俺は羨ましがられた!誰に?高校の男子たちに!
今日から高校2年生。新しいクラスや先生。みんなが心踊らせる。そしてそれ以上に楽しみなのがそう転入生である。もうすでに女の子がくるという噂だけは広まっているらしくどんな子なのかみんなウキウキランランだ。
そんなみんなとは対象的に俺は長いため息をはいた。事前にもうこのクラスに巳瑠亜がくることは知っている。その時軽いめまいが俺を襲ったのは言うまでもない。サヨナラ俺の静かな高校生活。サヨウナラ..........。
ガラっと引き戸特有の音がしたと思えば新しい先生が入ってきた。巳瑠亜はまだいないことから後から呼ばれてくるらしい。
「えー、この度一年間このクラスの担任を務める火迎だ。みんなよろしく。じゃあ早速だが転入生を紹介しよう。神崎さん入ってー」
みんなが一斉に教室前方にある引き戸に注目する。
ガラガラ
巳瑠亜はゆっくりと引き戸を開け中へと入ってくる。そして教室の中心の教壇の横にたち、ゆっくりと自己紹介をはじめた。
「はじめまして。神崎巳瑠亜です。家の都合でこちらにきました。よろしくお願いします。」
男子も女子もあまりの可愛いさにみとれている。俺はハアッーとため息をつくと窓の外へと視線を移した。
いつのまにか朝礼は終わっており、転入生がきたときの恒例行事の質問責めが始まっていた。
「おうちどこ?」
「部活入る?」
「美術部入ってよ!」
「何人兄妹?一人っ子?」
「彼氏いるのー?」
「可愛いー」
いつのまにか質問から脱線しはじめたのを牽制するかのように巳瑠亜は答えた。
「おうちは東の方。部活は今のところ分かりません。兄妹は兄が一人。彼氏はいません」
最後にニッコリと笑い答えを締めくくる。男子はその笑顔にポッーとみとれている。
(絶対にばれたくねえ。こいつらに!いくら義理でも兄妹だってこと!)
俺は心の中でそう誓う。するといきなり巳瑠亜の席の方から新たな質問が聞こえてきた。
「ねーねー、お兄さんどんな人?」
聞いたのは女子で妹がこんなに可愛いのだから兄もかっこいいのだろうという考えたらしい。ごめんよ、こんなやつで。俺は内心言い返してみるがそれが伝わるはずもなく。その刹那巳瑠亜がこちらを指差しながら喋っている。まさか.....!
「えっ!お兄さんて神崎くんのことだったの!?」
コクリと頷く巳瑠亜。そして怨念の意が盛大に込めらられているであろう視線がこちらを見つめている。
「涼お兄ちゃん!」
巳瑠亜はいきなり叫ぶと俺に向かって走ってくる。避ける暇もなくそのまま突進。俺は巳瑠亜を腕で受け止めるハメになってしまった。
「ねえ!お兄ちゃん今日一緒にゴハン食べよっ!」
「え?ああ、まあいいが」
「やったー!」
かなり視線を感じるが無視しておくことにする。なに!このデレさ!といった感じだがもう知らない。どうにでもなれ!
巳瑠亜が離れていったあと俺の周りは男子どもで埋めつくされていった。
「おい!どういうことだよ!なんで巳瑠亜さんとお前が兄妹なんだよ!」
「いっとくけど義理だからな」
「そのぐらいは分かるが.......!なんだ!ラノベか!これは妹攻め兄受けのライトノベルなのか?!」
「お前しれっとそんなこと言うなよ。どこをどう間違えたらいっ、妹攻め兄受けになるんだよ!」
確かに巳瑠亜は可愛い。そこらへんの女の子に比べたらかなりいい方だ。しかも俺に対してはかなりデレている。飢えたケダモノ男子たちにはかなり素晴らしいシチュエーションらしい。さっきからあーだこーだ言い合っている。
俺は席を立った。巻き込まれるのはゴメンだ。と、いきなり袖を引かれた。
「んん?ああ、なんだ毬子か」
毬子は幼稚園からの幼なじみ。中学校では一度別々になったが高校でまた一緒になった。
「ねえ、彼女じゃないの.......?」毬子は遠慮がちにしっかり聞いてきた。
「別に違うよ。義理の妹」
「そう........ならいいんだけど」
毬子は袖をなかなか離してくれない。微妙な空気にお互いどきまぎしていると空いていた方の袖を掴まれた。
「お兄ちゃん!」
近寄ってきいていたのは巳瑠亜だった。
「うんん?どうした巳瑠亜?」
「ちょっとこっち来てよ!」
俺はされるがままだ。教室を出る際男子たちの視線が痛かったがそこにはあえてふれないでおこう。