと体が震えた。
「無理かね?」
「いや……やるしかない。俺には他の作戦が思いつかない。」
……反対なら誰でもできる。
しかし、代案が無いのに言い争っても意味がない。時間の無駄だ。
「そうだ。やるしかない。
やらねばマリーも死ぬ。ジョシュアも死ぬ。」
マリーが死ぬ……死なせない。
そう思い定めると震える体が治まった。
「ゴーレムはどうなる?」
「全滅だろうな。」
スケサンがさらりと言う。
「不満かね?」
「いや、その犠牲は無駄にはしない。」
そう告げるとスケサンはニヤリと笑った。
「手袋を出して着けるといい。乱戦になるぞ。」
「わかった。」
早速、革の手袋をつける。
そしてストーンゴーレム2体とクレイゴーレム7体を防衛室1に配置した。
クレイゴーレム1体と多脚ゴーレムは祭壇の間の手前に配置する。最後の守りだ。
ゴーレムの配置が終わると同時に敵が動く。
……来るなら来い、マリーとジョシュアは俺が守る。
…………
ゴブリン・シャーマンに率いられた群は、今までとは違い、索敵をするかのように歩きながら侵入してきた。
そして防衛室1に差し掛かると食人くんとゴーレムを発見したようだ。
「ギャワーッ」
シャーマンがゴーレムを指差しながら何やら指示をする。
どうやら食人くんをマン・イーティング・プラントと思い込み後回しにしたようだ。これは嬉しい誤算だ。
「「ガグアアァァ!!」」
「「ギギャアアァ!!」」
ゴブリンたちは獣のような雄叫びを上げながらゴーレムに迫る。
シャーマンがバスケットボールくらいの火の玉を飛ばし、クレイゴーレムが炎に包まれる。
……あれが魔法か。
ゴブリンたちがゴーレムに群がる様子は、まるでサッカーボールに群がる小学生みたいだ……場違いなことを考えると俺の口からクスリと笑いが洩れた。
「どうした?」
「いや、これから始まるパーティを思うと楽しみでな。」
スケサン相手に軽口を言う。
自分でも虚勢だとは思う。でも何かしないと心が折れそうなんだ。
スケサンは驚いた様子で「なんと豪気な」と呟いた。
「「グギギャア!」」
ゴブリンの悲鳴が聞こえた。
食人くん達がゴブリンに迫る。
ゴブリンの群はマン・イーティング・プラントが動いたことで混乱しているようだ。
……今だ!
「行くぞっ!」
俺は後方のゴブリン・シャーマンに狙いを定めて飛び出した。
※参考までに。
ゴブリン
ランク2
DPは300。
頭に2本5センチほどの角がある。身長は140~150センチ程度。
撃破すると約DP150。
ホブゴブリン
ランク3
DPは1000。
武器を使う大柄のゴブリン。
撃破すると約DP500。
ゴブリン・シャーマン
ランク4
DPは5000
シャーマンとしての社会的な役割があるわけでは無く、魔法を使うことから命名された。
撃破すると約DP2500。
撃破した敵のDPは、個体の強さで多少前後します。




