心配と流れと
YOH同窓会TIPS
陽花里は、決断を勢いとノリで乗り切るタイプだ!。
2035年1月17日 8回の裏 1アウト1,3塁
白い部屋
□宇都宮 愛聖
(この陽花里の様子…やっぱりこの子人間だよね。)
突如決まったアイドルデビューを目の前に私は落ち着かないので、現実逃避ということで投票者のみんなの様子をうかがうことにした。
今、目の前で陽花里がエラーをしたところだ。
「やっぱりこの子は何としてでも守らなくちゃあいけない。」
そう覚悟を決めるためにもつぶやく。
陽花里のことだ。何も難しいことを考えないで目の前に与えられたものを全力で楽しもうとしてるんだろう。
ただ、試合が終盤になるにつれて、どうしても投票のことを考えなきゃいけない。
特に阿弥が間違って処刑されたことはトラウマになっているに違いない。
私は靑井と一緒だったから正解は知っているけど、陽花里は正確な答えを知らない。
だけど、私たちの3人の中だったら感ずいていてもおかしくなかった。
「これ以上犠牲者は出したくない…!」
そうして考えると3日目終了時点まで答えを知っている私たちが干渉できないのは非常にもどかしい事態だ。
政府による干渉は今まで配信者のみ。投票者にも助け船を出してほしいところだが、人狼(AI)というわかりやすい敵がいる以上政府もうかつに手を出せないのだろう。
そうやって考え事をしているとピッチャーが変わったことに気が付かなかった。
ピッチャーは私、正確に言うと私のAIに代わっていた。
ストレートの球速110kmとか普通に出してるけど、一応未経験だからね、私。
こういうところの違和感に陽花里は気づいてくれないかな。
いや、あの子のことだ。
そんなこともあるよね、で片付けそう。
ここで画面が切り替わってハイライトになる。
その時点で私はこれ以上見る価値なし、と言ってホログラム画面を閉じた。
◇
□木村 陽花里
絶対にこれ以上ミスをするわけにはいかない。
最後の桜澪からのセカンドベースへの送球で盗塁タッチの練習をしてから私はグラウンド外にボールを出した。
ふと、誰かに見られているような気がして上を見上げる。
(…気のせいかな)
さっきまで誰か仲のいい人に見られていた気がするんだけど。
まあ、考えすぎだろう。
私は神経を研ぎ澄ませてバッター五百旗頭くんに集中をし始めた。
◇
『セーフ』
勝負は3球目だった。
カウント1-1から茶兎くんが走ったのだ。
桜澪からの送球はかがんだ愛聖の上を通り抜けて私のミットへストライク送球。
ただ、わずかに茶兎君のほうが早かった。
「木村-!バックホーム!」
その声に私はハッとする。
しまった、3塁ランナーの幸司郎がホームへ向かっている。
私はすぐに桜澪へ送球したが、判定は余裕のセーフだった。
「2-3」
スコアボードの数字が自動的に書き換えられる。
(やっちゃったぁ…)
まさかダブルスチールをかけられるとは…
サインを出す人がいないと思って完全に油断をしていた。
1塁ベンチ側では久々の得点に後攻チームの子たちが還ってきた幸司郎ハイタッチをしている。
(…?)
その光景に私は少しの違和感を覚えたが、何かと言語化することはできなかった。
再びバッターの五百旗頭くんに意識を向けた時、
4球目で彼は左中間にホームランを放っていた。
「2-5」
喜んでダイヤモンドを一周する彼を前に、私は気づく。
私は鰓0が原因で相手に流れを渡してしまったのだと。
そこまで感じたら、完全に戦意を喪失していた。




