第四章 俺はやっぱりラノベの世界に迷い込んでしまったようだ
そのあと巳瑠亜は避けた。
なるべく避け続けたおかげでなんとか逃げ切った。
なんで始業の日からこんな目に合わないといけないんだよ!
と、みんな叫んだところで助けて助けてくれるどころかニヤニヤして無視してくるはずだ。
俺は結局逃げ場を失い屋上に舞い戻ってきてしまった。そうこうしているうちにチャイムが鳴り下校の時間だ。
「はあー」
せっかく綺麗な夕焼け空なのに全然綺麗に見えない。
「涼くん........」
急に呼ばれた名前に驚き後ろを振り返るとそこには毬子が立っていた。
「おお、どうした毬子」
「うんん。たまたま屋上に来たら涼くんが見えたから声かけちゃっただけ」
「そうか」
もともと毬子があまり喋らないせいか、気まずい沈黙が流れる。その状況を打破するがごとく急に毬子が喋りはじめた。
「涼くん........私ね小さい時からこんな性格で人と喋るのも苦手でいつもひとりぼっちで......でも涼くんが『俺らトモダチだろ?』って私に小学校2年生の時話してくれた。私、すごく嬉しかった。1年以上たっていたのに友達と呼べるような存在を私は持っていなかったから」
「............毬子?」
急に喋りだす毬子。俺は話の流れがいまいち掴めない。
「その時からずっと好きで....でもこんな地味な子かっこいい涼くんは相手してくれないことは分かってたけど.....。最初巳瑠亜さんを見たときは.....デレているところを見てしまったとき....すごく不安にあなって心配になってこのまま離れていってしまったらどうしようってそのことばかり考えるようになって.....」
いつのまにか毬子は泣き出している。本当に今日はいろいろなことがある日だ。
「最初は諦めたの。まわりの女の子たちの温度差や見た目とか性格とか......こんなのがそばにいたってきっと涼くんにとっては邪魔なだけだって。でも!止められなかった。ダメだと思ってるのに気持ちだけはどんどん膨らんでいって....ゴメンね。嫌いだよね。こんな子なんて」
俺はなにも言えずにいた。あの毬子がこんな悩みを抱えていたなんて。俺は言葉を選びながら口を開いた。
「毬子.......俺はお前のこと迷惑だなんて思ったことは一度もない。逆に楽しかった。俺は下に兄弟がいなかったから妹ができたみたいで。でも勘違いさせてたんだな。ゴメン。もしかしたらもう俺には謝る資格もないかもしれないけど....」
「涼くんは気にしちゃダメなの!巳瑠亜さんとかと一緒にいるのが一番なの!」
俺は驚いた。めったに叫んだりしない毬子だ。今だって緊張で震えている。
「.......本当にだめなの」
毬子は自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。
「毬子......」
俺が名前を呼んだ瞬間に毬子は立ち上がり俺を見る。その目は泣きはらし赤く潤んでいた。
「じゃあね、また明日」
そう言うと屋上の出入り口までかけていった。
俺は空を見上げた。さっきまで綺麗な夕焼け空だったのに今は夜の闇に吸収されているところだった。俺はその空を見上げハァーとため息をつくと立ち上がり出入り口へと向かった。
どんどん別の方向に進んでいってるような気がしますが.......
まあ、気にしないでください
読んでくださって本当に感謝です!