席移動
YOH同窓会TIPS
蒼はまだ疲れで寝ている。
先ほど百合が起こさないようにベンチに上半身を横たえたようだ。
2035年1月17日 8回の裏 2-5 1アウトランナーなし
第三小学校 校庭
□伊藤 瑞樹
俺は、五百旗頭のホームランでベンチのメンバーが浮き立つ中作戦を実行することにした。
といっても、大したものではない。
AIだと思われるメンバーに疑われないように渡辺、もしくはやまゆりに近づくというものだ。
実際、この世界は電脳世界なのだからAI側に動きが筒抜けという可能性もある。
だけど、今夜の投票まで接触のチャンスが何回あるかはわからない。
そんな中、幸司郎にハイタッチするチームメイトを見て次同じような機会があれば席を移動しようと思っていたのだ。
まさかホームランという最高の形でそれがかなうとは思ってはいなかったが。
俺はAIであると疑っている村上らの視線をかいくぐり渡辺の右隣へと移動する。
その意図を察してかその隣にはやまゆりが移動してきた。
ダイヤモンドを一周してきた五百旗頭を渡辺、俺、やまゆりの順で迎えることとなる。
「ゆーと、ナイス一発!」
「ナイス、五百旗頭!」
「…すごかったね。」
最後にやまゆりにタッチしてから五百旗頭はベンチの中に戻っていく。
さあ、これからが勝負だ。
「渡辺、隣良いか?」
と小声でささやく。すぐに渡辺は意図を察したようで、無言でうなずく。
俺ら3人はベンチの前の列右側に陣取ることとなった。
「…さっき聞き逃したんだが、あと2人はわからないんだよな?」
「…ああ。少なくともさっきエラーをした木村は違う。五百旗頭もどんどんコツを掴んで打ったホームランだろうから違う。」
「…幸司郎はどうだ?さっきのダブルスチール、1塁ランナーとの密なコミュニケーションがないとできないんじゃないか?」
「…あの幸司郎の動きを見ている限りは、独断で突っ込んだんだろう。あいつ妙にかっこつけたがるし。」
「「…確かに。」」
その一言は俺とやまゆりが重なってしまった。
「それにしてもさっきの6人以外の2人は本当にAIなの?」
そこまでコソコソと話し合っていた俺は今度は村上が近づいてくるのを察知した。
「あ、そういえば俺3塁コーチャーいくの忘れてたわ!行ってくる!」
俺の唐突かつ白々しい演技に2人はびっくりしたようだが、俺の目線の先の村上を見て合点が言ったらしい。いってらっしゃいという。
「伊藤くん。あなたは6番なんだからネクストバッターボックスに行って。」
村上からの冷ややかなツッコミに「ああ、そうだった」ととぼけて見せる。
結局はあと2人のクラスメイトがAIだと思う理由がわからなかった。
素人の俺からしてみればさっぱりわからない。
所等と平木が怪しいなんて理由が。
俺は自分のヘルメットを着用しながらネクストバッターサークルに入る。
だって、所等は、、、さっきまで渡辺と話していたじゃないか。




