欠員の中で
YOH同窓会TIPS
2人が欠席したことに関して、クラスメイトはあまり不自然さを出さなかった。
あまりクラスに協力をする姿勢を見せていた二人ではなかったからだ。
2035年1月17日 11:25
第三小学校 校庭
□木村 陽花里
『2番 セカンド 木村 陽花里
バッターは木村
背番号 8』
そうアナウンスされた私は右バッターボックスに入りピッチャーの譲司と向き合う。
2日目に宣告されたゲームは野球だった。
・残された29人で野球の試合を行うこと。
・なお、渡辺 京磨はプロ野球選手なので参加しないこと。
・「欠席」の越智 歩緒生と渡部 るるはベンチ外とすること。
これ以外は人工音声が自動的にオーダーを組んだ。
近年陽国では、野球が再興している。
一時期はサッカーやバスケットボールに勢いが流れたときもあったが、相次ぐ世界大会での優勝やベースボール発祥の国での盛んな野球啓発活動の効果が目に見えて出てきている。
だから、全員と言うわけではないが野球のルールはわかっている。
私はお父さんと修行先の師匠の影響でプロ野球の試合はなんども見たことがある。
生憎推しの球団が姫野まで来たことが無いから生で観戦したことはないが。
お父さんと師匠の推しの球団が同じだから、私の家に師匠が上がりこんだり、逆もまた然り。
そんなかんなで、ボークの定義とかそういうの迄わかるようにはなっている。
今は一回の表、ノーアウトランナー一塁。
一番の愛聖がファーボールを選んだ形だ。
もちろん、人生でバットを持つのは初めてだ。
義務教育で野球なんてなかったからな。
愛聖と対戦するときには大きく振りかぶっていた譲司も今はセットポジションだ。
一塁ランナーの愛聖のリードはそこまで大きくない。
譲司がクイックモーションで第1球を投げてきた。
(投げる動作が…早い!)
バットを一切動かせないまま球はキャッチャーの幸司郎のミットに吸い込まれる。
アウトローへ投げ込まれる。
『ボール』
どこからともなくAI審判のコールが響く。
どうやらギリギリストライクゾーンを通らなかったようだ。
ボールは幸司郎から譲司へ。
譲司が元高校球児だ、ということは今さっき知った。
小学校まではサッカーをやっていたが、中学から野球部へ。
才能が開花して高校へは野球推薦で言っていたらしい。
私は高校に行く予定がなかったから全然そんなこと知らなかった。
(愛聖への警戒が全くないな…)
あのクイックモーションが故に走られないという自覚があるのだろうか。
愛聖は持久力タイプで必ずしも足が速いとは言えない。
そこを狙っているのか。
そうこうしているうちに譲司が2球目を投げるモーションに入る
(愛聖が走った!)
2球目はバットは少し動かそう!いや、盗塁だったら振らなくてもいいか⁉
ボールはミットに再び収まる。
ボールはアウトローへ。
『ストライク
カウント1ボール1ストライク』
「舐めんなよ!」
そう言いつつキャッチャーの幸司郎が送球した…のは二塁ではなく一塁。
どうやら、愛聖は盗塁をする素振りをしただけで一塁近くにいた模様。
意表をついてキャッチャーからのけん制をしたらしい。
愛聖は一塁へヘッドスライディングで帰還。
一塁の茶兎くんが補給してタッチ。
『セーフ』
ボールがファーストの茶兎くんからピッチャーの譲司に返される。
愛聖は再びリードをとる。
譲司は一塁を気にする素振りを見せるが、けん制はしない。
今までの投球はアウトローへストレート。
ここで幸司郎の立場に立ってみる。
普段からちょっとカッコつけたい幸司郎だったら次に要求する球は…
譲司が3球目を投げる。
愛聖がまた走…った!今回は走る振りではなく本当に盗塁だ!
バッターボックスへ自分の身体へ向かってくる球。
だけど、私はその球が投げられた瞬間に一瞬浮いたのを見逃さなかった。
「意気地女でごめんねっ!」
ストライクゾーンに入ってくる「カーブ」を私は打ち抜いた。
ボールは左中間へ。
ピッチャー
田中 譲司
キャッチャー
松井 幸司郎
ファースト
山口 茶兎




