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11話 虎徹

 侵入者だ。かなりの数を確認した。


 すぐに外で作業するゴーレム達を撤退させ、スケサンに侵入者の存在を告げる。


「スケサン、多いぞ。あと何かデカイのが何匹か混じっている。」


 デカブツは通常のゴブリンより大柄で160センチ前後、そして動物の骨や棒切れを持っている。どうやら道具を使う知能があるらしい。

 ステータスを確認する。



■■■■

種族 : ホブゴブリン

ランク : 3

■■■■



 ホブゴブリンか、ホブが何かは分からんがゴブリンの上位種だろう。


 数も打ち止めのようだな。

 ホブゴブリンが7

 ゴブリンが26

 合計33匹だ。


「スケサン、ホブゴブリン7、ゴブリン26、まだ増えるかも知れないが、とりあえず33匹。隊列はメチャメチャだ。」

「ホブゴブリンか、大したことは無い。

私が通路を塞ごう。主とソルジャーたちは打ち漏らしを頼む。」


 「了解だ」と伝えると、スケルトン隊もカクッと頷いた。


 ゴーレム達が無事に撤退してきた。彼らも隊列に加わってもらう。


 にわかにガタガタッと体が震えた。


「主よ、武者震いか。頼もしいな。」

「武者震い? これが武者震いか……。」


 俺は自分への景気づけにカットラスを抜き放ち、かの名台詞を呟いた。


「ふふ、今宵の虎徹は血に飢えておる……」


 ……近藤勇の真似だ。

 実は好きなんだよ新撰組。


 するとカットラスはボワンと光り、何やら様子がおかしい。

 あれ? これって……?

 慌ててステータスを見る。



■■■■

名前 : コテツ

種族 : 魔剣

ランク : 5


スキル : [切断3] [耐久2]

■■■■



 モ、モンスターみたいになってる(普通、物はステータス見れません)。

 恐る恐るDPを確認したら残りDP4582だった。


 や、やってしまった……。

 これで次、うっかり名前をつけたら俺は休眠してしまう。


 愕然とする俺にスケサンが語りかける。


「ほう、魔剣か。かなりの力を感じるな。

並の剣では主の膂力には耐えられぬ。良い判断だ。」


 意外と高評価みたいだ。セーフ、なのか?


 ゴブリンどもの気配が近づいてきた。

 スケサンは入り口に陣取りソルジャーに指示を出す。


「来るぞ! ソルジャーは横に列を作れ! 3人懸かりで戦うのだ!」


 スケサンが腰を落とし半身になる、そして盾を突き出すように構えて剣を抜いた。

 その構えはピタリと決まりいわおのような迫力がある。


「「ブガアアアァ!!」」

「「ガルオォォォ!!」」


 ゴブリンの群は獣の様な雄叫びを上げスケサンに迫る。


 スケサンは骨で殴りつけてきたホブゴブリンを盾でいなし、剣で胸を突く。

 そして崩れ落ちるホブゴブリンを盾で後方に吹き飛ばし、後続のゴブリンの足を止める。

 右から迫るゴブリンはスケサンに足を突かれ、もんどり打って倒れながら通路を塞ぐ。

 左のホブゴブリンはスケサンに盾の縁で顔面を殴り付けられ悲鳴を上げた。


 スケサンは30匹以上のゴブリンに対して一人で圧倒していた。

 派手さは無いが、シンプルで力強い戦いだ。


「2匹行ったぞ。」


 スケサンの脇を抜けたホブゴブリンとゴブリンに対し、スケルトン・ソルジャーが3人で囲む。

 激しく争っているようだが、よそ見をする暇は無い。


「1匹行ったぞ。」


 スケサンの脇を抜けたゴブリンがこちらに向かってくる。

 ……大丈夫だ。落ち着け、ゴブリンの相手は初めてじゃない。


 奇声を上げながら飛び掛かってくるゴブリンを躱し、コテツを振るう。

 縦にゴブリンの鎖骨辺りを襲った刃は殆ど手応えもなく腰の辺りまで切り裂いた。


「スゲエ切れ味だ……」


 暫くコテツの刀身に見入ってしまったが、闘争の音で我に返る。


 スケサンがまたゴブリンを倒した。


「ギャギャッ! ギャッ!」


 これが引き金になったのか、後方のホブゴブリンが何やら指示を飛ばし、ゴブリンたちが退き始める。


「追撃だ! 追首おいくびを稼げ!!」


 スケサンが指示を飛ばす。


 俺は「オオッ」と応えて逃げるゴブリンを追った。

 逃げる敵を殺すのは容易い。

 ゴブリンどもの背中を切り付けながら走る。

 2匹、3匹、4匹

 ゴブリンを追う時、俺は堪らなく


『楽しかった』



…………



「そこまで! 深追いは無用だ!」


 スケサンの声で我に帰る。

 ゴブリンたちは範囲外まで逃げ去ったようだ。


「勝ったのか?」

「ひとまずはな。」

「まだ来るのか?」

「恐らくはな。これは大物見おおものみだろう。」


 大物見? とスケサンに訪ねると、戦闘をしかけて相手の出方や戦力を偵察することらしい。


「厄介だぞ。敵の大将はゴブリンらしからぬ賢しさだ。」


 スケサンの言葉を聞き、俺は戦慄した。

 33匹を捨て駒にするほどの相手だ。ブルッと体が震えた。




………………




 防衛戦の後、被害や戦果を確認する。

 ホブゴブリンを4匹、ゴブリンを10匹。

 合計でDP3552だ。


 被害は負傷がスケルトン・ソルジャー2人。手首を砕かれたのと、足の甲を砕かれたのが1人づつだ。

 やはり手袋とブーツは必要だ。

 俺は人数分の革の手袋とブーツを出してスケルトン・ソルジャーに配る。


 ちなみにダンジョンモンスターは、死なない限りはダンジョンで休息すれば自然治癒するらしい。

 しかし、完全に殺されたらさすがに回復はしない。


「ホブゴブリンが3匹、ゴブリンが3匹だ。」


 スケサンは何を言ってるんだ? ……と暫く考え、ピンと来た。


「俺はゴブリンが5匹だ。負けたよ。」


 スケサンがニヤリと笑う。



 本当に負けず嫌いだな。






※コテツの性能ですが

コテツDP10500

日本刀の大業物おおわざものDP7200

お察しください。


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