第九章 アイスはチョコ&キムチ
女子3人はいい加減店を見るのが飽きてきたらしく、会話が投げやりになっている。それと同時に嫌な予感がチリチリ。
「よし!39アイスクリームにでもいこうよ!」
「それはいいわ」
「私も行きたい....!」
巳瑠亜ー!せめて俺を気遣えよ!女子3人+男子一匹とか.....。見つかったらまじで終わるぞ俺....。
一人で葛藤しているといつのまにか39アイスクリームの前についてしまった。女子3人は早速「あ!バニラおいしそー!」「このチョコ&キムチ。美味しそう.....!」「「ええっ!?」」などとガールズトーク炸裂である。俺は普通のチョコを頼んだ。
「んー!美味しい!」
「ホント.....美味しい....」
「まあ、なかなかってところかしら?」
「ねー涼、美味しい?」
「涼くん......」
「ほら早く食べないと溶けちゃうよ?」
世界のどこかにいるであろうスーパーヒーローよ!俺は助けてくれえええ!
「っああ!おおおお美味しいなああ」
「なにその慌てふためきは....」
「まさか....楽しく....ないの?」
「いやああ、楽しいぞー!俺はめっちゃ楽しいぞー!」
「涼お兄ちゃん....今日ヘンだよ?」
やめてくれ。いま俺のヒットポイントは0なんだ。瀕死状態なんだ。
さっき男子にあんなことを聞かされなければ!!
昼休みーーー
「おいおい...みんなしてなんだよ?」
「何って涼このヤロー!うちの高校3大美女を1人で囲いこみやがって!!」
「いや、絶対勘違いだ!俺は囲った覚えはない!」
「じゃあ、なんで巳瑠亜ちゃんや毬子さんや羽利さんがお前のまわりに集まる!これは美少女同級生攻め軟弱同級生男子受けのラノベなのか?!」
「そのセリフ前にも言ったぞ!しかも範囲拡大すんな!」
「冴えない高校2年生の男子がいきなり美少女たちからの攻撃!軟弱な男子の運命やいかに?!そして彼のハートを射止めるのは一体誰だ?!」
「ラノベの紹介文か?!」
「くー!売れるぞ!!」
「そっちかよ?!つーか売るな!」
「いやだが本当の話、あいつらまじで涼のことが好きだぜ。まじ3人でデートとか羨ましいわー」
「別に俺じゃない」
「なんでも巳瑠亜ちゃんとは兄妹なんだろ?いつでもデート状態じゃないか?」
だめだ....こいつら。
「分かったからほら散って散って。ヤローが5人もかたまってたらそりゃもう女子ドン引きだぜ?」
「「「「「うっ!」」」」
「そこだけ、都合よく合わせるなよ!」
まさか、この3人俺のことが....その....ほら....えっと...す、すすすすうききき..なのか?いや、ありえない。神に誓ってありえない。
「ねー、お兄ちゃん聞いてる?」
「えっ?ああ。聞いてるさ」
「もうー。ほら帰ろ?遅くなっちゃう」
「あ、ああ」
俺らはもときた道を戻りだす。
あたりはすっかり暗くなっている。
本当に3人とも俺のことが好きなのか。
分からないまま時間だけは冷徹に時を刻むのだった。