閑話休題⑦
YOH同窓会TIPS
跡部内閣はYOHの実用を加速させた内閣として高い支持率を得ている
2035年1月17日 18:52
陽国首都
□跡部 陽子【首相】
防衛隊の幹部に連れられて退室する保護者を見送る。
「…これでよかったのかしら」
「総理。正直一般市民よりも防衛隊の隊員を行かせたほうが成功率が高いかと。」
「だからこれから訓練を受けさせるんでしょ」
これが意味をなさない回答だということはわかっている。
だけど、小学校からのきずなが試されている今回の事件。訓練では見れない何かが働くと私は信じている。
「総理。わかっているとは思うが、今回失敗したら一般市民を3人失ったこととなる。これが世間に知られれば──」
「飯島。大丈夫。私は一番最初の人間を送り込んでから内閣総辞職を辞さない覚悟だから。たとえこれを隠し通せたとしてもね。」
私はジャケットを着て室外へ出る準備をする。
「総理。どこへ──」
「私は一国を担う総理大臣。明後日には同盟国との電話会談に国会答弁もある。休んでいる暇はない。」
「総理。どうか無理しないでくれよ。」
「…一番無理しているのは被害者とその家族よ。」
飯島がハッとする様子を見せたが、私はそのまま緊急対策室を出た。
ふと、廊下にある監視カメラに目をやる。
この廊下はAI監視下。
この部屋だけがYOHの監視網を抜けている。
(絶対に何をやっているのかを悟らせてはいけない。)
そう固く決心をして執務室へと向かうこととした。
◇
???
私のことを案内してくれる隊員さんは浜中さんという女性の方らしい。
今はすごい重い空気が流れている建物の中を私と防衛隊の人たちの足音だけが響く。
やがて外に出ると防衛隊の車が止まっていた。
私はあまり車とかそういうものに詳しくないが、隊員輸送用の車のようだ。
運転席がありAI搭載車でないことがうかがい知れる。
「一応聞くけどもうあなたはモバイルYOHをはじめとするAI機器はつけていないね?」
「はい。」
防衛隊のヘリコプターに乗る時にもそこはすごく確認された。
金属探知機まで使われた次第だ。
「そう、それなら乗って」
安心した様子の浜中さんが最初に乗り込み手を差し伸ばしてくる。
ありがたいことに使わせてもらって乗り込む。
「これからあなたには国立最先端科学研究所に向かってもらう。」
「え…」
名前だけ聞いたことがある。確か国の重要な技術を使うところだ。
「なんで私がそこに行く必要があるんですか?」
「…状況はわかってるよね?」
「説明だけは受けてます。ただモバイルYOHが没収されている関係で如何せん実感がわかないといいますか…」
そういうと浜中さんはタッチパネルを取り出した。
ホログラム画面が付いていないあたり旧式だろう。
「1番信じてもらえるのは…これでしょうね。」
そう言って差し出されたタッチパネルを見せてくれる。
そこに映っているのは、私…?
私が配信をしている…?
そこでヘリコプターの中でうけた説明を思い出す。
『あなたを除く元6年1組のクラスメイト達が電脳世界に幽閉されています。』
『そのクラスメイトには例外なく自分の分身となるAIが何らかの方法で作られています。』
この説明、ふーんとしか聞いてなかったのだが目の前の画面を見て一気に実感がわいてくる。
背筋に寒気が走る。
次に浜中さんが見せてくれたのは、クラスのみんなが映っている映像。
ここは…居酒屋?
何か穏やかじゃない雰囲気が流れている。
「この居酒屋で投票者と呼ばれる子たちはAIだと思う子に毎晩投票をしなければならない」
「投票された子はどうなるんですか?」
「処刑されるんだ。人狼ゲームのようにね。」
「…ということは昨日は誰か処刑されたんですよね?それはAIなんですよね?」
血相を変えて聞いてくる私に浜中さんはなかなか答えない。
「どうなんですか!?」
「…それが大変いいにくいことだが…昨日処刑された佐藤 阿弥はおそらく人間だ。」
「…!?」
「君の任務は…被害をこれ以上拡散させないことにある」




