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エピローグという指揮棒
6年前、僕がまだ9歳の頃の出来事。
突然僕の両親は離婚しその後自分は施設に預けられることになった。
幼いころの自分はわけもわからず「夕方に迎えに来るから」その言葉を残し知らない男と門の外へと歩いて行った。
母の甘夏のような甘い声をを信じて施設で待つことになった。
何日経っても母が戻ってくることはなかった。
落ち行く木の葉を映ろな目で眺めていた時に耳にしたあの歌。
僕は気づくと施設の階段を駆け上っていた。
そして向かった先にまるで空間を浄化するような歌声を持つ少女、僕は圧巻された。
「君の名前は?」
彼女の歌が止まり、口を開く。
「彩夏だよ。あなたは?」
「僕は…海璃だ」
それが彼女との出会いと別れであり歌の始まり――