いやちょろすぎでしょ
「呼んできたよ」
「ナイス」
「なんなん? 琉弥。わたしらも暇ちゃうんやけど」
「いや、お前らいっつも暇してるやろ」
呆れる沙耶ちゃんを横目に、桐生くんはフッと不敵に笑った。
「大丈夫やって。たぶん、お前らも喜ぶ話やから」
(なんだか……嫌な予感がするような、しないような……?)
桐生くんの笑みが、どこか思惑ありげに見えて思わず身構える。
「テストさ、全員で勝負しやん?」
「お前、勝負って子供やないんやから。そんなもんでやる気出るわけ――」
呆れる丈瑠くんを制するように、桐生くんがニヤリと口角を上げた。
「一番点数高かったやつは、何か一つ『命令』できるってことで」
「よし、やるか!」
(えー……単純すぎない!?)
丈瑠くんの即答ぶりに、思わず心の中でツッコんでしまう。
(それにしても、テストで勝負して勝ったら一つ命令か……これ、少女漫画によくある展開だよね? まさかこれも桐生くんが上田くんのために……? ……いや、そんなわけないか。本人も楽しそうだし、考えすぎだよね)
「それで、丈瑠は同意したわけやけど、お前らは?」
「もちろんやるに決まってるやろ! 何してもらおかな〜」
「なんで勝つ前提で話してんねん」
「まぁ、沙耶はやるってことでいいな。一ノ瀬柚葉は?」
「そ、そりゃあ……みんながやるならやるけど」
「よし、じゃあ決まりやな。明日、みんなで勉強会でもやるか」
「いいやん! やろやろ!」
点数勝負に、みんなでの勉強会。
ほんとに少女漫画みたいな展開だな、と思う。
(このまま、上田くんと北川さんも漫画みたいに付き合っちゃったりしないかな……)
「じゃあ、それで決定で」
「おけ! 今のうちに何やってもらうか考えとこなあかんな〜!」
「ほんとにのびのびしてるな……」
無邪気に喜ぶ沙耶ちゃんを見て、思わずクスッと笑ってしまう。
それにしても、丈瑠くんは片思いの恋愛をしていて本当に楽しそうだ。
(わたしもいつか……彼氏ができたりするのかな……?)
ふと、昨日の占いのタイトルが頭をよぎる。
(『あなたに運命の人ができる前兆』……あぁもう、だめだ! こんなこと考えてたら、どうしても占いのこととか桐生くんの顔が浮かんできちゃう……!)
慌てて首を振って、別のことに意識を向けた。
(違うこと考えよう! そうだ、勝負のこと! わたしが勝ったら何してもらおうかな……やっぱり上田くんを応援するためのものかな? それとも、まだ大阪のことあんまり知らないし、みんなにおすすめの場所でも紹介してもらおうかな……)
そこまで考えて、ハッとした。
(あ……わたし、もうこの場所が心地よくなってるんだ……)
転校してきたばかりなのに、こんな風に笑い合える仲間ができている。
(……今度は、前の学校みたいにならないといいな……)
胸の奥が少しキュッと痛むのを隠すように、わたしは窓の外の雨を見つめた。




