それぞれの第0夜~22番~
YOH同窓会TIPS
茶兎は小学校の時から、人望でクラスメイトをまとめていた。
大学ではディスカッションサークルに所属して、論理だって物事を解決できるスキルも身に着けつつあるようだ。
2035年1月15日 姫野県 20:30
某居酒屋
□松井 幸司郎視点
「約束の時間だ。これをもって解散しよう。」
そう、幹事をやっていたから、という理由でまとめ役を引き取ってくれた茶兎が言いだす。
約束の時間、というのは、議論の終わりの時間のことだ。
あの人工音声の説明の後議論は紛糾した。
それに埒が明かないと考えた、茶兎からの提案。
──議論の進捗にかかわらず、20:30になったら全員帰路に就くこと。
各クラスメイトはまだ何か言いたげだったが、一人二人と自分の荷物をもって帰ろうとする。
「YOHの指示で、ゲームは明日の10時から開始となっている。だから、念をもって明日は9時にここに集合だ。いいね?」
立ち去るクラスメイトの背にそう声をかけ茶兎も帰ろうとする。
この状況でも冷静にクラスをまとめ上げるのは、苦渋の役目だ。
──よっ!元学級委員長!
とはやし立てたくなるが、そんな雰囲気でもない。
「なあ、茶兎。足を貸してくれないか?いかんせん急にここに来ちまったもんだからな」
「ん、ああ。僕の自動運転車でよければ。ゆーともいいかい?」
と、少し離れた位置にいる五百旗頭悠斗に声をかける。
「ん、ああ!もちろんだ!」
そう言いながら近づいてくるどんな時でもクラスの元気印。
そんな役割を担ってきたゆーとだが、この状況はさすがにきついか。
ゆーとは元気だけが取り柄じゃない。
いくらYOHが実装されていたからと言って20歳で1人に漁に行けるやつは頭の回転も速い。
実際、議論にはついていけていたようだ。だが、かける言葉が見つからなかった、という印象があった。
ゆーとはゆーとなりに、思うところがあったのだろうが、言語化できなかったもどかしさはあっただろう。
「お前ら海側だろ?俺も加えてもらっていいか?」
そう話しかけてきたのは3番の伊藤 瑞樹
職業は確か入国審査官だったはずだ。もともと遅刻をするかも、という連絡の基、本当に遅刻をしてきた。なので、俺と一緒に<ワープ>してきた形となる。
遅刻の理由は単純だ。今日は3連休の最終日。海外からの帰国ラッシュが予測されており、実際に残業となったらしい。
「僕は構わない。君の家は確かルートの途中だったはずだ。」
君たちはどうだ、とジェスチャーで俺と隣まで来たゆーとに尋ねる茶兎
俺たち二人は問題ないと頷く。
店内を見渡すと大体のクラスメイト帰り支度をしている。
気になることは千万とあるが、本当はこれは夢で家に帰ったら何か解放される。
そんな期待感もあるのかもしれない。
帰りたいのを我慢していたけど、なんか同調圧力を感じて帰らなかった。
というのが大半のようだ。
一部のクラスメイトはまだ、交感神経がONになって少し議論を続けようとしていたが、あきらめたようだ。
その理由も単純で、議論をまとめの茶兎が帰ろうとしていたからだ。
まとめ役も買った茶兎は、
「これは演出で死者は出ない。」
「このゲームに真摯に取り組むべきだ。」
と2つの派閥の意見を要約しうまくまとめ上げている。
──こことここが議論の争点だ。
──ここは人工音声から説明がない。
──その意見は憶測に基づくものだ。
小学校の時とは比べ物にならないくらいのまとめで議論は進んだが、結局は水掛け論。議論は平行線でタイムリミットを迎えた。
驚くくらいに型にはまった議論も茶兎がいないと回らない。
残りたい意思を示したクラスメイトもそこは共通認識のようで、全員が諦めてバッグを取るか、さっきの瑞樹のように脚を頼んでいる。
「僕の車は少し離れた駐車場に止めてある、行こう」
残る意思を見せるクラスメイトがいないことを確認した、茶兎そう言い店を出る。
そういえば、瑞樹の奴は「これは演出」派だったはずだ。
まさか車の中で議論を吹っかけてこないよな?
そんな一抹の不安を抱きながら俺は店を出た。
登場人物
2番 五百旗頭 悠斗 ?? 【投票者】
3番 伊藤 瑞樹 ??【投票者】
22番 松井 幸司郎 人間【投票者】
25番 山口 茶兎 AI【投票者】
◇
この小説は配信アプリREALITYにて
前髪ナル さん
ゆうマロっち さん
に応援されています。




