一塁ベンチ
後攻チーム スターティングメンバー
1番(二)関
2番(捕)松井幸
3番(一)山口
4番(游)五百旗頭
5番(中)松井所
6番(指)伊藤
7番(三)佐藤朝
8番(右)山田蒼
9番(左)山田百
投手 田中
2035年1月17日 11:35
第三小学校 校庭
□山田 百合
「シ、シヌカトオモッタ」
4番の藤原さんがセンターライナー、5番の鈴木くんが見逃し三振に倒れて一回の表が終了した。
2番の木村さんのフライ、4番の藤原さんのライナーに向かって全力疾走していたからベンチに着いたときにはもう死にそうだった。
ベンチに腰掛け上を向いて目を閉じていると、頬っぺたに冷たい感覚。
「もうバテてるって言わないでよ?」
目を開けると所等くんがスポドリを差し出してくれていた。
ありがとう、そう言いながらゴクゴクとスポドリを飲む。
ああ、生き返ります。
でも、もう守備には就かせないでください。死んでしまいます。
一応、毎日ある程度走るようにはしているのですが、全力疾走とボールに当たるかもしれないという恐怖感にはなれていません。対戦ありがとうございました。
「え、本当にバテてる?」
いつの間にか右隣に座っていた所等くん。
「バテてる。早く変えてくれないかな。」
「それを俺に言われても、ねえ。」
そうなのだ。この野球の試合。監督の権限は主催者に握られている。
何故か7番レフトで先発メンバーで選ばれてしまった。
『1番セカンド 関 ゆい
バッターは 関
背番号 15』
関さんとかはわかりやすい。運動系ならなんでも器用にこなすタイプ。
さっきの木村さんにあたったボールをファーストに投げる動作もややぎこちなかったがちゃんとこなしていた。
「もっとこっちのチームにも鈴木君とか動ける選手いるのに、さ」
「それは分かる。何を基準に選ばれているかさっぱりだ。」
それは主催者側にしかわからないものだ。
「そういえば、さっきなんだけど。」
私は野球はホームラン打ったらスゲー!と言う知識までしかないので、なぜさっき木村さんがアウトになったのかがイマイチわからないかった。
なので所等くんに聞いてみる。
「まあ、わかりやすく言うと打者が打ったボールにランナーが当たったらアウトなんだ。もし、譲司のミットにあたってたから木村に打球があったたらそんなことなかったんだけどな。」
ふーん、
やっぱり野球ってルールが多いんですね。
そうこうしていると、コツンという音が聞こえる。
グランドに目を向けるとショートのずいぶん前に球が転がっている。
ショートの宇都宮さんがダッシュで近寄り右手で直接ボールを捕球、やや前のめりになりながらのランニングスローで一塁へ送球してギリギリアウトとなった。
「関も宇都宮も本当に初心者か?野球上手すぎないか?」
「関は上半身だけで打ちに行ってた。だから初心者とみて問題ないと思うぞ。」
と、左上から声がしてギョッとしてみると京磨くんが立っている。
「逆に上手すぎるのは宇都宮の方だ。初心者でグラブを介さないっていう判断ができるのが初心者離れしている。」
「言われて見ればプロでもお目にかかれるかどうかのプレーだもんな?」
右側の所等くんも納得したようにうなずく。
「ってことは宇都宮さんはグレーってこと?」
「あんまり、自分が好きなスポーツでこういう話はしたくないんだけどな。
ただ、どうしてもプレーをしないでずっと見てろって言われるとそういう目線になる」
そうだよな、京磨くんは好きでやってるのに。そんなので人間か死ぬかどうかなんて見たくないはずだ。
『2番 キャッチャー 松井 幸司郎
バッターは 松井 幸
背番号 22番』
「一日目の時だってそうだ。もしかしたら、この人間かどうかっていうのは案外簡単なのかもしれないぞ。」
「それはどういうこと?」
「案外こうして俯瞰してみると、初心者離れしたプレーってのがかなりある。そして、人間臭くないプレーってのもたくさんある。
例えば、あの幸司郎を見てみろ。」
そう、京磨くんが指さす先を見てみる。
そこには右打席で明らかに力んでいる幸司郎が(こうしろう)がいる。
素人だけど分かる。
あれではバットに球は当たらないだろう。
『ストライク バッターアウト』
予想通り空振り三振だ。
確かにあれだけ力んでいるのはわかりやすい。
シンプルにかっこつけたくて長打を狙っているのがバレバレだ。
それに申し訳ないが、何事にも不器用だという性格が隠しきれていない。
『三番 ファースト 山口 茶兎
バッターは山口
背番号 25』
「それを基に、アイツの打席を見てみろよ。」
ネクストバッターボックスに向かう所等くんを見送り居ながらそういう京磨くん。
──私は彼が『AI』だということがわかっているのだけど。




