多数派は。
YOH同窓会TIPS
瑞樹もかっこつけたい欲でお残しはしなかった!
2035年1月17日 9:45
居酒屋
□山田 百合
木村さんと長話になっていたのは私にとって好都合だった。
普段だったら、私と仲がいい残りの二人の到着を待つところだったのだけど。
誰かって?
Wやまあおの2人だ。
山田 蒼と山田 靑井。
だけど私は少なくとも後者のほうの靑井と話す気にはなれなかった。
ことの発端は昨日の投票開始直前。
配信者の靑井が行った
相互投げ銭企画
あれにより、向こう側の靑井が人間あり、こちら側の靑井がAIであるということが判明。
そうである以上、私は昨日までのように靑井と話す気にはなれなかった。
もう一人の蒼には申し訳ないが。
だけど木村さんの気づかいによって私は遅れてやってきたWやまあおのところに返される。
「…おはよう」
「おはよう、百合。…昨日はよく眠れた?」
そうやって返してくれたのは蒼のほう。
あまり明るい性格ではないが、髪をグレーにしたロングヘア。瞳にはいつも通りのグレーのカラコン。
首都の私立大学の経済学部に通っていたはずだ。
「ゲームやっていれば、なんとかなったよ。」
「…ゲームでオールって訳じゃないん…だね」
そう返してきたのはAI確定の靑井。
こうして話している分には人間とそう変わらないように思える。
今は実家のような安心感。高校を出て離れ離れになる前までのものが流れている。
だけどそれは錯覚だ。
目の前にいるのはAI。靑井のふりをした人工物だ。
頭ではわかっている。論理的に詰めればわかっている事実なのではあるが。
どうしても心で、すんなりと受け入れられない。
もし、私たちが毎日会う間柄で──例えば職場の同僚とか。──だったら違和感に気づけるのかもしれないけど。
たとえちょっとおかしいところがあったとしても、時の流れで人って変わるんだなぁと位にしか思わないだろう。
「でも、さすがの百合も昨日は帰って即睡眠!って訳にはいかなかったんだね。」
「…百合は職業に合わず健康が取り柄だもんね。」
「靑井にも見習ってほしんだけどね。」
靑井が個人勢VTuberだってことは、このゲームが始まるまで、私たち山田トリオの秘密事項であった。
でも、靑井のことをよく知っているのは蒼のイメージ。この2人は家も近いし、幼稚園から一緒だったんじゃなかったっけ。
ウチのお母さんもあの2人って一心同体だよねってよく言ってたなぁ。
そこまで回想してふと考える。
蒼は人間なのか?
昨日の相互投げ銭では配信者では10人全員が参加できないようになっていた。
あの見た瞬間はその理由がわからなかったけど、今では分かる。
AIに相互投げ銭に参加させないためだった。
時間さえかければAI側もあの企画に参加することが可能だったからだ。
だがしかし、もし仮にAI側があの企画に参加しようとも実際に金銭を操作するにはいくらかの時間を要する。金融機関のの2段階認証などを突破する必要があるからだ。
通常の相手であればそこで突破できそうな仕掛けだが、相手は人格をコピーできることができる。
そこを配慮してのことだろう。
靑井、そして同室の愛聖はそこに付け込んだと思われる。
目の前の蒼は、どうなんだろう。
こちらでは人間で、あちら側としてはAI。だから、所定の枠内に収まらなかった。
それともあちら側の企画を見つけられなかったからか。
二人の読み方が同姓同名の二人の楽しそうな会話を見てとそんなことを考えてみる。
このグループでは人間が多数派なのだろうか。それともAIが多数派なのだろうか。




