幸せ
それから、バンの父親はライに家庭教師をつけました。ライは、家庭教師の先生に学校の基本的なことを教えてもらいながら働きました。ライの父親も、バンの父親によって病院に入院できることが決まりました。これで、ライもライの母親も安心して仕事することができます。
そして、半年が過ぎ――――。
バンは次の学年に上がりました。そして嬉しいことに、ライも同じ学年に入ることになりました。入学テストにトップの成績で入ったライは、特例としてバンと同じ最高学年に転入することになったのです。
「ライ!すげえな。やったじゃん」
「バンが教えておいてくれたおかげだよ。先生も、驚いてた。字も読めるんだねって」
この地域では、貧困層の家庭の子が字を読めないのは当たり前のことでした。そのため、高い給料がもらえる職業に就けず、負の連鎖が止まらないのです。
その点、ライはとても幸福な子どもでした。父親の理解もあり、偶然とはいえ裕福な家の子どもと友達になり、さらには学費の援助までしてもらえるのですから。
ライの入学が決まった日。ライは、家族みんなでバンの家に招待されました。もちろん、退院したライの父親も一緒です。
「ライ君、入学おめでとう!そして、ようこそ我が家へ。これから君は、将来バンの右腕となるよう一生懸命勉強してもらうよ。頑張りなさい。
お父さん、お母さん。大事なお子さんを預けてくださり、ありがとうございます。彼をきっと立派な青年に育ててみせます」
「本日は、ありがとうございました。バンと同様厳しく躾けたいと思いますが、我が子と思い優しくもしていきたいと思っています。お父さん、お母さん、どうぞ安心してください」
バンの両親が簡単に挨拶をすると、ライの両親も涙ぐみながら「ありがとうございます」とお礼を言いました。その光景を見てライは、両親とあまり会えなくなるのを少し寂しく思いました。
しかし皆で乾杯をし、皆で談笑しているのを見ると、これからも家族ぐるみで交流ができるかもしれないと、ライは励まされる思いがしました。バンもまた、両親と離れて自分の家にやって来るライを気遣ってあげようと、思いを新たにしていました。
そしてライは、新たな生活をスタートさせました。
バンと二人で学校へ行き、帰ったら学校の課題をしたり遊んだりしました。たまに、両親の顔を見に実家に帰ることもありますが、そのときは家の手伝いをして帰ります。ライの実家の暮らしは相変わらずよくありませんが、ライが帰るとみんな精一杯のもてなしをしてくれます。最近では、下の兄弟たちも家の手伝いをするようになったと、母親が嬉しそうに報告してくれました。
「バン、僕すごく幸せだよ」
「なんだよ急に」
卒業式の日。ライは帰り道、バンに言いました。
「だって、君と一緒に勉強していたときも幸せだと思ってたんだ。なのに、学校に通わせてもらって、うちのお父さんの面倒まで見てもらった。しかも、これから君と一緒に仕事をするための勉強ができる。こんなに幸せなことはないよ」
「俺だってそうだよ。俺は、父さんの跡なんか継ぎたくなかったんだ。でも、ライに勉強教えるようになって、勉強が面白くなってさ。ライと一緒に仕事できるなら継いでもいいって思ったんだ。お前、面白いしさ」
バンは前を向きながら、そう答えました。そして照れたように笑うと、こう付け加えました。
「でも、これから大変だぞ。なんせ俺の父親や弁護士から直接勉強を教わるんだからな。絶対厳しい」
「そうだね。でも、僕頑張る。バンに負けないように」
「俺だって」
ライとバンはそう言いあいながら、バンの家で卒業パーティの準備をしているであろう二人の母親の待つ家に帰って行きました。
読了頂き、ありがとうございました。
テレビでアフリカの子ども達の映像を見て、書きたくなり、思いのままに書きました。
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