第六章 転校生は攻める
放課後がやってきてしまった......。
俺は仕方なく教室に居残っていると、ガラガラと音立てながらドアが開いた。入ってきたのはもちろん羽利だ。
「よかったちゃんといる。いなかったらどうしようって考えてた」
「で、早く済ませて帰りたいんですけど俺は」
「そんなに妹さんに会いたいの?」
「だから違うから!」
羽利はもうクラスの男子どもに俺と巳瑠亜のことを聞いてしまったらしい。
「かわいいわよね、あの子。でも私は譲らないの。私は涼と結婚する。もうそれ以外に選択肢は残っていないから」
「いつ決めたんだよ!そんなこと!」
「いつって......私がイギリスに行く直前に『絶対戻ってこいよな!帰ってきたら結婚するからな!』って言ってくれたじゃない」
「ゴメン.......」
「でも、最初は付き合うからでいいから。お願い」
そう言い寄られているうちにどんどん教室の壁へとおいやられていく。
ドンッ!という音がして、ハッとすると壁に羽利が手をつき、俺が逃げられないよにしていた。
「........羽利?」
「ずっとずっとイギリスでも涼のこと考えてた。向こうでかっこいい子にどんなに言われようと『好きな人がいる』って断り続けた。日本に帰ることが決まったとき嬉しくて泣いた.....。でも涼は違った。巳瑠亜さんのようなかわい子が近くにいた。もう10年近く会ってなかった私には今更つくるとこのできない雰囲気を持ってた」
「羽利!」
これは毬子と同じパターンか?しかも巳瑠亜に嫉妬(だと思う)らしいぞ....。
「悔しかった。きっと帰ってきたら素晴らしい関係になれると信じて疑わなかった自分を罵った」
「は....ねり.....」
「それも誘ってるの?上目遣いで。目を真っ赤にさせて。私を遊ぶつもりなの?」
「誘ってなんか....ない....」
「ねえ、聞いてるのよ?」
羽利はいきなり顔を近づけてくる。ねえ、と囁くたびに顔に直に羽利の吐息がかかる。俺は顔を真っ赤にさせた。
「羽利.....お願いだから顔をあげてくれ」
俺はやっとの思いで頼む。
「涼.......」
そう言うと羽利はゆっくり顔をあげた。泣いていたようで目はほんのり赤くなっている。教室の窓から差し込んでくる夕日に顔を照らされ幻想的な美しさを持っていた。
「とりあえず今日は帰ろう。あんまり遅くなるのもあれだし」
「うん」
そう言い、俺たちは教室を出る。
学校の敷地を出て、すぐの交差点で別れる。俺は、
「じゃあな」
と言うと羽利も
「また明日」
といい帰っていった。
沈みかけたの夕日の逆光となり姿だけしか見えない。俺はそれをすこし眺めたあと、早足に自分の家へと向かった。
こんにちは作者です。
今回はちょっとアレかも
読んでくださってありがとうございました!