表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

海の神 〜漁師の家に産まれた私〜

作者: 藤井 ち子

「実話」


 私が生まれたとき、嬉しかった?


 私は他の家庭が羨ましかった。家族みんなで誕生日を祝ったり、旅行へ行ったりする。

 うちは貧乏な訳ではないのが、父の仕事の都合で、そんな行事なんて無かった。

 小学生のときの休み明けに、クラスメイトのほとんどが、

「キャンプに行ってきた」

とか、

「家族で遊んだ」

と、日記に書いていた。私はそんなクラスメイトがとても羨ましかった。

 でも私の家族は温かかった。家庭内の行事を除けば、どこにでもいる幸せな家族だった。

 私が小学6年生になったある日、自分が生まれたときのことを、母に聞いた。

「うちが生まれたときどうだった?」

すると母は笑顔で答えた。

『本当に辛かったけど、産まれてきたお前を見たら、嬉し涙が出てきたよ。』

その時私は、母の子で良かったと心底思った。

 しかし父は、私が産まれたとき、病院には来ていなかったという。母は一人で私を産んだそうだ。

 でも私は

「父は漁師だから、きっと病院に行きたくても、仕事中で行けなかったんだ。」

と思った。

 漁師は一度海に出たら、直ぐには戻ってこれない仕事だから、仕方ないと思っていた。

 しかし私が産まれ時間は海に出ているはずの時間ではなかった。母に聞くと、父はその頃自宅にいたとの事だった。

 私は父に無償に腹が立った。母が一人で頑張っているのに、父は何をしていたんだと。

 それから私は父に対して、冷たい態度をとっていた。

 父は最低だ…。


 しかしそれから2年後。

「うちが産まれたとき、父は嬉しくなかったの?」

と私は母に聞いた。

すると母は驚きつつも答えた。

『嬉しかったに決まってるでしょ。』

そして2年前から気になっていた事を聞いた。

「じゃ、どうして父は病院に来なかったの!」

『魚が捕れなくなるからだよ。海の男が"結婚"したり、"子供"が産まれたりすると、その年の漁獲高が悪くなる事があるんだよ。海の神は"女"だからね。』

 私は泣きたくなった。今まで散々父に冷たい態度ばかりとっていた。私は馬鹿だ…。

 父と母は昔、私達こどもが産まれてきたら、楽な思いをさせてあげたいと、出稼ぎに行った事もあったということを、今は亡き祖母に聞いた。

私は父に謝った。そして感謝をした。

「ありがとう。」

 今父は、ここ青森を抜け出し、千葉県で船頭の右腕として働いている。


父へ。

今日も体に気を付けて、仕事頑張ってください。

 私は、父の子で本当に良かったです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 泣けるわ~。
[一言] 鳥肌たちます。
[一言] はじめまして、灯夜って言います。 もう少し家族との関係性みたいなものを表現できると良いかなと感じました、あと句読点の位置も。 これからも頑張って下さい。 ちなみに自分の境遇が、東北出身で千葉…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ