馬が合う
YOH同窓会TIPS
今回のゲーム中、投票者はご飯に何を食べてもお代は請求されない。
なので、悠斗は1万円を超えるステーキを大胆に食べている。
2035年1月17日 9:11
居酒屋
□山田 百合
「瑞樹ってあんな馬鹿だったっけ?」
牛丼大盛を頼んだらしく、ただ食いきれないといった表情で机に突っ伏している彼を見ながら隣の木村さんに声をかける。
普段はあまり話さない間柄だが、あまりにも瑞樹がバカなのと、周りに仲のいい子がいないので思わず目の前にいた木村さんに声をかけてしまった。
「伊藤くんってよりかは男子全体がバカでしょ。」
ここまでわかりやすくドラマとか漫画の「ねぇ男子ってバカじゃない?」っていう描写が目の前で繰り広げられるとは。
確か瑞樹は、中学で猛勉強して頭がいい高校に行ったはずなんだよなあ。
隣で炊飯器ジャーごとステーキを食べている五百旗頭くんに比べたらマシか…
さてと、私も何か食べようかな。
私と木村さんは今来たばかり。
今日は昨日のこともあって約束の9時に来たクラスメイトはほとんどいないようだ。
女子の一番乗りが私と木村さんだった。
(しっかりものの関さんとかが遅刻してくるのは意外だけどね)
まあ、眠り姫である凛を叩き起こすのに必死なんだろう。
お手軽に朝の栄養が取れる○ロリーメイトを食べながら改めてやれやれと男子の方を見る。
「まあ、伊藤くんはまともな方だと思ってたんだけどね。」
「意外と彼もノリに流されやすいって訳だね。」
昨日、クラスメイトのうちの一人がログアウトして翌日がこれだ。
あまりに緊張感がなさすぎる。
あまり入り口の男子の方を見るとテンション感が狂いそうなので木村さんに話しかけることとする。
「木村さんは昨日は寝れた?」
「…実は一睡もできてない。見ての通り食欲もない感じだよ。」
そう手元にあるお粥を持ち上げる。
「百合は?」
「2,3時間寝れた」
「え、すご」
「私にはゲームっていう何も考えないで出来る精神安定剤があるから」
「そういえばプロゲーマーだったね。私そういうの疎くって。」
「そういえば、木村さんって今何やってるんだっけ?」
「宮大工の見習いかな。今5年目だよ。」
聞くところによると木村さんは中学の時の修学旅行で見た神社仏閣の芸術性に没頭して中学卒業後に姫野県の大工に入ったらしい。
「だからみんなみたいに勉強ってのはできないかな。」
ハハハと笑う木村さん。
体格が一般的な女子よりも良いっていうのといざというときに抜群の集中力を見せると思っていたら、それ相応の職業についていたとは。
「結構厳しい社会なんじゃない?」
「まあ、そうだね。ウチの師匠なんかは朝起きることにこだわってるから。今日みたいに遅刻したらなんて怒鳴られるか」
今時そんなに怒鳴る人っているんだ、、、パワハラにならないのかな。
というか伝統文化を守るっていう職業だからあるいみそういう古臭いところがあるのかもしれない。
伝統を守る古来からの職業と電子の塊の空間でやる職業。
お互いになんとなく聞いたことはあるけど、詳しくは知らない職業。
不思議な組み合わせだったが、そのあとはお互いの職業についてしばらく話してた。
私がハマったゲーム。
普段話している相手はゲーマーばっかりなので、ゲームに疎い人に説明するのは若干骨が折れたが木村さんは「うんうん」とさぞ興味深そうに聞いてくれる。
木村さんの職業の話。
世界に誇る陽国の伝統芸になぜハマったか。そこにはAIではなく人間でなくちゃいけない理由。設計図はAIに任せても実際に木を削るのは人間じゃないといけない理由。
お互いがお互いにオタクなのがよくわかってくる。
小学校の時からあまり話さなかった仲だったが、意外と馬が合うところがあると実感する。
もしも、一昨日このゲームが始まらなかったら、こんなに木村さんとは話さなかっただろう。
そういう意味ではこのゲームに感謝しないといけないのかもしれない。
だけど、それが木村さんがAI(人狼)じゃないという裏付けにはならないという意味では私はまだ警戒している。




