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第一楽章1番

 歩く度にカツンという無機質な音が響く。

「うーん。本当になんにも無いなぁ…。」

 呟きながら一人の少女が歩いていた。歳は十五、六というところだろう。明るい橙色の髪を一房ほど編み込み、後頭部で一つにまとめ、金色の瞳を世話しなくうろうろさせている少女は、その姿に似つかわしくない穂先の大きな長槍を背負って歩いていた。服装は軽鎧を身につけ、青緑色のタータンが使用されている衣装を纏っている。

 彼女が歩いているのはダンジョンの一つ、『蒼の迷宮』に分類される名もない場所である。『蒼の迷宮』はダンジョンの中でも、『旧時代』の名残を強く残した物だ。今の技術では再現不能な材質で壁や床が出来ており、建物全体が淡く光っている。その光の色が蒼かったために、ダンジョンにその名が付けられていた。

「怪物も出ないなんて、本当に『ハズレ』だったのかな…。」

 彼女はそう呟いた。

 ダンジョンの中には、素材になる物が全く存在しない『ハズレ』と呼ばれる物が存在する。『ハズレ』には素材がない、つまり需要がなく、かといって、普通の人間が簡単に近づくことができるところにも存在していなかった。つまり、本当に無意味な場所であった。

「いいえ、まだ諦めるのは早いわ、リィン・カルベル。自分の勘を信じるのよ。調査部隊が見つけて無い物があるかも知れないじゃない。私をただの小娘と言った愚か者をギャフンと言わせるためにもここで退くわけにはいけない…!?」

 独り言と言うよりむしろ自分に言い聞かせているようであった彼女ーリィンは、うっかり足を滑らせ、近くの壁に激突…するはずだった。

「えっ、ちょっ、キャア!」

 ところが壁がグルリと回転し、壁の裏側…隠し部屋に見事に入って行った。…少々情けない格好で。


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